マレーシアオープンSS準々決勝、シングルス4人、ダブルス4組が名を連ねる日本勢の先陣を切って登場した男子シングルス田児賢一選手、2番手の女子ダブルス高橋礼華・松友美佐紀組が苦戦を強いられながらも勝利し、幸先の良いスタートを切った。しかし、残るシングルス3人、ダブルス3組は相次いで敗れ、ベスト4入りの好機を逃した

準決勝進出を決めた高橋・松友組だが、実は予想だにしなかった問題を抱えていた。今大会第2シードで、対戦相手は世界ランク下位の韓国若手ペア。難なくベスト4入りするとみられていたが、高橋選手は、「第1ゲーム、松友がいつもと違うのが分かった」と話した。松友選手自ら、試合直後に BadPaL へ苦笑交じりに明かしたところでは「緊張していた」のだという
1、2回戦ともに格下が相手で比較的容易に勝ち上がり、準々決勝も韓国の若手との対戦で、SSベスト4入りのチャンスが感じられた途端、緊張して本来の動きができなくなった。「普段なら1、2点取られてもそれほど気にしないが、1点を取られるのが怖くなってしまった」と語った。昨年の日本リーグ初戦で経験して以来のことで、結果として、第1ゲームを12-21の大差で落としてしまう。ただ高橋選手が、「第2ゲームに入れば、完全ではないにせよ、松友は調子を取り戻してくると分かっていた」と話した通り、第2ゲーム、1-7と大きくリードされた場面から徐々に松友選手に本来の動きが戻ってくると、その後は積極的に攻撃を仕掛け続け、第2、第3ゲームを取り返して勝ちをつかんだ
高橋選手は準決勝に向けて、「今大会の組み合わせを見て、少なくともベスト4まではいきたいと思っていた。準決勝は、前週の韓国オープンSSプレミアで強豪の中国ペアと対戦した時のような気持ちでプレーをできれば」と意気込みを語った。一方、松友選手は、「(準決勝の相手は)これまでやったことのない相手なので、向かっていけると思う」と、準々決勝の反省を踏まえ、気持ちを入れ直して試合に臨む覚悟を示した

もう一人の勝者、田児選手は、昨年末のSSファイナルズで悔やまれる負けを喫したデンマークのハンス・クリスチャン・ビティングス選手に第1ゲーム序盤からリードを許す。自分のペースになかなか持ち込めないまま、追いかける展開で終盤まで突入。18-20と先にゲームポイントを握られる。しかし、「あきらめたら終わり」と気持ちを切らすことなく積極的なプレーを続け、連続得点で22-20と逆転に成功する。第2ゲームは、勢いにのった田児選手が主導権を握り、着実に点差を広げていき20-14とマッチポイントを迎える。しかしここから、「あと1点ということで硬くなった」と試合後、認めた通り、相手に5連続得点を与えてしまい20-19まで追い上げを許す。ただ最後は、相手のサービスがアウトになり事なきを得た
田児選手は BadPaL の取材に応じ、まず、最後に不用意に追い上げられ、前日のインド選手との試合と同じ接戦を繰り返してしまったことへの反省を口にした。この試合に臨むに当たっては「もちろんリベンジしたい気持ちはあったが、前回対戦時のことはマイナスイメージなので、あまり考えないようにした」と説明。第1ゲーム、なかなかリズムに乗り切れなかった理由については、「羽が軽くて、慣れるまでに時間がかかった」と明かした。その上で、「この試合を勝てたので、次(準決勝)は相手が誰になろうと絶対勝ちにいく」と意気込んだ

女子シングルスでは奥原希望選手が、世界ランク2位、インドのサイナ・ネワル選手に挑んだ。新旧世界ジュニアチャンピオンの対戦となったこの試合、奥原選手が BadPaL に語ったところでは、「球の質がこれまでの対戦相手とは全然違う。動きもすべて読まれていて、どこに打っても待ち構えられている感じで、第1ゲームは何もできなかった」という。試合会場の照明が一部落ちるハプニングがあり、小休止の後に再開された第2ゲームでは、「コートの奥へ奥へ返そうと心掛けたところ、自分のゲームができるようになった」。しかしリードして迎えた終盤のラリーの途中、横方向への動きで左ひざがずれるような違和感を感じ、「痛みよりもむしろ、力が入らなくなってしまった」。ただ「このゲームは勝ちたかった」ので最後までプレーしたが、テーピングを施して入ったファイナルゲームは、ネワル選手が前方に落としたシャトルを取りに行って無理と感じて棄権した。奥原選手は「最後までやりたかったが、無理して続けて症状を悪化させるような後悔はしたくなかった」と笑顔で語り、足を引きづりながら会場を後にした

