
マレーシアマスターズGPゴールドは21日、男子シングルスの3回戦とその他種目の2回戦を行い、日本勢はシングルス2人、ダブルス8組が勝ち残った。とりわけ女子ダブルスでは、1回戦を突破した福万尚子・與猶くるみ組、福島由紀・廣田彩花組、米元小春・田中志穂組に加えて、初戦不戦勝で今シーズン公式戦初登場となったA代表の高橋礼華・松友美佐紀組と松尾静香・内藤真実組がすべて勝利し、ベスト8の5枠を占めた
高橋・松友組は2016年の公式戦初戦を白星で飾った直後、BadPaL の取材に応じ、「いい形で勝てたので、結果的に今大会への出場を決めてよかったと言える」と笑みを見せた。試合勘をつかむためこの大会に出ておきたいという気持ちは昨年から抱いていた。しかし、厳しいA代表強化合宿の後、国際大会に臨むには準備が十分でない部分があったという
今シーズン直近の目標として、昨シーズン同様、早い段階でのスーパーシリーズ(SS)の優勝を狙うのかと問うと、2人そろって力強くうなずいた。その上で、特に重視する大会として、3月の全英オープンSSプレミアを挙げた。一方、2人が4年前から目標にしてきたあこがれの存在でもある中国トップの1人、ワン・シャオリ選手が引退したことについて聞くと、「できればリオデジャネイロ五輪に出てほしかった」と失望を隠さなかった。同選手のプレーに学び、同選手のペアに追いつき追い越すことをここまで成長の大きな原動力にしていただけに、これから先のモチベーションに少なからず影響が出ることも懸念される。しかし高橋、松友両選手は、「それで目標を失うことはない」と強調した

福万・與猶組は、2回戦で世界ランク下位の台湾ペアを難なく下し、順当に準々決勝へ。ベスト4入りをかけてあす、今大会最大の山場である中国ユー・ヤン/タン・ユエンティン組との対戦を迎える。意気込みを聞くと、「前回対戦した昨年10月の独ビットブルガーオープンGPゴールドでは、2ゲームとも中盤から追い上げられて敗れた(18-21,19-21)。今回は負けられない」(福万)。「向かっていくだけ、自信はある」(與猶)と述べ、勝利に強い意欲を示した

松尾・内藤組は、前回の五輪レース中のスイスオープンGPゴールドで最後に対戦してから約4年ぶりにインドのエースペア、ジュワラ・グッタ/アシュウィニ・ポンナッパ組と顔を合わせた。世界選手権銅メダルの実績を持つ相手だけに苦戦も予想されたが、第1、第2ゲームとも前半こそもみあうが後半抜け出し、ストレートで勝利した
BadPaL が試合後、感想を聞くと、「風のある試合会場では引いてしまうことが多かったが、今回はそうならないよう自然と修正できた」と答えた。背景には、昨シーズン終盤、香港オープンSSでいったん調子を落とながら、次のマカオオープンGPゴールドの時、「自分たちの形を作り上げることができた」ことがある。その後の全日本総合選手権(3位)、メキシコオープンGP(優勝)と、内容的にもいい流れが続いていると説明した。今シーズンの目標を聞くと、一義的には五輪レースを見据え、「SSでベスト4以上の成績を残していく」とした。その一方で、対戦相手や、ともに出場権を争う日本のライバルのことは気にせず、自分たちのプレーを出していくことに注力する。4年前に経験した五輪レースでやらなかったことも試みるが、「それができれば負けないという自信がある」と話した

福島・廣田組の相手は、1回戦で今大会第3シードの世界6位、韓国チョン・ギョンウン/シン・スンチャン組を破って勝ち上がってきた世界22位、タイのラウィンダ・プラジョンジャイ/ジョンコンハン・キッティハラクン組。世界ランクはほぼ同位ながら、勢いづいた相手の優位が予想されたが、結果は福島・廣田組の完勝に終わった
福島、廣田両選手に試合後、現時点における自分たちの世界での立ち位置(実力)をどう見ているのか聞いてみると、福島選手が未だ対戦したことのないトップペアもいるため、しばし回答に窮した後、「自分たちのいる世界ランク20位台とトップ8では(実力が)違う、とスタッフに言われ悔しかった」と明かした。廣田選手は「今後、トップペアとの対戦を数多く重ねて、自分たちの通用するところ、通用しないところを学びつつ向っていきたい」と述べた

日本女子ダブルス陣の中で最も厳しい試合となることが予想されたのが米元・田中組。相手は世界ランク9位のセリーナ・ピーク/イーフィア・ムスケンス組だ。ところがいざふたを開けてみると、攻守ともに前がかりでくるオランダペアに一歩も引けを取らず、むしろこの日は攻撃力で相手を上回り快勝した
田中選手は試合後、BadPaL に対し、「日本にも世界ランク上位の高橋・松友組(4位)や福万・與猶組(8位)がいる。全日本総合選手権の準決勝で福万・與猶組と対戦した時、手ごたえをつかんでいたので、今回、世界9位が相手でもやれるという自信があった」と明確に語った


