中国は、世界ランクを基に1つの国・地域が得られる最大の出場枠を5種目すべてで確保し、総勢17人で英国ウェンブリーに乗り込んだ。いずれの選手も世界1~5位に位置し、全員がメダル候補と言って過言ではない。とりわけ、ともに団体戦ではチームリーダーの役割も担う男子シングルスのリン・ダン選手と女子ダブルスのユー・ヤン選手には、2大会連続金メダルへの期待がかかる

リン・ダン選手は、過去2度のオリンピックでは地獄と天国を見ている。20歳で初出場したアテネは、第1シードで優勝を期待されながら、ロナルド・スシロ選手(シンガポール)にまさかの1回戦負け。4年後の北京では順調に勝ち進み、決勝で第2シードのライバル、リー・チョンウェイ選手(マレーシア)を一方的に下し、男子シングルスで第1シードは優勝できないというジンクスを破って、自国開催のオリンピックで金メダルを獲得した。3度目となるロンドンは初めて第2シードで臨むが、金メダルの最有力候補であることに変わりはない。1年前、同じウェンブリーアリーナで開催された世界選手権の決勝で、リー・チョンウェイ選手にマッチポイントを握られながら逆転勝ちしたのもリン・ダン選手にとっては好材料だ
不安要素があるとすれば、前回北京の時と同じく五輪前最後の大会に選んだ6月初めのタイオープングランプリ(GP)ゴールドで、4年前は優勝したのに対し、今年は準決勝で敗れてしまったことぐらいか

ユー・ヤン選手(当時22)は北京五輪で、2歳年上のドゥ・ジン選手と組んで第2シードに入った。現在、韓国エースペアとなったキム・ミンジョン/ハ・ジョンウン組や小椋久美子・潮田玲子組などを次々に破り、決勝では同じ年の全英オープン決勝で敗れた第4シードの韓国ペアへのリベンジに成功して優勝。第1シードの中国ペアが2回戦で末綱聡子・前田美順組に敗れ姿を消す中、1996年アトランタ五輪から続くこの種目での中国勢の連勝を4に伸ばした
その強さゆえ、ロンドン五輪もこのままいくと考えられたが、2010年世界選手権の後、今度は2歳年下のワン・シャオリ選手と新たなペアを組む。ユー/ワン組は、強力な攻撃力で結成直後より参戦した大会のほとんどで優勝。半年余りで世界ランク1位(2011年4月28日付)にたどりつき、圧倒的な強さで現在までその地位を堅持している。ユー・ヤン/ワン・シャオリ組がこれまで敗れたのは、試合途中での棄権を除けば、今年1月の韓国オープンスーパーシリーズ(SS)プレミア決勝の相手、キム・ミンジョン/ハ・ジョンウン組(韓国)のほかは、同じ中国のツァオ・ユンレイ/ティエン・チン組のみ

女子シングルスはいずれも五輪初出場ながら、世界ランク1位のワン・イーハン選手を筆頭に、2位ワン・シン選手、3位リ・シュエリ選手と、最強の布陣で臨む
インドのサイナ・ネワル選手や韓国のソン・ジヒョン選手など、最強と称されて久しい中国女子シングルス陣の牙城を脅かす選手が各国・地域から出てきている。ただ、シドニー、アテネ、北京の3大会で、いずれも金を含む2つのメダルを確保してきている種目だけに、4大会連続の金メダル、さらには複数メダルの獲得に向けた準備は万全と思われる

男子ダブルスでは、第1シードのカイ・ユン/フー・ハイファン組が中国初の金メダルを狙う。世界選手権で3年連続4度(2006,09,10,11年)チャンピオンになるなど、実力は折り紙つきだが、最初のオリンピックとなったアテネはベスト8どまり。2度目の北京では、決勝でインドネシアのマルキス・キド/ヘンドラ・セティアワン組に敗れ銀メダルに終わった。オリンピックで唯一、手にしていないこの種目での金メダルの奪取は、5種目完全制覇を狙う中国にとって今大会の大命題となる

混合ダブルスは、世界1位のツァン・ナン/ツァオ・ユンレイ組と世界2位のシュー・チェン/マー・ジン組が、同じ試合会場で行われた昨年の世界選手権と同じく、金銀独占を目指す。このうち女子ダブルスにも出場するツァオ・ユンレイ選手には、アテネ五輪のガオ・リン選手、北京五輪のユー・ヤン選手に続く、中国女子選手3人目の1大会2種目のメダル獲得が期待される
中国五輪代表(17人)
【男子シングルス】 リン・ダン選手(28)、チェン・ロン選手(23)、チェン・ジン選手(26)
【女子シングルス】 ワン・イーハン選手(24)、ワン・シン選手(26)、リ・シュエリ選手(21)
【男子ダブルス】 カイ・ユン選手(32)/フー・ハイファン選手(28)、グオ・ツェンドン選手(28)/チャイ・ビアオ選手(21)
【女子ダブルス】 ユー・ヤン選手(26)/ワン・シャオリ選手(24)、ツァオ・ユンレイ選手(25)/ティエン・チン選手(25)
【混合ダブルス】 ツァン・ナン選手(22)/ツァオ・ユンレイ選手、シュー・チェン選手(27)/マー・ジン選手(24)