ジャパンオープンSS決勝、日本勢がダブルス3種目で最終日のコートに立ったが、勝ったのは高橋礼華・松友美佐紀組。この大会の優勝は、3年ぶり2回目。一方、シングルス2種目は、世界チャンピオンのビクター・アクセルセン、五輪チャンピオンのカロリナ・マリンの欧州2選手が、それぞれディフェンディングチャンピオンを破って、初優勝を遂げた
高橋・松友組は、女子ダブルスでは2014年12月以来の対戦(当時のパートナーはチョン・ギョンウン選手)となる、混合ダブルスでも世界トップの実力を持つ韓国のキム・ハナ選手を、「とてもうまい」(松友)と認める。また、韓国ではあまりいない「ガツガツくる」タイプの20歳コン・ヒヨン選手を、今後脅威になり得ると警戒しながらも、「実力とコンビネーションでは負けていない」(高橋)と評した通り、やはりペアとしての完成度には差があり、ストレート勝ちで2014年以来3年ぶり2度目のジャパンオープン制覇。今シーズンでは、6月オーストラリアンオープンに次ぐSS2勝目を挙げた
昨年の結果(準優勝)<https://badpal.net/2016/09/26/danish-pair-finally-grabs-gold-after-3-major-silvers/>を上回ったことで、ランキングポイントの上乗せに成功。チェン・チンチェン/ジア・イーファン組(中国)との差が詰まっていたが、中国ペアが今大会1回戦負けに終わったこともあり、世界ランク1位を堅持した。年間チャンピオンを決める12月ドバイ開催のSSファイナルへの出場権獲得の算定基準となるSSランキング(※世界ランキングとは異なり、SS12大会のみのランキング)でも、5位から3位に浮上し、日本勢の中では同2位の福島由紀・廣田彩花組に次ぐ2番手につけ、国・地域ごとに2つまで割り当てられる出場枠圏内に入ってくる
高橋・松友組は、2016年8月リオデジャネイロ五輪で金メダル獲得後、スケジュールが多忙となる中、2016年韓国オープンと17年インドオープンを除く、SS10大会に出場した。17年8月世界選手権・グラスゴー大会で初めて銅メダル獲得<https://badpal.net/2017/08/28/last-day-in-glasgow-nozomi-earns-not-only-world-title-but-recognition-as-the-fighter/>した後も間を置かず、韓国オープン、ジャパンオープンと続けてSSに参戦している
日本男子初のジャパンオープン制覇に挑んだ金子祐樹・井上拓斗組は、来週、世界1位に返り咲くマルクス・フェルナルディ・ギデオン/ケビン・サンジャヤ・スカムルジョ組(インドネシア)を前になすすべなく、30分かからず完敗。準優勝に終わった
表彰式後に行われた会見では、金子、井上両選手ともに、初めてのSS決勝にも「緊張はしていなかった」としながらも、この日のパフォーマンスに関しては「不甲斐ない」と反省しきりだった
現時点における力の差をどういった部分に感じるか聞くと、世界トップペアは長所が際立って強いが、自分たちにはまだこれといったものがない。さらに、(トップペアは)試合前に準備した自分たちのゲームプランが機能しなかった場合、試合途中の早い段階で変えることができるが、自分たちは1ゲームごとだったりで、無駄な点を与えてしまっている、と指摘した
それでも、決勝の内容を除けば、今大会は全体を通して良いパフォーマンスで、競り合いを勝ち抜き決勝まで来られたのは収穫。準決勝で世界のトップペアに勝てたのは自信になると振り返った。「SS決勝を戦うだけの実力がないことは自分が良くわかっている。相手のうまさに対応できなかった」と、この敗北を率直に受け入れた上で、より強くなってまたSS決勝の舞台に帰ってくる、と誓った
一方、勝った「ミニョンズ(Minions)」ことギデオン/スカムルジョ組は、今シーズンSS4勝目。ただ、全英オープン、インドオープン、マレーシアオープンと開幕3連勝した後、シンガポールオープン、インドネシアオープン、(オーストラリアンオープンは出場せず)、韓国オープンと優勝から遠ざかり、第3シードで臨んだ世界選手権では、優勝も期待されながらベスト8にとどまりメダルを逃していた。このため、今回の優勝を「非常に大きな意味あるもの」と、繰り返し強調した
男子シングルスは、世界チャンピオンのアクセルセン選手が、2年連続7度目の優勝を狙ったリー・チョンウェイ選手をフルゲームの末に退け、世界選手権に続いて、ジャパンオープンでも初優勝を遂げた。前週の韓国オープンは、エントリーしたものの、あえて出場回避していた
