香港オープンSS2回戦、第1試合に入った男子ダブルスの早川賢一・遠藤大由組が日本選手の中で最初にベスト8入りを決めた

第1ゲーム序盤から接戦となり19-19までいくが、日本ペアが抜け出し先制。第2ゲームは主導権を握ってリード。12-12で並ばれるも逆転を許さず21-16で勝利した。早川・遠藤組は今回の対戦相手、インドネシアのボナ・セプタノ選手がロンドン五輪まで組んでいたモハンマド・アーサン選手とのペアに4戦全敗で、一度も勝ったことがなかった。遠藤選手は「新しいペアも同じようなプレーをする」とした上で、「ボナに勝ちたかった」と試合後に語った。
早川選手は勝因を「ディフェンスよりオフェンス」と明言。「ところどころでファインプレー的なディフェンスはあったものの、結局、点を取られた。それでは意味がない」と自らを戒めた
遠藤選手は自分たちのペアの最近の変化について、「まだまだ思ったようにはできてはいないが、このプレーがダメなら別のプレーでといった具合に、プレーの幅が広がってきている」と説明した。一方、中国勢が研究のためか早川・遠藤組のプレーを記録していたことに触れると、「中国は勝ちを確実なものにするためにやっているのでは」(遠藤選手)と述べ、研究されているという意識は今のところないという。その上で「(中国の強豪選手相手には)まだまだ‘良い勝負’どまりなので、勝てるようにならなければ」(早川選手)と指摘した

男子シングルスでは、田児賢一選手が上田拓馬選手との日本人対決を、豊富な国際大会での経験と実績に裏打ちされた落ち着いたプレーで制し、準々決勝に進んだ。一方、上田選手はこの試合、田児選手よりもミスが多く、先ごろ敗れた日本リーグのリベンジを果たすことは叶わなかった。舛田圭太コーチは試合後、 BadPaL に対し、これが現時点における両選手の実力と指摘。上田選手は流れに乗れば、アテネ五輪金メダルのタウフィック・ヒダヤット選手を破った前日のような試合ができるが、田児選手は先の欧州遠征以降、上り調子にあり、差がついた。上田選手には今後、もっと勝ちへの貪欲さを示すことに期待したいと語った

続いて登場した佐々木翔選手は、デンマークの18歳、ビクター・アクセルセン選手と対戦。6月のシンガポールオープンSSでファイナルゲームで敗れており、今回も終始追いかける展開になった。第1ゲームは終盤14-19と5点差をつけられ、少し挽回するも17-20とゲームポイントを握られる。しかしここから5連続得点を挙げ逆転で勝利。第2ゲームも12-15とリードされた場面から、今度は8連続得点でマッチポイントを奪い、最後は21-18で振り切った
佐々木選手は試合直後、BadPaL の取材に応じ、「最 近、アクセルセン選手のほか、マレーシアのダレン・リュー選手やチョン・ウェイフェン選手のような、速いプレースタイルの新しい選手に連続してやられていた。こちらがついていって速い展開にすると、勝ち急いだりして今までのプ レースタイルが崩れてしまった。そこで、いったんゆっくりしたペースに戻した上で、今の自分がどこまで対応できるか試してみた」と明かした。その上で、「きょうの試合に関しては、これまでのスタイルに新たな技術の上乗せができたのではないかと思う」と述べた

女子ダブルスの2ペア、松尾静香・内藤真実組と高橋礼華・松友美佐紀組は順当勝ちで、準々決勝に進んだ。松尾・内藤組は、ロンドン五輪で銅メダルを獲得したロシアのニナ・ビスロバ選手が、新たにアナスタシア・プロコペンコ選手と組んだペアの挑戦を受けた。ただ、松尾選手が試合後、「新しいパートナーはシングルスの選手で、ダブルスには不慣れだった」と語ったように力の差は歴然で、まったく寄せ付けずに圧勝した
松尾・内藤組は、この日、世界バドミントン連盟(BWF)が発表した最新のスーパーシリーズ(SS)ランキングで、1位に立った。この点について、松尾選手は「オリンピックレース期間中でもなく、あんまり執着はしていない」と冷静に語ったが、内藤選手は「それでも、1位になっていることを見た時はうれしかった」と笑顔を見せた
SSランキングは、年間12回(うち5回はSSプレミア)開催される上位大会SSで獲得したポイントのみを集計したランキングで、各種目上位8番手(国・地域枠は2つ)までが、年末のSSファイナルへの出場資格を得る

