ロンドン五輪バドミントン5日目、決勝トーナメントがスタートし、男子ダブルスを除く4種目の1回戦が行われた
ダブルスは、一次リーグを突破した各グループ上位2ペアずつ、計8ペアが金、銀、銅の3つのメダルを争う。日本ダブルス陣で唯一、勝ち進んだ藤井瑞希・垣岩令佳組は、長身から繰り出す強力な攻撃が武器のクリスティナ・ペダーセン/カミラ・リタ・ユール組(デンマーク)との第1ゲーム、一進一退の接戦を展開する。後半抜け出し先にゲームポイントを握るが、20-20と追い付かれてしまう。それでも気持ちが引いてしまうことはなく、そこから2連続得点でこのゲームを奪うと、第2ゲームは勢いに乗って試合の流れを掌握。点差をどんどん広げていき、21-10の大差で過去1勝3敗と負け越していた難敵を攻略した
オリンピックでの日本選手の準決勝進出は、北京の末綱聡子・前田美順組から2大会連続。ただ前回は3位決定戦で敗れ、メダルを逃している。藤井・垣岩組は大会6日目(2日)の準決勝でブルース・アレックス/ミッシェル・リ組(カナダ)に勝てば、銀メダル以上が確定。負ければ、銅メダルをかけた3位決定戦に回る
なお、世界バドミントン連盟(BWF)はこの日、前日の女子ダブルス一次リーグ最終戦で、故意に負け試合を行ったとして事情を聞いた中国、韓国、インドネシアのペア4組8人に対し、全員を失格処分とする異例の決定を下した。その後、韓国とインドネシア(後に取り下げ)が行った不服申し立てを手続きに伴い却下。失格したペアの入っていたグループの3位と4位のチームを1位と2位に繰り上げ、準々決勝の新たな組み合わせを示した
この決定に関し、バドミントンをよく知るメディアや関係者は、BWFがようやく重い腰を上げたとの見方を示す。今回ほど露骨な形でないにしろ、個々の選手としてよりも、国やチームとしてメダルを狙うための「戦略」として、同国・同チームの選手同士の対戦の場合を含め、いわゆる「勝ちを譲る行為」は物議を醸しながらも事実上、黙認されてきた経緯があるためだ。ただその行為自体を明確に定義するのが難しいのも現実で、世界中が注目するオリンピックという大舞台でBWFが下した今回の決定が今後、バドミントンの国際大会にどのように反映されていくかが注目される。一方でメディアは今回、中国が即座にBWFの決定を受け入れる姿勢を示したことを興味深く受け止めた
シングルスでは、一次リーグを通過した各グループ1位のみ、合わせて16人によるベスト8入りをかけた戦いが行われた
男子シングルスの佐々木翔選手は、世界ランクは下位ながらあなどれないケビン・コルドン選手(グアテマラ)を相手に第1ゲーム、なかなか自分のペースに持ち込めない。終盤まで互いに1点ずつ取り合う接戦となり、先に19-20とゲームポイントを許してしまう。ここから2連続得点で逆にゲームポイントを奪い返すも決め切れずに追い付かれるが、再び2連続得点で23-21とし、何とかこのゲームを取る。第2ゲームに入っても接戦は続くが11-8とリードしてインターバルを迎えた後、エンジンがかかったか、着実に点差を広げていき、結局21-10と完勝した
この結果、佐々木選手はオリンピックの男子シングルスで日本選手初のベスト8入りを果たすと同時に、かねて希望していた、北京五輪金メダリスト、リン・ダン選手(中国)への挑戦権を得た
女子シングルスの佐藤冴香選手は、過去4戦して勝ちのない強豪ティネ・バウン選手(デンマーク)を序盤から臆することなく攻め立て、前半を11-4と大量リードで折り返す。後半に入っても攻勢は続き、13-6と一時は7点の大差をつける。しかし、ラリーの途中でシャトルに飛びつき着地した際、膝を負傷し床に倒れ込んでしまう。それでも試合をあきらめたくない佐藤選手は立ち上がり、足をひきずりながらもプレーを続けようとするが、誰の目にも試合続行が不可能であることは明らか。最後は、コーチが試合を止めた。試合後、涙が止まらない佐藤選手を気遣い、バウン選手が歩み寄り抱きしめる場面も見られた
決勝トーナメント1回戦の結果
【男子シングルス】
リー・チョンウェイ(マレーシア)〈21-12,21-8〉シモン・サントソ(インドネシア)、カシャップ・パルパリ(インド)〈21-14,15-21,21-9〉ニルカ・カルナラトネ(スリランカ)、チェン・ロン(中国)〈21-17,21-17〉ウォン・ウィンキ(香港)、ピーター・ゲード(デンマーク)〈21-9,21-16〉ソン・ワンホ(韓国)
