世界バドミントン連盟(BWF)が5日に更新した世界ランキングに基づき、3カ月後に開催が迫ったリオデジャネイロ五輪の出場権を得た選手が確定した。日本が手にしたのは、5種目すべてに合わせて6枠(9人)。この数字は4年前、ロンドン五輪時を1枠(2人)下回る。ただ、上位大会スーパーシリーズ(SS)の優勝経験者が6枠中3枠におり、メダル獲得の可能性につながる質の面では前回より改善している、

◆男子シングルス:佐々木翔(世界27位、2大会連続)
日本2番手に位置していた佐々木選手、五輪レースを戦い終え、本来、出場権を得られる世界ランク16位には届かなかった。しかし、違法賭博に関与した桃田賢斗選手が4月28日付世界ランキング以降、登録抹消されたことで、1番手としてこの種目、日本唯一の出場権を得た
初出場でベスト8入りを果たした前回、ロンドンに続き2回目となる五輪を34歳で迎えるが、世界6位で自ら出場権をつかみ取った4年前とは状況が大きく異なる。この1年の最高成績は2度のSSベスト8(韓国、フランス)で、上位進出が期待できるとは軽々しく言えない。ただ、レース期間中、ともに世界と戦ってきた桃田選手が1人で背負い込んでいた負担を軽減したいと語るなど〈https://badpal.net/2015/10/23/nozomi-breaks-one-of-chinese-three-pillars-at-french-open/〉、常に日本男子シングルス陣の窮状を気にかけてきたベテランは、既に五輪後に引退する意向を表明。南米の地リオで、競技生活最後の大一番に打って出る

◆女子シングルス(1):奥原希望(世界5位、初出場)
奥原選手は、両ひざの故障を乗り越え、五輪レースが始まる前の年、2014年後半から国際大会へ本格復帰。同年11月香港オープンSS準優勝で世界にその名を知らしめ、15年1月のマレーシアマスターズでGPゴールド初制覇するなど結果を残し世界ランクを10位に上げてレースに入った。ほどなくUSオープンでGPゴールド2勝目を挙げるが、初めて出場した世界選手権は初戦敗退という厳しい結果に。それでも続くジャパンオープンでは、当面の目標だったSS初タイトルを手にする。その後の欧州遠征でまたも苦戦を強いられるが、香港オープンで再び準優勝し立て直すと、年末に中東ドバイで行われた年間成績上位8選手のみによるSSファイナルを制し、名実ともに世界トップ選手の仲間入り〈https://badpal.net/2015/12/13/last-day-of-finals-promising-young-guns-turn-into-real-contenders-for-rio/〉。同時に、五輪出場をほぼ確実にした
今シーズン初めも好調を維持し、2016年SS初戦の全英オープンで頂点に立ち世界ランクを3位まで引き上げた。この後、ひざの不調を訴えインドオープンSSへの出場を取りやめ、心配された。しかしマレーシアオープンSSプレミア、シンガポールオープンSS、アジア選手権と試合を重ね、結果は出なかったが、「ひざのケガで怖さがある中、試合勘を取り戻せたのは良かった」と前向きに語り、次を見据えた
SSファイナルと全英オープンという、世界のトップがしのぎを削り合う主要大会の中でも重要な位置づけにあるタイトルを2つ続けて奪取したことで、奥原選手は一躍、リオデジャネイロ五輪のメダル候補に浮上した。しかしほどなく、タイのラッチャノク・インタノン選手がSS3週連続優勝の快挙を成し、初めて世界ランク1位の座を奪取。また、レース期間中、台頭してきた他国・地域のエースに表彰台の最も高い場所を奪われる機会の増えた中国のリ・シュエリ、ワンイーハン両選手はレース終了時点できっちり世界4位内のポジションを確保した。五輪本番の8月に照準を合わせ徐々に調子を上げてくるライバルは多く、日本シングルス陣初の五輪メダル獲得に向け、ここからもう一段のステップアップを果たせるかが奥原選手の課題だ