高橋・松友組は、国際大会での経験が少ない格下の台湾ペアに、第1ゲーム、インターバル直後の追い上げを許してしまい、終盤20-20で並ばれる。しかしこのゲームを取ると、第2ゲームでは圧倒的な実力差を見せ、わずか4点しか与えず完勝した
準々決勝では、10月のデンマークオープンSSプレミアで破った、ロンドン五輪金メダルの中国ツァオ・ユンレイ/ティエン・チン組と再戦する。高橋、松友両選手は試合後、BadPaL に対し、「1回勝っていることで、研究されていると思う。また勝たなきゃ、ではなく、(前週の)チャイナオープンで中国ユー・ヤン/ワン・シャオリ組と初めて対戦した時のよ うに向かっていきたい」(高橋選手)。「前回と全然違う攻め方をしてくると思う。今日と明日で2人で違う対策を立てて臨みたい」(松友選手)とそれぞれ抱負を語った

ダブルスとは対照的に、日本の女子シングルス陣にとってこの日は厳しい結果が待ち受けていた。フレンチオープンSS優勝の三谷美菜津選手の相手は、世界ランク1位のワン・イーハン選手。昨年の香港オープンで1度だけ対戦し、18-21,22-20,16-21で惜敗しており、この試合ではリベンジを狙っていた。第1ゲーム、先行するワン選手を三谷選手が追いかける形で進む。終盤、17-20と先にゲームポイントを握られた状態から19-20まで追いつくが、一歩及ばずこのゲームを落とす。第2ゲームもリードするワン選手に三谷選手が離されずについていき、中盤、10-11と1点差に迫る。しかし10-12となったところで三谷選手が主審に右ひざの不調を訴え、小休止の間、コーチや世界バドミントン連盟(BWF)役員を交えてしばらく言葉が交わされた後、三谷選手の棄権が宣告された
三谷選手は試合終了からしばらくして、BadPaL の取材に応じ、「(棄権は)悔しい。右ひざの痛みは昔からのものではないが、香港に入ったころから少し(痛みが)出ていた。連戦の疲れかもしれない」とコメントして、少し足を引きづりながらも、自分で歩いて会場を後にした。米倉加奈子コーチの説明によれば、このところ昇り調子でトーナメントを勝ち上がることで試合数が増えていたこと、さらにこの時期、日本国内でも試合が続くため、今回は大事を取って棄権させたという