女子シングルスでは佐藤冴香選手と橋本由衣選手が勝ち、ベスト8に入った
佐藤選手は試合後、初戦に続いて体がきつい状況にあることを認めた。それでも自ら積極的に動いていた点を尋ねると、「先に仕掛けて自分が主導権を握っていないと。相手に仕掛けられる方がきつい」と苦笑した。BadPaL が強化合宿で体を苛め抜いた直後にこの大会に出場する意義を問うと、「ランキングポイントを稼げるときに稼いでおきたい」と率直な答えを返した。その上で「きついスケジュールではあるが、それを言い訳にしない。それでも勝ってこそ、五輪出場が見えてくる」と言い切った
橋本選手は、「昨年11月の香港オープンSSで負けていた相手だったので、この試合が1つのヤマと考えていた」と試合後明かし、「香港では第2ゲームの出だしにいかれたので、気を付けて入り、うまくいった」と答えた。一方、先に試合をした佐藤冴香選手が2回戦を勝ったが、「想定内で、自分も負けられないと思っていた」という。ただ、「GPゴールドのベスト8は意味がない」ときっぱり。あす以降も勝って、さらに上を狙う姿勢をあらためて強調した

一方、今別府香里選手と川上紗恵奈選手はそれぞれ世界ランク上位の相手と対戦。ともに第1ゲームを失いながら盛り返してファイナルゲームまでもちこみ、勝機はあったものの、最後は力尽きベスト16どまりに終わった

このうち川上選手は、ファイナルゲーム20-15と5つのマッチポイントを握りながら、その後、プレーが単調になり、五輪出場圏内にいるスコットランドのカースティ・ギルモア選手の術中にはまる形で7連続得点を許してしまい逆転負け。経験の不足を露呈する形で、眼前の勝利をつかみ損ねた。試合直後に話を聞くと、「最後はパターン化してしまい、何を打っていいか分からなかった。まだまだ足りないものが多い」と、悔し涙を浮かべながら言葉を絞り出した。若い川上選手にとって、この敗戦をしっかり受け止め次に活かすことができるかが、さらなる成長のカギとなる
男子ダブルスは、園田啓悟・嘉村健士組と佐伯裕行・垰畑亮太組の試合がほぼ同時に行われ、第1ゲームの競り合いをそれぞれ27-29、23-25で落としながら、ともに続く2ゲームを奪い返して逆転勝ち。準々決勝へ駒を進めた
インドネシアのベテラン2人、マルキス・キド/ヘンドラ・アプリダ・グナワン組に競り勝った園田・嘉村組は試合後、BadPaL に対し、「2対0で勝ちたかったが……」(嘉村)と反省の弁を述べながらも、「(第1ゲームを27-27まで競り合いながら落とした後も)集中力をキープできたのが勝因」(園田)と冷静にコメント。あらためて、「全日本総合選手権以降、集中してやれている」と好調をアピールした


タイの実力者ボディン・イサラ/ニピトポン・プアンプアンペク組をファイナルゲーム21-19でギリギリ退けた佐伯・垰畑組は、試合内容に関しては苦笑いし てみせたが、「今は結果が大事」と勝てたことを率直に喜んだ。第1ゲームを23-25で競り負けたインパクトを尋ねると、以前ほど動揺することなく自然に次のゲームに入っていけたという。ゲームカウントを1対1に戻して迎えたファイナルゲームも序盤よりリードを許し、一時は5-13と最大8点差をつけられてしまう。しかし中盤以降、攻める形に持っていくことができたことで逆転勝ちにつなげられたと語った

混合ダブルスは、それぞれ男子、女子ダブルスへの出場を兼ねる園田啓悟選手と福万尚子選手の2人が、シードの韓国ペアをフルゲームの末に破って、ベスト8に入った
福万選手に試合の感想を聞くと、「男子と女子の個々の力ではそれぞれ相手をより上。負けないと思った。疲れは多少あるが、モチベーションの方が上回っている」と自信を語った。また園田選手に混合ダブルスでリオ五輪出場を狙う思いを聞くと、「やるからには、日本代表の中で抜け出したい。ただそう簡単にはいかない」と慎重に述べた

