
カナダオープンGP決勝、常山幹太選手が桃田賢斗選手を破り、日本の男子シングルス陣では5人目のGP優勝者となった。女子2種目も川上紗恵奈選手と永原和可那・松本麻佑組が勝ち、2012年に次いで日本勢が複数のタイトルを獲得。GPとはいえ、B代表の4人がそれぞれに壁を越え、次なるステージへ一歩近づいた
国際大会初顔合わせの常山、桃田両選手は、序盤から一進一退の攻防を続けるが、前日、第1シードの韓国イ・ヒョンイル選手を破り自信づいた常山選手が先んじる展開。桃田選手に終盤逆転され19-20とゲームポイントを握られても焦ることなく、しっかり3連続得点を決め、22-20でオープニングゲームを取る。第2ゲームは後のない桃田選手が果敢に攻めて取り返すが、ファイナルゲームに入っても崩れず、主導権を握ったまま粘り強くプレーを続けた常山選手が21-14で勝利。下位大会インターナショナルチャレンジでは、2016年4月フィンランドと17年2月オーストリアの2度、既に優勝経験があるが、GPでは初のタイトル奪取となった

日本の男子シングルス陣がカナダオープンで優勝するのは、1970年の小島一平氏に次いで2人目。また、2007年から格付けされたGP(GPゴールド除く)での優勝は、佐々木翔(10年オランダ)、上田拓馬(10年ロシア)、坂井一将(12年ロシア)、武下利一(13年ニュージーランド)に続く5人目
常山選手は今回の結果により、GP優勝のポイント5,500点を得て、20日更新の世界ランキングでは坂井選手を抜いて、再び日本1番手に立つ。2014年アジアジュニア選手権銀メダリストで日本男子シングルのけん引役を期待される21歳は、続けて19日開幕のUSオープンGPゴールドに出場。その後、いったん帰国してから、8月、いよいよ最高峰の世界選手権デビューを果たす

一方、敗れた桃田選手は、復帰初戦を準優勝で終え、ランキングポイント4,680点を獲得。【1】常山幹太【2】坂井一将【3】上田拓馬【4】西本拳太【5】五十嵐優【6】武下利一【7】渡邉航貴【8】下農走【9】小野寺祐介【10】奈良岡功大――に次ぐ、日本11番手(世界ランク270~280位辺り)に入ってくる
次戦は、8月3日からカリフォルニア州オレンジで開催される、今大会(※男子シングルス優勝賞金4,875ドル)より2つ下位に位置づけられる、USインターナショナルシリーズ(※男子シングルス優勝賞金700ドル)の予定

女子シングルスの川上選手は、世界選手権のホスト国スコットランドのエースで、4月のヨーロッパ選手権で銀メダルを獲得したカースティ・ギルモア選手と2度目の対戦。前回は、ファイナルゲーム20-15と勝利を目前にしながら、よもやの逆転負けを喫しており〈https://badpal.net/2016/01/22/japanese-women-occupy-5-out-of-8-wd-slotss/〉、嫌なイメージもつきまとう
今回は第1ゲーム、序盤からリードを許し、いったんは逆転するが、振り切られて落とす。第2ゲームは前半競り合った後、後半抜け出し20-14と6つのゲームポイントを握る。しかしここから5連続失点で1点差まで詰めよられ、前回対戦時の再現かと懸念された。それでも最後は相手のミスに助けられ、何とか凌ぐ。ファイナルゲームに入っても一進一退が続いたが、後半11-13の劣勢から、今度は川上選手が5連続得点を決め逆転に成功。その後も点差を保ったまま、勝利をつかんだ
日本女子シングルス陣のカナダオープン優勝は、12年の奥原希望選手以来、5年ぶり5人目。川上選手自身にとっては2015年ベトナムオープンに次ぐGP2勝目。6月の台湾オープンGPゴールドに続く、2大会連続優勝となった
とりわけ今回の優勝は、世界トップ10の1人、ツァン・ベイウェン選手を破ったほか、過去に嫌な負け方をしていた高橋沙也加選手とギルモア選手への借りも返した意義あるもの。上位大会スーパーシリーズ(SS)プレミアで優勝するまで力をつけている日本のトップ3、山口茜選手、奥原希望選手、佐藤冴香選手を、ここから追撃していくための弾みとなるか