廣瀬栄理子選手とアドリアンティ・フィルダサリ選手(インドネシア)は過去7度対戦し、勝ち負けを交互に繰り返す形で廣瀬選手が4勝3敗と1歩リード。ただ直近では、5月の女子の国・地域別対抗戦ユーバー杯でぶつかり、ファイナルゲームの末に廣瀬選手が敗れていた
この日も競り合いとなるが、中盤以降、フィルダサリ選手に点差を広げられ、廣瀬選手が17-21で第1ゲームを落とす。第2ゲームもリードを許すが、12-12で追いつき逆転。ところが17-16と先行した場面で、微妙なラインジャッジがあり並び返されると、試合の流れは再びフィルダサリ選手に傾く。廣瀬選手も何とかファイナルゲームに持ち込もうと19-19まで追いすがるも、19-21で敗戦となった
女子シングルスではこの日、中国ワン・シーシャン選手がタイのポーンティップ・ブラナプラサーツク選手にファイナルゲーム、21-23で敗れ、中国包囲網の一角が崩れた。その一方で、膝の故障から昨年復帰してきた2010年世界選手権チャンピオンのワン・リン選手が、ロンドン五輪銅メダルのインド、サイナ・ネワル選手をストレートで破り、同五輪で金メダルと銀メダルを獲得したリ・シュエリ、ワン・イーハン両選手に続く中国3人目の選手として、ベスト8の一角を占めた
日本選手2回戦の結果
【男子シングルス】 佐々木翔(世界9位)〈22-20,21-18〉ビクター・アクセルセン(デンマーク、世界26位)、田児賢一(世界7位)〈21-17,21-12〉上田拓馬(世界29位)
【女子シングルス】 廣瀬栄理子(世界13位)〈17-21,19-21〉アドリアンティ・フィルダサリ(インドネシア、世界37位)、ワン・イーハン(中国、世界1位)〈21-19,12-10棄権〉三谷美菜津(世界15位)
【男子ダブルス】 早川賢一・遠藤大由(世界4位)〈21-19,21-16〉ボナ・セプタノ/アフラト・ユリス・ウィラワン(インドネシア、世界151位)
【女子ダブルス】 松尾静香・内藤真実(世界5位)〈21-6,21-14〉ニナ・ビスロバ/アナスタシア・プロコペンコ(ロシア)、高橋礼華・松友美佐紀(世界8位)〈22-20,21-4〉ツァイ・ペイリン/チアン・カイシン(台湾、世界86位)
準々決勝の組み合わせは以下の通り。男子ダブルスで韓国のイ・ヨンデ/コ・ソンヒョン組が事前に棄権したため、マレーシアのクー・ケンケット/タン・ブンヒョン組の準決勝進出が既に決定している。また女子シングルスでデンマークのティネ・バウン選手も棄権。中国リ・シュエリ選手のベスト4入りが確定した
【男子シングルス】
リー・チョンウェイ(マレーシア、世界1位)対グエン・ティエンミン(ベトナム、世界10位)
田児賢一(世界7位)対モハマド・アリフ・アブドゥル・ラティフ(マレーシア、世界42位)
マーク・ツイブラー(ドイツ、世界22位)対トミー・スギアルト(インドネシア、世界30位)
チェン・ロン(中国、世界2位)対佐々木翔(世界9位)
【女子シングルス】
ワン・イーハン(中国、世界1位)対パイ・シャオマ(台湾、世界26位)
ユリアン・シェンク(ドイツ、世界4位)対ポーンティップ・ブラナプラサーツク(タイ、世界14位)
アドリアンティ・フィルダサリ(インドネシア、世界37位)対ワン・リン(中国、世界61位)
リ・シュエリ(中国、世界2位)〈棄権〉ティネ・バウン(デンマーク、世界6位)
【男子ダブルス】
クー・ケンケット/タン・ブンヒョン(マレーシア、世界2位)〈棄権〉イ・ヨンデ/コ・ソンヒョン(韓国、世界41位)
早川賢一・遠藤大由(世界4位)対リー・シェンム/ツァイ・チアシン(台湾、世界152位)
フーン・ティエンハウ/タン・ウィーキョン(マレーシア、世界16位)対リュウ・シャオロン/チュウ・ツィハン(中国、世界23位)
カイ・ユン/フー・ハイファン(中国、世界9位)対ヘンドラ・セティアワン/モハンマド・アーサン(インドネシア、世界97位)
【女子ダブルス】
ツァオ・ユンレイ/ティエン・チン(中国、世界1位)対高橋礼華・松友美佐紀(世界8位)
ゴー・リュウイン/リム・インルー(マレーシア、世界29位)対タン・ジンフア/バオ・イーシン(中国)
松尾静香・内藤真実(世界5位)対クンチャラ・ウォラビチッチャイクン/ドゥアンアノン・アルンゲーソン(タイ、世界19位)
ユー・ヤン/ワン・シャオリ(中国、世界6位)対チャン・イエナ/オム・ヘウォン(韓国、世界7位)
【混合ダブルス】
シュー・チェン/マー・ジン(中国、世界1位)対ダニー・バワ・クリスナンタ/ユーヤン・バネッサ・ネオ(シンガポール、世界11位)
チャン・ペンスーン/ゴー・リュウイン(マレーシア、世界3位)対ユ・ヨンソン/チャン・イエナ(韓国、世界12位)
ヨアキム・フィッシャー・ニールセン/クリスティナ・ペダーセン(デンマーク、世界6位)対フラン・クルニアワン/シェンディ・プスパ・イラワティ(インドネシア、世界13位)
ツァン・ナン/ツァオ・ユンレイ(中国、世界5位)対リキー・ウィディアント/プスピタ・リチ・ディリ(インドネシア、世界18位)