イ・ヒョンイル(韓国)〈21-17,21-13〉ヤン・ヨルゲンセン(デンマーク)、チェン・ジン(中国)〈19-21,21-12,21-9〉マーク・ツイブラー(ドイツ)、佐々木翔(日本)〈23-21,21-10〉ケビン・コルドン(グアテマラ)、リン・ダン(中国)〈21-9,21-12〉タウフィック・ヒダヤット(インドネシア)
【女子シングルス】
ワン・イーハン(中国)〈15-21,21-14,21-14〉ベ・ヨンジュ(韓国)、チェン・シャオチエ(台湾)〈21-18,21-10〉グ・ジュアン(シンガポール)、サイナ・ネワル(インド)〈21-14,21-16〉ヤオ・ジエ(オランダ)、ティネ・バウン(デンマーク)〈14-15棄権〉佐藤冴香(日本)
イップ・プイイン(香港)〈13-21,21-12,21-16〉ピ・ホンヤン(フランス)、リ・シュエリ(中国)〈21-16,23-21〉タイ・ツーイン(台湾)、ユリアン・シェンク(ドイツ)〈16-21,15-21〉ラッチャノク・インタノン(タイ)、ワン・シン(中国)〈21-15,21-8〉アドリアンティ・フィルダサリ(インドネシア)
【女子ダブルス】(*失格処分の8選手に代わって繰り上がった選手)
【A1位】*ニナ・ビスロバ/バレリ・ソロキナ(ロシア)〈21-9,21-7〉【C2位】*ミッシェル・クレア・エドワーズ/アナリ・ビルジョエン(南アフリカ)
【B1位】チェン・ウェンシン/チエン・ユーチン(台湾)〈10-21,14-21〉【D2位】ツァオ・ユンレイ/ティエン・チン(中国)
【C1位】*レヌガ・ビーラン/リーン・チュー(オーストラリア)〈9-21,21-18,18-21〉【A2位】*ブルース・アレックス/ミッシェル・リ(カナダ)
【D1位】クリスティナ・ペダーセン/カミラ・リタ・ユール(デンマーク)〈20-22,10-21〉【B2位】藤井瑞希・垣岩令佳(日本)
【混合ダブルス】
【A1位】ツァン・ナン/ツァオ・ユンレイ(中国)〈21-13,21-17〉【C2位】トーマス・レイバーン/カミラ・リタ・ユール(デンマーク)
【B1位】ヨアキム・フィッシャー・ニールセン/クリスティナ・ペダーセン(デンマーク)〈21-15,21-13〉【D2位】スッケー・プラパカモン/サラリー・トゥントーンカム(タイ)
【C1位】タントウィ・アーマド/リリアナ・ナッチル(インドネシア)〈21-15,21-9〉【A2位】マイケル・フックス/バージット・ミシェルズ(ドイツ)
【D1位】シュー・チェン/マー・ジン(中国)〈19-21,21-16,23-21〉【B2位】ロベルト・マティウシアク/ナディエズダ・ジーバ(ポーランド)
大会6日目(2日)は男女シングルスと男子ダブルスの準々決勝、女子ダブルスと混合ダブルスの準決勝が行われる。各種目の対戦カードは以下の通り
【男子シングルス】
リー・チョンウェイ(マレーシア)対カシャップ・パルパリ(インド)、チェン・ロン(中国)対ピーター・ゲード(デンマーク)
チェン・ジン(中国)対イ・ヒョンイル(韓国)、リン・ダン(中国)対佐々木翔(日本)
【女子シングルス】
ワン・イーハン(中国)対チェン・シャオチエ(台湾)、サイナ・ネワル(インド)対ティネ・バウン(デンマーク)
リ・シュエリ(中国)対イップ・プイイン(香港)、ワン・シン(中国)対ラッチャノク・インタノン(タイ)
【男子ダブルス】
【A1位】カイユン/フーハイファン(中国)対【C2位】グオ・ツェンドン/チャイ・ビアオ(中国)
【B1位】マニーポン・ジョンジット/ボディン・イサラ(タイ)対【D2位】クー・ケンケット/タン・ブンヒョン(マレーシア)
【C1位】マシアス・ボー/カールステン・モゲンセン(デンマーク)対【A2位】ファン・チエミン/リー・シェンム(台湾)
【D1位】チョン・ジェソン/イ・ヨンデ(韓国)対【B2位】モハンマド・アーサン/ボナ・セプタノ(インドネシア)
【女子ダブルス】(*失格処分の8選手に代わって繰り上がった選手)
【A1位】*ニナ・ビスロバ/バレリ・ソロキナ(ロシア)対【D2位】ツァオ・ユンレイ/ティエン・チン(中国)
【A2位】*ブルース・アレックス/ミッシェル・リ(カナダ)対【B2位】藤井瑞希・垣岩令佳(日本)
【混合ダブルス】
【A1位】ツァン・ナン/ツァオ・ユンレイ(中国)対【B1位】ヨアキム・フィッシャー・ニールセン/クリスティナ・ペダーセン(デンマーク)
【C1位】タントウィ・アーマド/リリアナ・ナッチル(インドネシア)対【D1位】シュー・チェン/マー・ジン(中国)