マレーシアオープンSS2回戦、日本選手は男子シングルスの佐々木翔選手と田児賢一選手、男子ダブルスの平田典靖・橋本博且組と佐藤翔治・川前直樹組、女子ダブルスの藤井瑞希・垣岩令佳組と松尾静香・内藤真実組が勝ち、ベスト8入りを果たした

男子シングルスの田児賢一選手は、これまで3戦して一度も勝ったことのない世界4強の一角、ピーター・ゲード選手(デンマーク)と対戦。第1ゲームから落ち着いて試合を進め19-16とリードするが、ここからゲード選手に5連続得点を許し、逆転でこのゲームを落としてしまう。嫌な流れの中、第2ゲームに入るが、田児選手の優位は崩れず21-11で試合をふり出しに戻すと、ファイナルゲームでも自分のペースを乱すことなく、21-16で完勝した
田児選手は試合後、地元メディアの記者会見に臨み、「第1ゲーム、リードしていて逆転で取られてしまったので大丈夫かな、という思いがあった。それでも第2、第3ゲームと辛抱してプレーできたのがよかった」と試合を振り返った
またオリンピックイヤーの今年の目標を聞かれ、「準優勝した2年前の全英オープンSS(当時)のころより確実に強いと思っている」と強調。「リー・チョンウェイ、リン・ダン、ピーター・ゲードといった世界トップ選手と互角に勝負ができるという気持ちを持てるようにやっていきたい」と答えた
BadPaL が、4 度目の挑戦にしてゲード選手を初めて下した率直な感想を尋ねると、「ピーターに勝ったと言っても、まだ2回戦なので」と冷静に反応。「2回戦でピーターのような上位選手と当たる状況を自分で作ってしまっている」とした上で、「次に勝たなければ同じこと」と指摘した。さらに「自分は目標を設定してしまうと、それに到達した時点で止まってしまうので、今大会も次の1戦、次の1戦に集中していく」と述べた

一方、世界ランク1位のリー・チョンウェイ選手(マレーシア)に初めて挑戦した山田和司選手は、リー選手の攻撃力とスピードに圧倒され第1ゲームを8-21とあっけなく落とす。続く第2ゲームは持ち前のスピードとディフェンスで食らいつき、10連続得点などで12-4と大きくリードする。しかしここから一気に2点差まで詰められると、その後も地力の差を見せつけられ18-21で敗れた
山田選手は試合直後、BadPaL に対し、「スマッシュのタイミングがワンテンポ速くて取れない。その後の動きも速い」と完敗を認めた。その上で、「世界の4強とはこれまで、ピーター・ゲード選手としかやっていなかったので、今後の目標につながるいい経験になった」とさばさばした表情で答えた
男子シングルスはこのほか、佐々木翔選手が、過去2戦して負けなしの格下のパブロ・アビアン選手(スペイン)をストレートで下し、順当に勝ち上がった

男子ダブルスでは、佐藤翔治・川前直樹組(世界10位)が格上のヘンドラ・アプリダ・グナワン/アルベン・ユリアント・チャンドラ組(インドネシア、世界9位)と対戦した。過去の対戦成績は1勝1敗。直近では、昨年4月のオーストラリアオープングランプリ(GP)ゴールドで勝っているが、第1ゲームはインドネシアペアに押し込まれ、瞬く間に得点を重ねられて9-21で落とす。しかし第2ゲームに入ると5-5以降、常に先行する展開で、終盤19-18と1点差まで迫られるも21-18で逃げ切った。ファイナルゲームは中盤までは競り合いとなるが、後半、日本ペアがドライブを中心とした長いラリーを制する機会が増え、徐々に点差を広げていき最後は21-15で勝利した
佐藤・川前組は試合後、BadPaL に対し、「第1ゲームは相手の方が集中できていた。格上ということを意識して、こちらが堅くなっていた面もある」と認めた。ただスタミナには自信があったので、ファイナルまで持ち込めば大丈夫との気持ちがあり、焦りはなかったという。現在、世界ランク10位と五輪出場権確保まであと少しのところにきているが、この点については、「もちろん勝ちにはいっているが、ランキングはあまり重視していない」と述べた
平田典靖・橋本博且組は、初対戦となった昨年3月のドイツオープンGPゴールドで不覚を取ったドイツのマイケル・フックス/オリバー・ロス組が相手だったが、終始試合をコントロールし、21-15,21-15のストレート勝ちで雪辱を果たした
一方、前日、世界4位の韓国ペアを下して勢いに乗ったかに思えた早川賢一・遠藤大由組は、昨年9月のインドネシアオープンGPゴールドで勝っていた格下の中国ペア、シェン・イエ/ホン・ウェイ組(世界18位)にいいところなく敗れ、2回戦で姿を消した

女子シングルスでは、復調の兆しを感じさせる廣瀬栄理子選手が、中国選手の中でも難敵のワン・シン選手に挑んだ。第1ゲームは中盤までゲームを支配したが、後半逆転され、2度のゲームポイントをしのぐも21-23で惜敗した。第2ゲームは勢いに乗ったワン選手が完全に試合の主導権をつかみ、20-16とマッチポイントを握る。しかしここから廣瀬選手が脅威の粘りを発揮。6連続得点を決め、逆転で試合をふりだしに戻す。1対1で迎えたファイナルゲーム、スタートダッシュに成功したワン選手が8-2と大きく先行するが、廣瀬選手は11-11に追い付く。ところがここからワン選手がさらに一段加速し、7連続得点で点差を開くと、廣瀬選手は、再度追撃を試みるも届かず、16-21で敗れた
廣瀬選手は試合直後に BadPaL の取材に応じ、「苦手なタイプの相手だが、自分の思うようなプレーができた面もある」としながらも、「やはり勝ちたかった」と悔しさを隠さなかった。敗因としては、「ファイナルで11-11と追いついた後、ワン選手がスピードを上げてきた時に対応が遅れ、大きく点差を開かれた。あそこでもう少し点差を抑えられていれば」と述べた