女子ダブルス決勝は、GP初優勝をかけて、世界ランクで日本6番手の篠谷菜留・星千智組と、8番手の永原・松本組が対戦した
第1ゲームを永原・松本組、第2ゲームを篠谷・星組が取り合い、ファイナルゲームへ突入。永原・松本組主導で進み、途中、9-9で並ぶが、その後も攻撃力を活かして先を走り続けた永原・松本組が21-18で勝ち、表彰台の最も高い所に立った
永原・松本組は、日本では珍しい長身の攻撃型ペアとして活躍が期待されている。しかしこれまで、GPより2つ下位の2014年タイインターナショナルシリーズで国際タイトルは手にしているが、GPでは1回(2014年ロシア)、GPゴールドで2回(16年タイ、US)の準優勝どまり。優勝には届いていなかった。今回、待望のGP優勝を成し遂げたことで、壁を1つ突き破ったと言える
ただ、5年前にこの大会を制した高橋礼華・松友美佐紀組をはじめ、米元小春・田中志穂組、福島由紀・廣田彩花組という日本トップ3ペアのSSでの活躍を見て、「彼らが戦っているのと同じステージに早く立ちたい」と話す2人に、GP優勝で立ち止まっている暇はない
残り2種目、男子ダブルスは、準々決勝で金子祐樹・井上拓斗組から白星を挙げたイングランドのトム・ウォルフェンデン/ピーター・ブリッグス組が、初戦から5試合すべてフルゲームを戦い抜き、GP初優勝を果たした。これまでは、インターナショナルシリーズで2度優勝。インターナショナルチャレンジでは2度準優勝している
韓国勢同士の対決となった混合ダブルスは、スディルマン杯優勝を決めた若きエースペア、チェ・ソルギュ/チェ・ユジョン組を、リオデジャネイロ五輪女子ダブルス銅メダルの22歳シン・スンチャン選手と18歳キム・ウォンホ選手を組ませた新しいペアが破り、初の国際大会参戦で初優勝を遂げた
決勝の結果
【男子シングルス】 常山幹太(世界45位)〈22-20,14-21,21-14〉桃田賢斗(世界ランクなし※予選勝ち上がり)
【女子シングルス】 カースティ・ギルモア(スコットランド、世界45位)〈21-19,19-21,18-21〉川上紗恵奈(世界52位)
【男子ダブルス】 トム・ウォルフェンデン/ピーター・ブリッグス(イングランド、世界48位)〈22-20,16-21,21-19〉ソ・スンジェ/キム・ウォンホ(韓国、世界347位※予選勝ち上がり)
【女子ダブルス】 篠谷菜留・星千智(世界52位)〈16-21,21-16,18-21〉永原和可那・松本麻佑(世界62位)
【混合ダブルス】 チェ・ソルギュ/チェ・ユジョン(韓国、世界13位)〈19-21,16-21〉キム・ウォンホ/シン・スンチャン(韓国、世界ランクなし)
備考 : 今大会で日本選手の写真を BadPaL に提供してくれたカナダの Joseph YEUNG 氏は、白血病の一種と診断された親しい友人の妹にできることはないか自ら調べた過程で、正常な血液を作り出すのが難しくなる疾病者に移植する造血幹細胞の提供者(ドナー)の必要性が、十分周知されていない事実に気づき、自らの写真を通じて広く知ってもらい、それぞれの国・地域でドナー登録を呼びかける活動「Badminton Photography for Stem Cell Donor Awareness」 を行っている