
マレーシアマスターズGPゴールド決勝、高橋礼華・松友美佐紀組は、今年最初の国際大会でライバルペアの1つ、中国ユー・ヤン/タン・ユエンティン組を初めて破って優勝した。次のターゲットは、主戦場である上位大会スーパーシリーズ(SS)でのタイトル獲得となる
日本のエースペアは今大会はじめから BadPaL に対し、「ランキングポイントを稼ぐためではなく、海外の選手と試合がしたくて来た」と、強化合宿で体を苛め抜いた翌週に開催される、SSより下位のGPゴールドへの参戦を決めた理由を説明した。「試合勘」を大切にする高橋・松友組は、世界バドミントン連盟(BWF)がSSの開催スケジュールを変更した昨年、それまで1月に行われていた2つのSS(韓国、マレーシア)が3月末以降に先送りとなったことで試合間隔が空き、シーズン最初の国際大会で外国選手のプレーに慣れず対応に苦慮した経験を持つ。そのため昨年末の段階から、五輪レースの最中でもある今年は1月のマレーシアマスターズに出場しておきたい意向を口にしていた

第1ゲームは、「先手先手でいきたい」と準決勝に勝利した後、話していた言葉通り、高橋・松友組が序盤から主導権を握り前半を11-4、後半も17-8とリードを大きく広げる。そのまま先にゲームポイント(20-14)を握るが、「正直、気のゆるみがあった」と高橋選手が試合後認めた通り、ここから追い上げにあい2点差まで詰め寄られる。それでも「中国ペアと対戦する時は大量リードしててもいつか追いついてくると思ってやってる。しようがない」との経験則から必要以上にあたふたすることはなく、次の1点をしっかり取って21-18でオープニングゲームをものにする

エンドの変わった第2ゲーム、それまで不気味なほど鳴りを潜めていた中国ペアの攻撃が効果的に決まり始め、高橋・松友組は4-10とこの試合初めて劣勢に立たされる。ところが徐々に点差を詰めていく中で、「若いタン選手が少し焦り出したのを感じ、気持ちよく打たせないよう決め球をタン選手に集める」戦略に出る。さらに「タン選手のカバーのために後ろに回ったユー・ヤン選手を動かす」と、これが奏功。7-11で入った後半早々、5連続得点を決め逆転に成功する。その後は一進一退で19-17まで進むが、このゲームを落とせない中国ペアの攻めが勝って19-20と流れは再び中国側へ。ファイナルゲーム突入は濃厚かに見えた。しかし高橋・松友組は気持ちを切らすことなくゲームポイントをしのぎ、そのまま連続得点で中国ペアを振り切ると、集中し厳しかった表情から一転、歓喜を爆発させた
高橋、松友両選手は表彰式の後、BadPaL の取材に応じ、「タン選手の調子が万全ではなくラッキーな部分もあった」(松友)としながらも、最強の相手と認めるユー・ヤン選手のペアに勝てたことには格別な思いがあるかと尋ねると、2人そろってうなずいた。ドローを見た時点で、逆の山にいたユー・ヤン/タン・ユエンティン組と(決勝で)対戦することになると思っていたという。さらに、「これまで勝ったことがなかったタン選手にもどうしても勝ちたかった」(高橋)と語った。その一方で、「次回対戦する時は研究され、さらに強くなっていると思う」(松友)と指摘し、勝利の直後にもかかわらず次への警戒も忘れなかった
2人にあらためて2016年の目標を聞くと、「五輪の前に、まずはSSで1勝すること。中島慶コーチとも約束した」ときっぱり答えた。高橋・松友組はこの後、国内では2月14日まで続く日本リーグ、海外では女子国・地域別対抗戦ユーバー杯アジア予選となるアジア団体選手権(2月15~21日)が、次に出場する試合となる

