Last Day in Glasgow : Nozomi earns not only World title but recognition as the fighter

世界選手権最終日、奥原希望選手がインドのプサルラ・ヴェンカタ・シンドゥ選手との110分に及ぶ激闘を制し、日本シングルス陣では史上初めて、世界の頂点に立った。同時に、どんなに苦しくても最後まで決してあきらめない「ファイター」として、決勝を目撃したすべての人の記憶に、その名を刻んだ

いつ果てるともしれない激闘と呼ぶにふさわしい接戦に勝利した奥原選手、試合後、きつかったと率直に認めた。第1ゲーム、前半を5-11と大きくリードされて折り返すが、後半逆転に成功し、先制する。第2ゲームは、点差はさほど開かないものの、相手に先行を許す形で終盤まで進み、17-20と3つのゲームポイントを握られる。それでもあきらめずに食らいついて、3連続得点を決め20点で並んでみせるが、続く2点を奪われ、ゲームカウント1対1のタイに戻されてしまう

このゲーム最後の70回を超えたラリーによる両選手の消耗は相当激しく、持久力には定評のある奥原選手ですら呼吸を整えるのが困難な状況で、2分間のインターバルでの回復は厳しいと見えた。そして迎えたファイナルゲーム、目を閉じ何事か自らに語りかけた後、コートに入った奥原選手。最初の1点は失うものの、直後に5連続得点を決めリードする。疲労から動きの落ちてきたプサルラ選手も、奥原選手の踏ん張りに呼応するかのごとく再度気持ちを奮い立たせ、強打を決めるなどして追いつくと、もみあいから前半を2点リードで終える。後半開始直後、今度は奥原選手が並び返すと、ここからラリーの応酬による一進一退の攻防に突入。17-17までいくが、そこからプサルラ選手が抜け出し、19-17と再び2点リードする

それでも、チャレンジ失敗も重なったこの窮地に、奥原選手に負け試合でしばしば見られる失点後の「半べそ」の表情はなし。何事もなかったかのような変わらぬ顔つきでプレーを再開すると、2点を連取し同点。続く1点も奪って20-19とマッチポイントをつかむ。次の1点は、攻勢をかけてきた相手のサイドライン際のショットをアウトと判断し見送るがインの判定で、再び追いつかれる。ただ、勢いに任せて攻め急いだプサルラ選手がスマッシュをネットにかけて巡ってきた2度目のチャンスを逃さず、最後は長いラリーからクロスコートへのドロップを決めて22-20でマラソンマッチに終止符。スタンディングオベーションも見られる会場が大歓声に包まれる中、コーチ陣の元へ駆け寄り祝福を受けた

奥原選手は表彰式後に行われた優勝会見で、「第2ゲームを終えた時点で既に1時間が経過していて、この先どうなるのか想像つかなかった」と話した。ただ、ファイナルゲームは出し切ろうと気持ちを切り替えて入ると、途中から体が軽くなり視界が開けて、相手の方が疲れているのが分かり、漠然と自分が勝つんだと思った、という。加えて、苦しい試合の途中、世界選手権で男子ダブルスと混合ダブルス合わせて5度の優勝経験を持つ、日本代表ヘッドコーチ、パク・ジュボン氏にかけられた言葉で、ファイナルゲーム前半、5-4と1点差に追い上げられた場面で自ら、鼓舞するために発した、「(世界チャンピオンになるのは)簡単じゃない」が強く響いたことも明かした

女子シングルスで五輪のメダル(金、銀、銅含め)を獲得した選手のうち、今大会の前まで世界選手権のメダルを持っていなかったのは、北京銅メダル、インドネシアのマリア・クリスティン・ユリアンティ選手と、リオ銅メダルの奥原選手の2人のみ。五輪銅メダルの翌年、世界選手権で金メダルを取ったのは、この種目では奥原選手が初めて

Three medalists of 2011 World junior are now all World champions @archives

女子シングルスは、2001年ゴン・ルイナ選手から11年ワン・イーハン選手まで11年間(8大会)続いた中国独占の時代が終わりを告げ、◆13年:ラッチャノク・インタノン(タイ)◆14-15年:カロリナ・マリン(スペイン)◆17年:奥原希望(日本)――と、それまで優勝者を輩出してこなかった新たな国へタイトルが渡り続けている。なお、インタノン、マリン、奥原の3人は、2011年世界ジュニア選手権・台湾大会でともに表彰台に並んだジュニア時代のライバルで、今回、奥原選手は先に世界タイトルを獲得した2人に追いついた格好となった

一方、プサルラ選手は、初出場でいきなり銅メダルを獲得した2013年から数えて4度目の世界選手権で初めて決勝に進んだ。しかし13年、14年の銅に次ぐ3つ目のメダルは、リオデジャネイロ五輪の時と同じ「銀」に終わった