◆女子シングルス(2):山口茜(世界11位、初出場)
ジャパンオープンSS日本人初優勝を成し遂げた2013年、滑り込みで初めて出場したSSファイナルで一次リーグを全勝で突破しベスト4に入った14年。ジュニアでありながらシニアの世界トップに交じって大きな花火を打ち上げた前の2年に比べ、15年は山口茜選手にとってその真価が試された1年だった
1回戦負けに終わった全英オープン以降、徐々に調子を上げ、五輪レースは世界12位からのスタートとなる。最後の高校総体と開催時期が重なったため、高いランキングポイントが得られる世界選手権への出場を自らの意思でとりやめた。この年の優勝は独ビットブルガーオープンGPゴールドのみだったが、上位大会SSでは準優勝1回(日本)、ベスト4が1回(韓国)、ベスト8が1回(インドネシア)と相応の結果を残した
しかし明けて16年、年初の強化合宿で足を負傷し練習に制限がかかったことで、思うようなプレーができない状態が4月のマレーシアオープンSSプレミアまで続いた。世界ランクを引き上げられず、日本3番手、佐藤冴香選手の足音が背後に迫ったが、続くシンガポールオープンSSで復活。世界チャンピオン、スペインのカロリナ・マリン選手から初勝利を挙げるなどしてベスト4入りを果たし〈https://badpal.net/2016/04/16/akane-regains-smile-and-confidence-after-defeating-world-champ-in-qf/〉、五輪出場権獲得を確実にすると、そのまま世界11位でレースを終えた
シンガポールで五輪切符を手元に引き寄せた直後も、「いやあ」と少し照れながら、いつもの表情を変えなかった山口選手。メダル候補である代表チームの先輩、奥原選手がともに出場することで、五輪では、過度のプレッシャーを感じることなく伸び伸びしたプレーを見せてくれることに期待したい

◆男子ダブルス:早川賢一・遠藤大由(世界7位、初出場)
早川・遠藤組の五輪レースは、4年前のレースに敗れた直後から始まっていた。ロンドン五輪直後の8月から日本選手として初めて中国のスーパーリーグに参戦するなどして力を伸ばし、この年の終わりに開催されたSSファイナルで準優勝を果たす〈https://badpal.net/2012/12/17/japanese-champ-ends-runner-up-in-the-last-tournament-2012/〉。これ以降、年を追うごとにSSでベスト8以上の結果をコンスタントに積み重ねるようになり、優勝こそまだないが、SS決勝(プレミア、ファイナル含む)に合わせて7度進出する安定した実力を培った
2度目となる今回の五輪レースの期間中は、年間12大会あるSSで、準優勝1回(全英)、ベスト4が2回(日本、中国)、ベスト8が5回(オーストラリア、インドネシア、韓国、フランス、マレーシア)。実力拮抗のペアが揃うとりわけ競争の激しい種目の中にあって、底堅い強さを誇った。世界選手権では銅メダルを手にしており、実力的にはメダルに手が届く位置にいる。ただ精神面に起因し、プレーに波があるのも事実。コーチ陣と話し合い、年間スケジュールを立ててここまで準備してきた2人、既に数大会前から、五輪本番を想定して試合に臨むプロセスに入っている。残り約3カ月で、この4年間自分たちがやってきたことを信じ、迷いを取り去り真の自信に変えることができれば、リオの表彰台は現実のものとなる

◆女子ダブルス:高橋礼華・松友美佐紀(世界1位、初出場)
今回の日本選手団(バドミントン)の中でメダルに最も近い高橋・松友組だが、五輪レース前半はなかなか結果(優勝)が出ず、松友選手のケガでジャパンオープンSS、韓国オープンSSと欠場を余儀なくされるなど、苦しんだ。しかし今シーズンに入ると、1月のマレーシアマスターズGPゴールド、3月の全英オープンSSプレミアとインドオープンSS、4月のアジア選手権と、既に4つのタイトルを獲得。とりわけ、「狙って取った」全英は、最強のライバルである中国の3ペアを連破しての意義深い優勝〈https://badpal.net/2016/03/14/ayakamisaki-and-nozomi-shine-at-all-england-by-defeating-chinese-rivals/〉で、その実力は、先に手にした世界ランク1位の称号に着実に追いついてきた。むしろ最近では、中国陣営が高橋・松友組のプレーを視察、研究している姿がよくみられるほど
最後の大会、アジア選手権も優勝で締めくくり、結局、世界1位でレースを終え、自信満々かと思いきや、「このままで五輪で勝てるとは思っていない」との答え。中国を筆頭に、インドネシア、デンマーク、韓国といった国・地域で、ここからさらに「打倒高橋・松友」に向けた研究・対策が進むことを重々承知し、軽視していない。8月の五輪本番までに世界上位のライバルペアと直接対戦できる機会は、残すところユーバー杯、インドネシアオープンSSプレミア、オーストラリアンオープンSSなどあと数回。立ち止まらず、ライバルたちが講じてくる対策を上回る進化を遂げられれば、結果はおのずとついてくる