女子シングルスは、2回戦で川上紗恵奈選手、準決勝で橋本由衣選手にいずれも逆転勝ちし、ノーシードから決勝まで駆け上がってきたスコットランドのカースティ・ギルモア選手が、第3シードのインドのプサルラ・ヴェンカタ・シンドゥ選手に挑んだ。しかし、準決勝で第1シードの韓国ソン・ジヒョン選手を倒すなど今大会好調のシンドゥ選手を崩すことはかなわず完敗。準優勝に終わった。シンドゥ選手はこの大会、2013年に続く2回目の優勝。なお、昨年この種目は、奥原希望選手が制していた
シンドゥ選手はこの優勝で賞金9,000ドルを手にした。ただ、この大会の直前に参戦したインドのプロリーグ「プレミアバドミントンリーグ(PBL)」では10倍超の9万5,000ドルを得ている。この差を示しながら、BadPaL がシンドゥ選手に直接話を聞いてみると、「リーグと今大会のような世界バドミントン連盟(BWF)の公式大会に出場する際のマインドセットはもちろん違う」と笑顔で認めた上で、「リーグへの参戦はインド国内の競技促進の意味で重要。さらに出場選手は世界のトップばかりで試合のレベルは高く、良いトレーニングにもなる」と語った。また、五輪レースの最中でしかも公式大会の直前、興業的意味合いも持つリーグに参戦することに伴うケガのリスクへの懸念はなかったか尋ねると、「アスリートの生活にケガのリスクは切っても切り離せない、どこででも起こり得る。準備とケアをしっかりするだけ」と明確に答えた

混合ダブルスは、昨年11月に行われた世界ジュニア選手権個人戦で、男子ダブルスと混合ダブルスの2冠に輝いた18歳ツェン・シウェイ選手と、女子ダブルス準優勝の17歳リ・インフェイ選手が組む中国の2人が、予選から決勝まで勝ち上がってきた開催国マレーシアのペアをストレートで下し、優勝した
この若い中国ペアは、◆1回戦で第1シードのインドネシのタントウィ・アーマド/リリアナ・ナッチル組◆2回戦で数野健太・栗原文音組◆準々決勝で第5シードの韓国シン・ベクチョル/チェ・ユジョン組◆準決勝で第4シードのリー・チュンヘイ/チャウ・ホイワー組――と、実力あるペアを次々と破って頂点に立ち、シニアでも通用する力を証明した

2010年以来6年ぶりに開催国マレーシアの選手同士による決勝となった男子シングルス。第1シードの33歳リー・チョンウェイ選手は、ようやく頭角を現し始めた24歳イスカンダー・ズルカルナイン・ザイヌディン選手の今大会でのパフォーマンスを称え、さらなる精進の必要性と今後の活躍への期待を伝えながらも、あっさり勝利。この大会、2009~12年に次ぐ5回目のタイトルを手にした

男子ダブルスでは、マレーシアバドミントン協会(BAM)から離れ、プロとしてリデジャネイロ五輪出場を目指しているベテラン、クー・ケンケット/タン・ブンヒョン組が2009、11、12年に続く自国での4回目の優勝を狙った。しかし準決勝で園田啓悟・嘉村健士組に快勝したインドネシア3番手のマルクス・フェルナルディ・ギデオン/ケビン・サンジャヤ・スカムルジョ組にファイナルゲーム18-21で敗れ、最後にマレーシアGPゴールド決勝のコートに立った13年と同じく、準優勝に終わった
決勝の結果
【男子シングルス】 リー・チョンウェイ(マレーシア、世界5位)〈21-18,21-11〉イスカンダー・ズルカルナイン・ザイヌディン(マレーシア、世界51位)
【女子シングルス】 プサルラ・ヴェンカタ・シンドゥ(インド、世界12位)〈21-15,21-9〉カースティ・ギルモア(スコットランド、世界20位)
【男子ダブルス】 マルクス・フェルナルディ・ギデオン/ケビン・サンジャヤ・スカムルジョ(インドネシア、世界16位)〈18-21,21-13,21-18〉クー・ケンケット/タン・ブンヒョン(マレーシア、世界18位)
【女子ダブルス】 高橋礼華・松友美佐紀(世界4位)〈21-18,22-20〉ユー・ヤン/タン・ユエンティン(中国、世界34位)
【混合ダブルス】 ツェン・シウェイ/リ・インフェイ(中国)〈21-14,21-19〉タン・キアンメン/ライ・ペイジン(マレーシア、世界139位※予選勝ち上がり)