今大会、注目のペアの1つ、女子ダブルスの前田美順・垣岩命佳組は、2人の持ち味である攻撃的プレーで、シンガポールのエースペア、シンタ・ムリア・サリ/ヤオ・レイ組から第1ゲームを奪う。しかし、ディフェンスからオフェンスへの切り替えをはじめとするコンビネーションプレーでは、ペアを組んで日の浅い2人にまだ難があり、第2ゲーム、中盤以降に点差を広げられて落とす。ファイナルゲームは先行するシンガポールペアについていくも、ローテーションで2人が重なったり、ネット際のチャンスボールをアウトにしてしまうなどミスが出て16-21で力尽きた
前田・垣岩組にこの試合で見つかった課題を聞いたところ、前田選手は「まだ組んだばかりで、ローテーションなどにミスが出るのは仕方がない。それよりも、個々ですることをもっと良くできたのではないか」。垣岩選手が「前衛でチャンスを決め切れなかった。風がある状況下で、勢いのまま打ち込みアウトにしてしまった」と述べた
男子ダブルスでは、早川賢一・遠藤大由組がインドネシアのヘンドラ・セティアワン/モハンマド・アーサン組と対戦した。しかし、集中力を欠いたようなプレーが散見されるなど、点差以上に内容的に満足できなかった敗戦となったようで、遠藤選手は試合後、「ここまで何をやってきたのか、というような最悪な試合だった」と吐き捨てた。早川選手は、「大会に乗り込んできた時から体調が良くなかったが、今朝起きたらさらに悪化していてやめようかとも思った。かぜ薬と痛み止めを飲んで試合に臨んだが、遠藤に余計な不安を与えてしまった」と反省しきりだった
平田典靖・橋本博且組は、前週の韓国オープンを含む国際大会4連勝中と勢いに乗る韓国イ・ヨンデ/コ・ソンヒョン組に挑んだが、第1,2ゲームともに一度もリードを奪えぬままストレート負けを喫した。平田選手は試合後、BadPaL に対し、「相手がどうこうというより、思うようなレシーブができなかった」とコメントした。一方、橋本選手は「イ・ヨンデ選手と(引退した)チョン・ジェソン選手とのペアの方が嫌だった。(今回のペアは)いうほど恐れることはないと感じた」と述べ、再戦への意欲を見せた