プサルラ選手は試合後、「どちらが勝ってもおかしくなかった。負けたのは悔しいが、誰にも結果の読めない試合。もちろん、これは世界選手権の決勝で、ともに金メダルを目指しあきらめずに戦ったが、最後の瞬間にすべてが変わった」とコメントした

奥原選手に関しては、「難しい相手であることは分かっていたし、長い試合になると予想し準備はしてきた」と説明。第2ゲーム最後のラリーについては、「あれが最もきついラリーだったとは思わない。その後も長く苦しいラリーがたくさん続いたが、ともに疲れていながら、不可能な体勢からシャトルを拾い続けた」とした。その上で、「実際のところ、今日の決勝はとてもいい試合だった。ただ私の日ではなかった。ともに自分を信じて、精神的、肉体的にタフな試合を戦った。ここで得た自信を胸に、さらに学んでいける」とし、時折悔しさをのぞかせながらも、しっかり前を向いた

女子ダブルスの決勝には、準々決勝で第3シード、準決勝で第2シードを連破し、初出場ながら世界タイトルへの挑戦権を自らつかみ取った福島由紀・廣田彩花組が登場。第1シードの高橋礼華・松友美佐紀組をストレートで下して勝ち上がった第4シードの中国チェン・チンチェン/ジア・イーファン組と対峙した

過去の対戦成績を見ても2勝2敗で、勝機の十分ある試合だった。第1ゲームは18-18から抜け出されて落とすが、第2ゲームは逆に15-15から突き放して取り返す。しかしファイナルゲームに入ると、昨年末のSSファイナルを含む上位大会SS優勝3回の20歳中国ペアに、いきなり6点をリードされる。4月にマレーシアオープンでSSプレミア初優勝を果たした福島・廣田組も何とか追いすがろうとするが、焦りもあってか、後半はチャンスにミスが出るなどして差を詰められず。結局、序盤につけられた点差がそのまま残る形で、15-21で敗れた

ただ、福島・廣田組は金メダルこそ逃したものの、日本が最も世界に近い種目とされる女子ダブルスで、1977年に優勝した栂野尾悦子・植野恵美子組以降、幾多の先輩が到達できなかった世界選手権の決勝へ40年ぶりに進み、準優勝という成績を収めた。このことは高く評価できる。試合後の、「銀メダルを獲得できたのはうれしいが、決勝で負けてしまって悔しい」という言葉は、ここからさらなる躍進を期待させる

一方、優勝したチェン/ジア組は、この1年で、昨年の年間王者を決するSSファイナルに続く、2つ目の大きな個人戦のタイトルを得た。今大会準決勝で破った世界1位の高橋・松友組との対戦成績も4勝2敗とするなど、ジア選手が優勝インタビューで目標に掲げた、23歳で迎える東京五輪に向け、順調に成長を続けている

なお、世界ジュニア選手権(14、15年)と世界選手権(17年)の両方を制した史上初のペアとなったチェン/ジア組の勝利で、女子ダブルスでは1997年以降20年(14大会)、中国勢によるタイトル独占が続いている

これに対し男子シングルスは、ビクター・アクセルセン選手が、前人未到の6度目の優勝を目指したリン・ダン選手にストレート勝ち。中国勢の連覇を8大会で止め、20年ぶりにデンマークにタイトルを持ち帰った。デンマークはこの種目、◆1977年:フレミング・デルフス◆1997年:ピーター・ラスムセン◆2017年:ビクター・アクセルセン――と、20年ごとに世界チャンピオンを輩出している

アクセルセン選手は昨年末、年間王者を決めるSSファイナルでも優勝を果たしているが、「SSと、五輪/世界選手権は別物」と指摘。「世界選手権決勝のコートに立ち、しかも小さいころ、試合を見ていたリン・ダン選手に勝てた。夢がかなった。今はほかに言葉が見つからない」と、優勝直後の感想を述べた。また、リオ五輪で銅メダルを獲得した後、期待されるような結果が残せず苦慮しているように見えたが、と指摘されると、そのことを認めた上で、「思うように結果が出ない時も我慢して、やるべき努力をやり続けた結果」と、今回の勝利を自ら評した

一方、世界選手権6回優勝という前人未到の記録を逸したリン・ダン選手は、アクセルセン選手を称えた上で、「第1ゲームを取れていれば違った結果になっていた」と述べ、20-19と先にゲームポイントをつかみながら、ミスでその機会を失ったことへの悔しさを隠さなかった。10月に34歳になるリン・ダン選手に中国系のメディアから年齢に関する質問が飛ぶと、「この年齢で男子シングルスの世界トップレベルでプレーするのは容易ではない」と認めながら、「世界選手権の決勝まで進めたことに満足している」と返答し、プライドをのぞかせた