アクセルセン選手は、世界選手権で現・元五輪金メダリストのチェン・ロンとリン・ダン(ともに中国)、ジャパンオープンで現・元世界ランク1位のソン・ワンホ(韓国)とリー・チョンウェイ(マレーシア)と、世界のトップ4選手を連破して、出場2大会連続優勝を果たした。さらに両大会の結果を踏まえ、28日には初めて世界1位の座も射止める
デンマークの23歳は、世界1位に到達することについて、「夢がかなった」と、世界タイトルを奪取したスコットランド・グラスゴーでのコメントを繰り返した。ただ。世界ランク1位は、結果を残すことで後からついてくるもの、との認識を示した。
一方、敗れたチョンウェイ選手は、「世界選手権のタイトルを取って、自信に満ち、落ち着いたプレーをしていた」と対戦相手を称えた上で、自らも、「いいパフォーマンスができ満足。(世界選手権で初戦敗退となりいったん失った)自信も取り戻した」と前を向いた。母国マレーシアではジャパンオープン開幕直前の17日、チョンウェイ選手と衝突を繰り返していたテクニカルディレクター、デンマークのモルテン・フロスト氏が辞任したばかり。最近、男子シングルスのヘッドコーチとして戻ってきたミスブン・シデク氏の下、世界選手権後の再スタートを切る
女子シングルスでは、世界選手権で3連覇を逃し、その悔しさを力に変えて東京へ乗り込んできたマリン選手が、昨年優勝のホー・ビンジャオ選手(中国)の連覇を阻む形で、今シーズンSS8戦目で初勝利を挙げた。ジャパンオープンは初優勝。
マリン選手は試合後の会見で、BadPaL の質問に答え、3連覇に向けしっかりと準備を積んで臨んだ世界選手権の準々決勝で奥原希望選手に敗れ<https://badpal.net/2017/08/26/day-5-in-glasgow-name-of-ayakamisaki-finally-added-to-list-of-worlds-medalists/>、金メダルはおろか表彰台にすら届かず、相当落ち込んだことを認めた。その上で、ジャパンオープンに向けてどうのような気持ちの切り替えをして臨んだかとの問いには、敗戦につながった自らのミスを検証。エントリーしていた韓国オープンの出場を回避して、再度、「誰にも負けない」という自信を持ち直して乗り込んできたと明かした。なお奥原選手に対しては、準決勝で試合ができず残念だったとし、早期の回復を願うとエールを送った
マリン選手はこの勝利により、28日付更新の世界ランキングで、山口茜選手を抜いて4位に浮上する見込み
混合ダブルスで、予選から一気に決勝まで駆け上がった保木・廣田組だが、この日は、世界9位のワン・イーリュ/ホワン・ドンピン組(中国)に抑えられ、優勝を逃した。ただこの種目、SSでの準優勝は、2012年シンガポールオープンの池田信太郎・潮田玲子組以来<https://badpal.net/2012/06/24/ikedashiota-grabs-no-gold-but-confidence/>で、世界トップペアが勢ぞろいしていなかった大会とはいえ、今後に期待を持たせる活躍だった
保木選手は試合後、BadPaL に対し、2種目掛け持ちとなるが、「体力的には大丈夫。男子ダブルスにもいい効果がある」と述べ、今後も混合ダブルスへの出場を続けることに前向きな姿勢を見せた。ただ、3大会目で準優勝という結果を残したことで、この種目での日本勢初優勝を狙ってやろうといった欲が出てきたのでは、と問うと、「それはない」と笑顔で否定。あくまで、「廣田選手ともども楽しんでやれれば」と答えた
一方、勝ったワン/ホワン組は、SS初優勝に喜びを表現した。今後も気を抜かず、より強い相手と戦えるようにし、世界1位を目指したいと語る2人に、昨年、この大会を制した世界ランク1位ツェン・シウェイ/チェン・チンチェン組との現時点での実力差をどう見ているか尋ねると、「中国国家代表として一緒に練習している中では互いのことをよく知っていて、技術的には差がないと思っている」ときっぱり。ただ、国際大会での経験の差を指摘し、試合の途中でどういう変化をつけるかなど、試合運びは向こうの方が上と認めた
決勝の結果
【男子シングルス】 ビクター・アクセルセン(デンマーク、世界2位)<21-14,19-21,21-14>リー・チョンウェイ(マレーシア、世界7位)
【女子シングルス】 カロリナ・マリン(スペイン、世界5位)<23-21,21-12>ホー・ビンジャオ(中国、世界7位)
【男子ダブルス】 マルクス・フェルナルディ・ギデオン/ケビン・サンジャヤ・スカムルジョ(インドネシア、世界2位)<21-12,21-15>金子祐樹・井上拓斗(世界17位)
【女子ダブルス】 高橋礼華・松友美佐紀(世界1位)<21-18,21-16>キム・ハナ/コン・ヒヨン(韓国、世界122位※予選勝ち上がり)
【混合ダブルス】 ワン・イーリュ/ホワン・ドンピン(中国、世界9位)<21-13,21-8>保木卓朗・廣田彩花(世界435位※予選勝ち上がり)