
フィリピン・マニラで毎年開催される「FDGカップ」に、初めて日本のトップ選手が参加した。大会のメーンホストであるフレデリック・D・ゴー氏(FDG)から直接要請を受けた BadPaL の呼びかけに応じてくれたのは、昨シーズンよりドイツのブンデスリーガでプレーする藤井瑞希選手。インドネシアのタウフィック・ヒダヤット元選手と共に、ゴー氏が率いる不動産関連会社の運営する大型ショッピングモール内でエキシビションを行った
この大会は元々、ゴー氏が社長兼最高執行責任者(COO)を務める上場会社ロビンソンズランドの関連会社社員の健康促進と親睦を目的に2004年にスタートした。その付随イベントとして毎年、国内外からトップ選手を招き、熱烈なバドミントン愛好家であるゴー氏自身が一緒にプレーするエキシビションを披露してきた。

これまでFDGカップに招かれた主な外国人選手は、◆09年イ・ヨンデ/イ・ヒョジョン組を含む韓国ナショナルチーム◆10年チェン・ウェンシン/チエン・ユーチン組(台湾)〈https://badpal.net/2010/06/13/exhibition-in-manila-with-taipeis-top-pair/〉◆11年リー・チョンウェイ、クー・ケンケット(ともにマレーシア)〈https://badpal.net/2011/07/04/chongwei-has-come-to-philippines-again/〉◆12年タントウィ・アーマド/リリアナ・ナッチル組、シモン・サントソ(いずれもインドネシア)◆13年リー・チョンウェイ(マレーシア)、ピーター・ゲード(デンマーク)〈https://badpal.net/2013/07/01/peter-gade-back-in-action-with-chongwei-at-mall-in-the-philippines/〉◆14年ワン・シン、ワン・リン(ともに中国)〈https://badpal.net/2014/07/15/former-world-no-1s-from-china-come-to-play-in-manila/〉――と、いずれも各国・地域を代表する世界のトッププレーヤーばかり

ゴー社長は早くから、日本選手の招へいに強い意欲を示していた。ただ、企業所属の選手が多くスケジュール調整が難しい日本の状況も理解。毎年、「来年こそは」と、粘り強く待つ姿勢を見せていた。そのため今回、藤井選手の参加が正式に決まった時は喜び、エキシビション会場を日本ではあまり馴染みのないショッピングモールにしては、という BadPaL の提案を快諾してくれた
FDGカップのエキシビションをモール内で実施するのは、大会10周年記念でリー・チョンウェイ選手、ピーター・ゲード元選手いう2大スターを同時に招いた2013年に続いてこれが2度目。昨年参加した中国の女子シングルス元世界ランク1位の2人は、今回、準々決勝までが行われた試合会場と同じ、バドミントン専用施設内でエキシビションを行っていた

藤井選手に、ショッピングモールで実際にエキシビションをしてみた感想を聞くと、「いわゆる講習会やクリニックとは違い、バドミントンにまったく関心のない普通の人が買い物途中に足を止めて見てくれる、良い雰囲気を感じることができ楽しかった。このような不特定多数の人が集まる場所でバドミントンのすごさを伝えたい。日本でもできないか真剣に考えたい」と目を輝かせながら語った。唯一苦言を呈したのが、ゴー社長もしびれを切らした、司会を務めた芸能人のしゃべりの長さ。ちなみにエキシビションの前には、フィリピンで人気の歌手とダンサーがそれぞれパフォーマンスを披露し、会場を盛り上げた
FDGカップ最終日、準決勝・決勝の会場として使用されたショッピングモールは、ロビンソンズランドが運営するもの。床面はタラフレックスコート4面を一列に設置することが可能な広さで、天井も高く4階まで吹き抜けの広い空間を確保できる。ライトや背景の色でシャトルが見えにくい面はあるものの、実際に試合をした選手に聞くと、空調による風の影響はあまりなく、それほどプレーするのが困難な環境ではないという

実は今回、藤井選手のほかにもう1人、このショッピングモールでプレーをした日本人がいる。オープントーナメントに出場し3位入賞を果たした高階知也選手だ FDGカップではロビンソンズランドのグループ会社社員のみが参加できる大会に加えて、バドミントン関係者の強い要望に応える形で数年前よりオープントーナメントを始めた(当初はダブルスのみ)。外国人のエントリーも可能で、今回、日本から初めて、高階選手のほか、江藤理恵選手、米田健司選手という日本リーガー3人が招かれた

ダブルスは、必ずフィリピン選手と組まなければならないきまりがあり、力の劣るパートナーを集中的に狙われ、3人とも準々決勝までに敗退。しかしシングルスにもエントリーした高階選手は、フィリピンナショナルチームのメンバーやマレーシア選手ら4人を破ってベスト4に入り、大会最終日、各種目のセミファイナリスト以上のみプレーできるショッピングモール内の特設コートに立った。準決勝では優勝したフィリピン選手に敗れたが、高階選手は試合を終え、「ここでプレーできて楽しかった。また来たい」と笑顔で答えた

藤井、高階、江藤、米田の4選手は、大会終了後にモール近くのホテルの大広間に会場を移して行われた表彰式・ディナーにそろって招待された。ここで高階選手は、プレゼンターを務めた藤井選手からメダルを授与された。また藤井選手は、タウフィック・ヒダヤット元選手とともに、ゴー社長から参加してくれたことへの謝意と記念の楯を受けた
大会翌日に行われた会合(反省会)で、BadPaL が運営者側に初めてFDGカップに参加した日本選手に対する感想を聞いたところ、「バドミントンの技術が高いのはもちろんのこと、みなフレンドリーで非常によかった。誰からもネガティブな意見は出ていない。英語がうまく話せないのは問題ない。また来てほしい」との言葉が返ってきた