
ロンドン五輪で初のメダル獲得という快挙に至った背景の1つに、協会と所属チームとの連携強化がある――。ジャパンオープンスーパーシリーズ(SS)決勝の朝、日本バドミントン協会が開いたオリンピック報告会で、このような指摘がなされた
ヘッドのパク・ジュボン氏を筆頭に、米倉加奈子氏(女子シングルス)、リオニー・マイナキー氏(男子ダブルス)、中島慶氏(女子ダブルス)のナショナルチームコーチ陣4人と、選手強化本部長を務める銭谷欽治氏が、全国各地から集まった指導者らを前にオリンピックまでの道程を振り返った
銭谷氏は、ロンドン五輪の好結果を招いた主な要因として、(1)ナショナルトレーニングセンターの有効活用(2)パク氏のコーチ専従化(3)所属企業・大学との連携強化――の3点を挙げた。中でも(3)について、「意見の食い違いはあれど、世界一になりたいという目的は一緒」と指摘。今後も目的達成のため、代表選手の所属するチームとのコミュニケーション強化に努めていく方針を確認した。この点に関しては、女子ダブルスコーチの中島氏も、「協会と企業の協力で、選手はもっと強くなれる」と述べている。また女子シングルスコーチの米倉氏は、日ごろから選手を見ている所属チームのコーチの国際大会帯同を認めるサポートコーチシステムの導入を説明した

(1)については、ナショナルトレーニングセンターを使った国際大会前の合同合宿の成果が強調された。とりわけ、オリンピック前の2週間の合宿では、「フィジカルとメンタルの強化が図れた」(中島氏)、「代表選手の五輪に臨む気持ちが伝わってきた」(パク氏)、「求められる役割を把握した男子スパーリングパートナーのおかげで効果的な練習ができた」(米倉氏)という
今後の課題としては、男子ダブルスコーチのマイナキー氏から「なかなか結果が安定しない。ウエイトトレーニングが重要」との指摘が上がった。銀メダルという結果を残した女子ダブルスの中島氏は「まだまだスピードとパワーが足りない」と注文をつけた。女子シングルスコーチの米倉氏は、心理面の揺れが大きく体調管理の難しい女子選手にとっての、トレーナーをはじめとする女性スタッフの必要性を説いた
パク氏はこれに関連して、ジュニア育成指導強化の観点から、集まったジュニアの指導者に向け、ナショナルチームに入ってからでは変えることが困難な基本の大切さを強調。若い選手への指導では、ゲームよりも、フットワークや基礎打ち、ノックを重要視してほしいと呼び掛けた
銭谷氏は、協会が既にリオデジャネイロ五輪に向けた選手強化に動き出していると説明し、2年前にスタートした日本オリンピック委員会(JOC)のマルチサポートを活用して、さらに選手のための環境づくりを進めると述べた。同時に、バドミントンがJOCの中でメダル種目になったことで今後は結果を求められると指摘。選手ならびに指導者は、ジュニア時代から、競技力だけでなく、人間力さらにはコミュニケーション能力の向上に努めてほしいと語った
一方、毎月のように各国・地域で大会が開催され、世界ランク維持・向上のため選手がタイトなスケジュールで海外転戦を余儀なくされる現状については、直ちに改善するのは難しいと認めた。国際大会の多さがトップ選手の怪我や消耗につながるとの指摘は中国バドミントン協会などからも上がっている。ただ世界バドミントン連盟(BWF)は、1年を通じて国際大会を開催する方針を変えるつもりはなく、各国・地域が出場する大会を選ぶべき、との立場を崩していない