今後については、前日のチェン・ロン選手同様、2日後に始まる中国の五輪「全運動会(ナショナルゲームス)」に出場。さらに、スポンサーであるヨネックスが冠スポンサーを務めるジャパンオープンSS(9月19~24日)へ参戦することを確認したが、その後は未定という

男子ダブルスは、今大会第8シードの中国ツァン・ナン/リュウ・チェン組が、インドネシアペアとして連覇を目指したモハンマド・アーサン/ライアン・アグン・サプトロ組にストレート勝ち。初優勝を遂げた。中国勢では、カイ・ユン/フー・ハイファン組が通算4度目(=最後)の優勝を果たした2011年ロンドン大会以来4大会ぶり

ツァン・ナン選手は男子ダブルスでの優勝は初めてながら、リオ五輪後にペアを解消したツァオ・ユンレイ選手との混合ダブルスで過去3度(2011、14、15年)優勝しており、これが4つ目の世界タイトルとなる

勝ったツァン選手は、「世界選手権男子ダブルスのタイトル獲得を目標にがんばってきたので、非常にうれしい」と素直に喜びを表現した。敗れたアーサン選手は、「ベストプレーができなかった」としながら、ノーシードから、第1シードの中国リュウ・ユーチェン/リ・ジュンフェイ組、第4シードの園田啓悟・嘉村健士組らを破って銀メダルを取れたことを「ありがたく思う。次回はより良い成績を残せるよう、これからさらに努力する」と述べた

混合ダブルスは、第3シード、インドネシアのタントウィ・アーマド/リリアナ・ナッチル組が、全種目を通じて唯一、決勝に残った第1シード、中国ツェン・シウェイ/チェン・チンチェン組に第1ゲームを先取されながら逆転勝利を決め、3大会ぶり2度目の世界制覇。リオ五輪に続くビッグタイトル獲得となった

アーマド/ナッチル組は勝因について、自分たちのプレーができなかった第1ゲームの反省の上に立って、第2ゲーム以降、切り替えたのが奏功した、と説明した。ツェン/チェン組も、第2ゲーム途中からスピードが上がるなど経験豊富なアーマド/ナッチル組が戦略を変えてきた、と認めている

とりわけ9月に32歳になるナッチル選手は、ノバ・ウィディアント元選手とのペアでも2度優勝しており、通算4度目の世界チャンピオンで、混合ダブルス単独では優勝3度の韓国パク・ジュボン、中国ツァオ・ユンレイ両氏を超えた

◆決勝の結果

【男子シングルス】 ビクター・アクセルセン(デンマーク、世界3位)<22-20,21-16>リン・ダン(中国、世界7位)

【女子シングルス】 プサルラ・ヴェンカタ・シンドゥ(インド、世界5位)<19-21,22-20,20-22奥原希望(世界8位)

【男子ダブルス】 ツァン・ナン/リュウ・チェン(中国、世界8位)<21-10,21-17>モハンマド・アーサン/ライアン・アグン・サプトロ(インドネシア、世界30位)

【女子ダブルス】 チェン・チンチェン/ジア・イーファン(中国、世界4位)<21-18,17-21,21-15>福島由紀・廣田彩花(世界9位)

【混合ダブルス】 ツェン・シウェイ/チェン・チンチェン(中国、世界1位)<21-15,16-21,15-21タントウィ・アーマド/リリアナ・ナッチル(インドネシア、世界3位)

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各種目のメダリスト

【男子シングルス】

金メダル: ビクター・アクセルセン(デンマーク※初)

銀メダル: リン・ダン(中国)

銅メダル: ソン・ワンホ(韓国)、チェン・ロン(中国)

【女子シングルス】

金メダル: 奥原希望(日本※日本シングルス陣で史上初)

銀メダル: プサルラ・ヴェンカタ・シンドゥ(インド)

銅メダル: サイナ・ネワル(インド※前回銀)、チェン・ユーフェイ(中国)

【男子ダブルス】

金メダル: ツァン・ナン/リュウ・チェン(中国※初)

銀メダル: モハンマド・アーサン/ライアン・アグン・サプトロ(インドネシア)

銅メダル: 園田啓悟・嘉村健士(日本)、ホン・ウェイ/チャイ・ビアオ(中国)

【女子ダブルス】

金メダル: チェン・チンチェン/ジア・イーファン(中国※初)

銀メダル: 福島由紀・廣田彩花(日本)

銅メダル: 高橋礼華・松友美佐紀(日本)、クリスティナ・ペダーセン/カミラ・リタ・ユール(デンマーク※前回銀)

【混合ダブルス】

金メダル: タントウィ・アーマド/リリアナ・ナッチル(インドネシア※3大会ぶり2度目)

銀メダル: ツェン・シウェイ/チェン・チンチェン(中国)

銅メダル: クリス・アドコック/ガブリエル・アドコック(イングランド)、リー・チュンヘイ/チャウ・ホイワー(香港)

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