一方、全日本総合選手権で優勝し、リオ五輪の混合ダブルス要員としてA代表に組み込まれた数野健太・栗原文音組は敗れ、ベスト8に届かなかった
この種目で世界選手権3度優勝(1985,89,91年)、アトランタ五輪では銀メダル(96年)を手にした日本代表ヘッドコーチ、パク・ジュボン氏がコーチ席に座り直接コーチングを行った。しかし、1回戦で今大会第1シード、インドネシアのタントウィ・アーマド/リリアナ・ナッチル組を破って勢いに乗る中国の若手ペア、ツェン・シウェイ/リ・インフェイ組に力及ばず、期待に応えることはできなかった
日本選手2回戦の結果
【女子シングルス】 佐藤冴香(世界14位)〈21-11,21-17〉スパニダ・カテトン(タイ、世界59位)、橋本由衣(世界18位)〈21-13,21-7〉マリア・フェベ・クスマストゥティ(インドネシア、世界21位)、 プサルラ・ヴェンカタ・シンドゥ(インド、世界12位)〈21-13,13-21,21-14〉今別府香里(世界36位)、カースティ・ギルモア(スコットランド、世界20位)〈21-16,13-21,22-20〉川上紗恵奈(世界116位※予選勝ち上がり)
【男子ダブルス】 キム・サラン/キム・ギジョン(韓国、世界7位)〈21-16,21-15〉平田典靖・橋本博且(世界19位)、園田啓悟・嘉村健士(世界24位)〈27-29,16-21,14-21〉マルキス・キド/ヘンドラ・アプリダ・グナワン(インドネシア、世界137位※予選繰り上がり)、ボディン・イサラ/ニピトポン・プアンプアンペク(タイ、世界33位)〈25-23,19-21,19-21〉佐伯裕行・垰畑亮太(世界116位※予選繰り上がり)
【女子ダブルス】 高橋礼華・松友美佐紀(世界4位)〈21-15,21-16〉コ・アラ/ユ・ヘウォン(韓国、世界15位)、福万尚子・與猶くるみ(世界8位)〈21-16,21-11〉ウー・ファンチエン/チャン・カイシン(台湾、世界55位)、松尾静香・内藤真実(世界13位)〈21-14,21-17〉ジュワラ・グッタ/アシュウィニ・ポンナッパ(インド、世界14位)、ラウィンダ・プラジョンジャイ/ジョンコンハン・キッティハラクン(タイ、世界22位)〈11-21,9-21〉福島由紀・廣田彩花(世界23位)、セリーナ・ピーク/イーフィア・ムスケンス(オランダ、世界9位)〈16-21,17-21〉米元小春・田中志穂(世界41位)
【混合ダブルス】 チェ・ソルギュ/オム・ヘウォン(韓国、世界12位)〈17-21,21-19,16-21〉園田啓悟・福万尚子(世界28位)、数野健太・栗原文音(世界29位)〈18-21,14-21〉ツェン・シウェイ/リ・インフェイ(中国)
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準々決勝の対戦カード
【男子シングルス】
リー・チョンウェイ(マレーシア、世界5位)対アジャイ・ジャヤラム(インド、世界21位)
トミー・スギアルト(インドネシア、世界11位)対チャオ・ビン(中国、世界54位)
ウン・カロン(香港、世界18位)対イスカンダー・ズルカルナイン・ザイヌディン(マレーシア、世界51位)
キダンビ・スリカンス(インド、世界9位)対ホワン・ユシアン(中国、世界76位)
【女子シングルス】
ソン・ジヒョン(韓国、世界8位)対佐藤冴香(世界14位)
プサルラ・ヴェンカタ・シンドゥ(インド、世界12位)対リンダウェニ・ファネトリ(インドネシア、世界25位)
ベ・ヨンジュ(韓国、世界13位)対橋本由衣(世界18位)
ブサナン・ウンバンルンパン(タイ、世界19位)対カースティ・ギルモア(スコットランド、世界20位)
【男子ダブルス】
キム・サラン/キム・ギジョン(韓国、世界7位)対ウラジミール・イワノフ/イワン・ソゾノフ(ロシア、世界11位)
クー・ケンケット/タン・ブンヒョン(マレーシア、世界18位)対佐伯裕行・垰畑亮太(世界116位※予選繰り上がり)
ツァイ・チアシン/リー・シェンム(台湾、世界14位)対マルクス・フェルナルディ・ギデオン/ケビン・サンジャヤ・スカムルジョ(インドネシア、世界16位)
ゴー・ウェイシェム/タン・ウィーキョン(マレーシア、世界15位)対園田啓悟・嘉村健士(世界24位)
【女子ダブルス】
高橋礼華・松友美佐紀(世界4位)対松尾静香・内藤真実(世界13位)
福島由紀・廣田彩花(世界23位)対リ・インフェイ/ドゥ・ユエ(中国、世界209位※予選勝ち上がり)
福万尚子・與猶くるみ(世界8位)対ユー・ヤン/タン・ユエンティン(中国、世界34位)
チャン・イエナ/イ・ソヒ(韓国、世界5位)対米元小春・田中志穂(世界41位)
【混合ダブルス】
シン・ベクチョル/チェ・ユジョン(韓国、世界11位)対ツェン・シウェイ/リ・インフェイ(中国)
リー・チュンヘイ/チャウ・ホイワー(香港、世界10位)対ロナルド・アレキサンダー/メラティ・ダエバ・オクタビアニ(インドネシア、世界21位)
園田啓悟・福万尚子(世界28位)対タン・キアンメン/ライ・ペイジン(マレーシア、世界139位※予選勝ち上がり)
チャン・ペンスーン/ゴー・リュウイン(マレーシア、世界15位)対ハフィズ・ファイサル/シェラ・デヴィ・アウリア(インドネシア、世界65位※予選繰り上がり)