残るシングルスの2人、佐々木翔選手と三谷美菜津選手はそれぞれ、復調してきたベテラン、インドネシアのソニー・ドゥイ・クンチョロ選手と韓国のベ・ヨンジュ選手にストレート負け。ベスト4には届かなかった。このうち、体調不良で前週の韓国オープンSSプレミアを欠場し、マレーシアオープンが今年初戦となった佐々木選手は試合後、BadPaL に対し、「今大会で2勝できたことで、試合勘を取り戻すことができた。取り組むべき課題も見えてきた」と述べ、準々決勝敗退にも前を向いた
各種目準々決勝の結果
【男子シングルス】
リー・チョンウェイ(マレーシア、世界1位)〈21-12,21-9〉フ・ユン(香港、世界6位)、ダレン・リュー(マレーシア、世界12位)〈21-19,13-21,17-21〉ヤン・ヨルゲンセン(デンマーク、世界15位)、ソニー・ドゥイ・クンチョロ(インドネシア、世界5位)〈21-15,21-12〉佐々木翔(世界17位)、田児賢一(世界8位)〈22-20,21-19〉ハンス・クリスチャン・ビティングス(デンマーク、世界18位)
【女子シングルス】
サイナ・ネワル(インド、世界2位)〈21-11,14-21,2-0棄権〉奥原希望(世界33位)、ティネ・バウン(デンマーク、世界7位)〈20-22,15-21〉タイ・ツーイン(台湾、世界12位)、三谷美菜津(世界10位)〈15-21,17-21〉ベ・ヨンジュ(韓国、世界15位)、ドゥオン・シュエン(中国、世界104位※予選勝ち上がり)〈8-21,21-18,12-21〉ヤオ・シュエ(中国、世界151位※予選勝ち上がり)
【男子ダブルス】
リム・キムワー/ゴー・ウェイシェム(マレーシア、世界30位)〈21-14,21-16〉イ・サンジョン/カン・ジウク(韓国、世界53位※予選勝ち上がり)、イ・ヨンデ/コ・ソンヒョン(韓国、世界6位)〈21-14,21-7〉平田典靖・橋本博且(世界10位)、ウラジミール・イワノフ/イワン・ソゾノフ(ロシア、世界11位)〈21-17,13-21,20-22〉チャイ・ビアオ/リュウ・シャオロン(中国)、早川賢一・遠藤大由(世界3位)〈18-21,15-21〉ヘンドラ・セティアワン/モハンマド・アーサン(インドネシア、世界66位)
【女子ダブルス】
クリスティナ・ペダーセン/カミラ・リタ・ユール(デンマーク、世界4位)〈10-21,18-21〉ティエン・チン/バオ・イーシン(中国、世界141位)、アシュウィニ・ポンナッパ/プラドニャ・ガドレ(インド、世界118位)〈21-18,13-21,13-21〉ビタ・マリッサ/アプリルサシ・プトリ・レジャルサル・バリエラ(インドネシア、世界171位)、シンタ・ムリア・サリ/ヤオ・レイ(シンガポール、世界13位)〈13-21,21-14,21-16〉前田美順・垣岩令佳(世界171位)、高橋礼華・松友美佐紀(世界6位)〈13-21,21-16,21-14〉コ・アラ/ユ・ヘウォン(韓国、世界61位)
【混合ダブルス】
チャン・ペンスーン/ゴー・リュウイン(マレーシア、世界3位)〈21-13,21-14〉タン・アイククアン/ライ・ペイジン(マレーシア、世界30位)、ロベルト・マティウシアク/ナディエズダ・ジーバ(ポーランド、世界8位)〈21-11,21-12〉ダニー・バワ・クリスナンタ/ユーヤン・バネッサ・ネオ(シンガポール、世界10位)、プラビーン・ジョーダン/ビタ・マリッサ(インドネシア、世界326位)〈21-12,21-19〉ツァン・ナン/タン・ジンフア(中国)、ヨアキム・フィッシャー・ニールセン/クリスティナ・ペダーセン(デンマーク、世界6位)〈22-20,21-12〉アナース・クリスチャンセン/ジュリー・ハウマン(デンマーク、世界27位)
準決勝の組み合わせ
【男子シングルス】
リー・チョンウェイ(マレーシア、世界1位)対ヤン・ヨルゲンセン(デンマーク、世界15位)
ソニー・ドゥイ・クンチョロ(インドネシア、世界5位)対田児賢一(世界8位)
【女子シングルス】
サイナ・ネワル(インド、世界2位)対タイ・ツーイン(台湾、世界12位)
ベ・ヨンジュ(韓国、世界15位)対ヤオ・シュエ(中国、世界151位※予選勝ち上がり)
【男子ダブルス】
イ・ヨンデ/コ・ソンヒョン(韓国、世界6位)対リム・キムワー/ゴー・ウェイシェム(マレーシア、世界30位)
ヘンドラ・セティアワン/モハンマド・アーサン(インドネシア、世界66位)対チャイ・ビアオ/リュウ・シャオロン(中国)
【女子ダブルス】
ティエン・チン/バオ・イーシン(中国、世界141位)対ビタ・マリッサ/アプリルサシ・プトリ・レジャルサル・バリエラ(インドネシア、世界171位)
高橋礼華・松友美佐紀(世界6位)対シンタ・ムリア・サリ/ヤオ・レイ(シンガポール、世界13位)
【混合ダブルス】
チャン・ペンスーン/ゴー・リュウイン(マレーシア、世界3位)対ロベルト・マティウシアク/ナディエズダ・ジーバ(ポーランド、世界8位)
ヨアキム・フィッシャー・ニールセン/クリスティナ・ペダーセン(デンマーク、世界6位)対プラビーン・ジョーダン/ビタ・マリッサ(インドネシア、世界326位)