◆混合ダブルス:数野健太・栗原文音(世界18位、初出場)
世界的に「ダブルスの神様」と称され、アトランタ五輪でこの種目、銀メダルを獲得している日本代表のヘッドコーチ、パク・ジュボン氏の肝いりで結成されたペア。昨年5月、男女混合国・地域別対抗戦スディルマン杯で国際デビューし、準決勝の韓国戦、勝敗を決する最終種目で出番が回ってきて、世界ランク1ケタの格上を破り、日本を初めて決勝の舞台に押し上げる予想以上の活躍を見せた〈https://badpal.net/2015/05/17/day-7-of-sudirman-women-lead-team-japan-into-final/〉。しかしその後は、格上相手にもいい試合はするが、結果を残せず、思うようにランキングポイントを伸ばせないまま五輪レースを消化していった。最後は、五輪レース残り1週の時点で、パンアメリカ、オセアニアに次ぐ3つ目の大陸枠(アフリカ)の対象だったエジプトペアがレース終了後、大陸枠付与の条件である世界50位から滑り落ちたことが、レース最後の2大会、初戦敗退と振るわなかった2人をすくい上げた
日本で最も強化が遅れているこの種目、数野・栗原組をリオデジャネイロ五輪のメダル候補とは呼べない。ただ五輪本番でも壁として立ちはだかる世界トップ10のうち、◆ツァン・ナン/ツァオ・ユンレイ組(中国、世界1位)◆コ・ソンヒョン/キム・ハナ(韓国、世界3位)◆ヨアキム・フィッシャー・ニールセン/クリスティナ・ペダーセン組(デンマーク、世界4位)◆シュー・チェン/マー・ジン組(中国、世界5位)◆プラビーン・ジョーダン/デビー・スサント組(インドネシア、世界8位)◆チャン・ペンスーン/ゴー・リュウイン組(マレーシア、世界10位)――とはこれまで、競り合う試合ができている。シンガポールオープンSSで当時世界5位の中国リュウ・チェン/バオ・イーシン組に競り勝った時と同じ覚悟、そして自信を持って挑むことができれば、五輪で番狂わせを起こす力はある
中国、全10枠確保
一方、日本以外のアジア各国・地域を見ると、中国が1つの国・地域に割り当てられる上限の出場枠10(2枠×5種目)を確保。とりわけ男子シングルス、女子シングルス、女子ダブルスでは世界4位内に2人/組ずつきっちり入った
これに続くのが韓国。混合ダブルスを1つ逃したものの、9枠取った。桃田選手の世界ランキングからの登録抹消を受け、イ・ドンクン選手の順位が1つ繰り上がり、男子シングルスで韓国2つ目の出場権を得たのは大きい。福万尚子・與猶くるみ組と五輪レース最終戦の最終日まで争った女子ダブルス2枠目も貴重だ
アジアで最後に並んだシンガポールとベトナムはともに男女シングルスの2枠を得た。ただし、シンガポールが4年前から女子ダブルスの1枠を減らしたのに対し、ベトナムは女子シングルスの1枠を加えた
◆アジアの国・地域別出場権獲得数
1)中国【10枠】:男子シングルス2、女子シングルス2、男子ダブルス2、女子ダブルス2、混合ダブルス2
2)韓国【9枠】:男子シングルス2、女子シングルス2、男子ダブルス2、女子ダブルス2、混合ダブルス1
3)インドネシア【6枠】:男子シングルス1、女子シングルス1、男子ダブルス1、女子ダブルス1、混合ダブルス2
―)日本【6枠】:男子シングルス1、女子シングルス2、男子ダブルス1、女子ダブルス1、混合ダブルス1
5)マレーシア【5枠】:男子シングルス1、女子シングルス1、男子ダブルス1、女子ダブルス1、混合ダブルス1
―)タイ【5枠】:男子シングルス1、女子シングルス2、女子ダブルス1、混合ダブルス1
―)インド【5枠】:男子シングルス1、女子シングルス2、男子ダブルス1、女子ダブルス1
―)香港【5枠】:男子シングルス2、女子シングルス1、女子ダブルス1、混合ダブルス1
9)台湾【3枠】:男子シングルス1、女子シングルス1、男子ダブルス1
10)シンガポール【2枠】:男子シングルス1、女子シングルス1
―)ベトナム【2枠】:男子シングルス1、女子シングルス1