
香港オープンSS決勝、女子シングルスの奥原希望選手と女子ダブルスの高橋礼華・松友美佐紀組はともにストレートで敗れ、悔しい準優勝で今年最後のSSを終えた。ただそれぞれ次を見据えて、この負けを、自らのさらなる成長を引き出す発奮材料に変える決意を示した
今年初めて出場した上位大会で、周囲が驚くプレーを見せ決勝まで勝ち上がってきた奥原選手だったが、この日は台湾タイ・ツーイン選手に完敗。表彰式までは必死にこらえてきた悔し涙が、ミックスゾーンで一気にこぼれ落ちた。BadPaL の取材に対し絞り出した言葉は、「何もできなかった」
第1ゲーム前半は、タイ選手の多彩なショットに十分対応できないまま5-11とリードを許す。後半追いすがるも、16-20とゲームポイントを握られた状態から3点を返すのが精いっぱい。第2ゲームに入ると、タイ選手にミスも出るが、現時点における2人の力の差が一層明確になり、奥原選手は結局、追いつくことすらかなわず、11-21の大差で敗れ去った

奥原選手は、「想像していたのと違う相手の球にとまどった。徐々に慣れてきたところで相手がスピードを上げてきて、ついていけなかった」と説明し、タイ選手に対する自分の力不足を認めた。また、「上位大会の格というか、すごさを感じた。SSで勝つには勢いだけではダメ。もっと実力をつけなければ」と強調。今年3勝しているグランプリ(GP)などの下位大会との違いを、あらためて痛感したことを明かした
シニア大会の最高成績がGP優勝どまりの奥原選手(19歳)が今大会で対戦したのは、【1回戦】GPゴールド優勝2回の中国スン・ユ選手(20歳)【2回戦】GPゴールド優勝2回・世界選手権銅メダルのインドのプサルラ・ヴェンカタ・シンドゥ選手(19歳)【準々決勝】SS優勝1回の山口茜選手(17歳)【準決勝】GPゴールド優勝1回・世界選手権金メダルのスペインのカロリナ・マリン選手(21歳)【決勝】GPゴールド優勝2回・SS優勝2回の台湾タイ・ツーイン選手(20歳)――。いずれもジュニア時代からのライバルながら、2度にわたる膝のケガで戦線離脱を余儀なくされている間に先を行かれた「格上」の選手ばかり

準決勝までこれら格上を連破したことで、周囲は奥原選手を手放しで称賛し、完全復活を疑わなかった。ただ奥原選手本人の見方は違った。大会当初より、上位大会から長く離れていたためSSの雰囲気や出場選手のレベルが分からず復活が実感できないと話し、ようやく「少し自信を持てた」と口にしたのは、準決勝で世界チャンピオンのマリン選手に快勝したあと。そのマリン選手についても、「世界ランク上位の中国3選手と同レベルのトップ選手とは思っていない」と明言していたほど。それでも、決勝で完敗したタイ選手のことは、今後SSで戦っていく上で具体的な目標となる真のトップ選手の1人、との認識を示した
一方のタイ選手は、前日対戦が決まった時点で、今大会で活躍を見せる奥原選手の実力を認め、警戒感を示した上で、「自分から多くのミスをしないようにしたい」とコメントしていた。ただ決勝の後は、「思っていたより労せずに勝てて驚いている。おそらく奥原選手は、初対戦で自分のことがよくわからなかったのだろう」と述べた
奥原選手が優勝した2012年11月の世界ジュニア選手権千葉大会に第1シードとして出場していたタイ選手は、翌年1月のマレーシアオープンSSで、BadPaL に「奥原は勝ったのか?」とわざわざ聞きにくるほど、1つ歳下の日本人に注意を払っていた。なおタイ選手はこの大会、準決勝で、奥原選手の負傷棄権で勝ち上がったインドのサイナ・ネワル選手を、決勝では中国ヤオ・シュエ選手を破って、SS2勝目をあげた

女子ダブルスの高橋・松友組は、前週のチャイナオープンSSプレミア準決勝で敗れた世界チャンピオンの中国ツァオ・ユンレイ/ティエン・チン組との再戦に挑んだ。第1ゲームは2度の連続失点で前半につけられた点差を後半さらに広げられ、あっさり落とす。第2ゲームに入るとリズムをつかみ前半を11-6とリードして折り返す。しかし後半開始直後、追い上げを許して13-14と逆転されると、ここから何もできないまま、7連続得点を決められ完敗した。ツァオ/ティエン組にはこれで、2013年シンガポールオープン、14年オーストラリアンオープンに続き、SS決勝3敗目
高橋・松友組は表彰式後、BadPaL の取材に応じ、表彰台上で見せた笑顔から一転、厳しい表情でひとこと「悔しい」。「9月のアジア大会団体戦で勝った後、研究され、相手が自分たちの球を読んでいると感じる」と説明した。また、「第2ゲームでリードした後も、何かしてくるんじゃないかと警戒しすぎて、思い切りいけなかった」と反省の弁を述べた。今シーズンを振り返ると、念願だったSS初優勝をジャパンオープンで果たし、1年間を通じて6大会(SS5回、GPゴールド1回)で決勝まで進んだことを、自分たちの成長の証(あかし)と評価した。それだけに、「(レギュラーシーズンでは)最終戦となるこの大会で、もう一度優勝して締めくくりたかった」と述べ、決勝で敗れた無念さを隠さなかった。その上で、一度勝ったとはいえ立ち止まらず進化を続けなければならない、ことを再認識できたとして、きょうの負けを来シーズン以降のさらなる飛躍に活かす覚悟を示した
なお高橋・松友組は、来月17~21日にアラブ首長国連邦(UAE)・ドバイで開催される、SSランキングで各種目上位8人/組のみが招待される「デスティネーションドバイ・SSファイナル」に、女子ダブルス1位として出場する
男子2種目の決勝は、シングルスで韓国のソン・ワンホ選手、ダブルスでインドネシアのヘンドラ・セティアワン/モハンマド・アーサン組がそれぞれ中国選手を破って優勝した。中国ペア同士の対決となった混合ダブルスは第1シードのツァン・ナン/ツァオ・ユンレイ組が勝ち、ツァオ選手は女子ダブルスと合わせて2冠を達成した
決勝の結果
【男子シングルス】 チェン・ロン(中国、世界2位)〈19-21,16-21〉ソン・ワンホ(韓国、世界6位)
【女子シングルス】 タイ・ツーイン(台湾、世界9位)〈21-19,21-11〉奥原希望(世界48位)
【男子ダブルス】 ヘンドラ・セティアワン/モハンマド・アーサン(インドネシア、世界3位)〈21-16,17-21,21-15〉リュウ・シャオロン/チュウ・ツィハン(中国、世界9位)
【女子ダブルス】 高橋礼華・松友美佐紀(世界1位)〈13-21,13-21〉ツァオ・ユンレイ/ティエン・チン(中国、世界3位)
【混合ダブルス】 ツァン・ナン/ツァオ・ユンレイ(中国、世界1位)〈21-14,21-19〉シュー・チェン/マー・ジン(中国、世界2位)