女子ダブルスでは、今大会、それぞれ第1シードと第4シードに入っている藤井瑞希・垣岩令佳組と松尾静香・内藤真実組が順当に2回戦を突破。準々決勝に進んだ。ただ藤井・垣岩組は、3年前のこの大会で敗れているシンガポールのシンタ・ムリア・サリ/ヤオ・レイ組に予想外の苦戦を強いられた
第1ゲームは、藤井・垣岩組が競り合いを抜け出し、20-18と先にゲームポイントを握る。ここからいったんは追いつかれるも、22-20で振り切り主導権を握ったかに見えた。ところがエンドが変わった第2ゲームは形勢が一転。シンガポールペアの攻撃に押し込まれる一方的な展開で、9-21と大差で敗れる。ファイナルゲームの行方が懸念されたが、藤井・垣岩組は見事に巻き返し、とりわけ中盤以降は9連続得点を決めるなど本来のプレーを取り戻して21-10と圧勝した
藤井・垣岩組は試合後、大敗を喫した第2ゲームの「異変」について、「風の影響で、相手の球が思ったより走っていて面喰った」と説明した。さらに、第2ゲームからファイナルゲームへ、気持ちの切り替えがうまくできた秘訣を尋ねると、「第2ゲーム途中に点差が大きく開いた時点で、後半はファイナルに備えようと話をして、色々と試してみた」という

一方、この日は、男子シングルスで優勝候補の1人、中国のリン・ダン選手がデンマークのヤン・ヨルゲンセン選手にフルゲーム(21-14,15-21,15-21)の末に敗れる波乱があった。ヨルゲンセン選手は、リン選手がベストの状態だったとは思わないとしながらも、「何と表現していいか分からないほど素晴らしいこと」と素直に喜びを示した。勝因として、昨年10月に発覚した心臓の不調で、幾つかの国際大会への出場を回避せざるを得なかったことで、連戦しているリン選手に比べ体力、スタミナの消耗が少なく、「何より勝ちに飢えていた」と述べた。心臓の状態を尋ねられると、「今も鼓動しているから大丈夫だと思う」とジョークを飛ばす一方、現在も定期的に検査を受けていることを明かした
日本選手の2回戦の対戦カードは以下の通り
【男子シングルス】 佐々木翔(世界6位)〈21-14,21-17〉パブロ・アビアン(スペイン、世界22位)、ピーター・ゲード(デンマーク、世界4位)〈21-19,11-21,16-21〉田児賢一(世界12位)、リー・チョンウェイ(マレーシア、世界1位)〈21-8,21-18〉山田和司(世界28位)
【女子シングルス】 ワン・シン(中国、世界2位)〈23-21,20-22,21-16〉廣瀬栄理子(世界19位)
【男子ダブルス】 平田典靖・橋本博且(世界8位)〈21-15,21-15〉マイケル・フックス/オリバー・ロス(ドイツ、世界25位)、ヘンドラ・アプリダ・グナワン/アルベン・ユリアント・チャンドラ(インドネシア、世界9位)〈21-9,18-21,15-21〉佐藤翔治・川前直樹(世界10位)、早川賢一・遠藤大由(世界12位)〈8-21,16-21〉シェン・イエ/ホン・ウェイ(中国、世界16位)
【女子ダブルス】 藤井瑞希・垣岩令佳(世界4位)〈22-20,9-21,21-10〉シンタ・ムリア・サリ/ヤオ・レイ(シンガポール、世界11位)、松尾静香・内藤真実(世界6位)〈21-18,21-14〉パン・パン/チェン・シュウ(中国、世界30位)
準々決勝の組み合わせは以下の通り
【男子シングルス】 ◆リー・チョンウェイ(マレーシア、世界1位)対タウフィック・ヒダヤット(インドネシア、世界11位)◆チェン・ロン(中国、世界3位)対佐々木翔(世界6位)◆シモン・サントソ(インドネシア、世界8位)対田児賢一(世界12位)◆チェン・ジン(中国、世界5位)対ヤン・ヨルゲンセン(デンマーク、世界16位)
【女子シングルス】 ◆ワン・イーハン(中国、世界1位)対リ・シュエリ(中国、世界8位)◆サイナ・ネワル(インド、世界4位)対ティネ・バウン(デンマーク、世界6位)◆ユリアン・シェンク(ドイツ、世界7位)対ワン・シーシャン(中国、世界3位)◆ワン・シン(中国、世界2位)対ジアン・ヤンシャオ(中国、世界5位)
【男子ダブルス】 ◆佐藤翔治・川前直樹(世界10位)対チョ・グンウ/クォン・イグ(韓国、世界15位)◆グオ・ツェンドン/チャイ・ビアオ(中国、世界5位)対マルキス・キド/ヘンドラ・セティアワン(インドネシア、世界11位)◆平田典靖・橋本博且(世界8位)対キム・ギジョン/キム・サラン(韓国、世界34位)◆ファン・チーミン/リー・シェンム(台湾、世界13位)対シェン・イエ/ホン・ウェイ(中国、世界16位)
【女子ダブルス】 ◆藤井瑞希・垣岩令佳(世界4位)対クリスティナ・ペダーセン/カミラ・リタ・ユール(デンマーク、世界10位)◆ウーン・ケーウェイ/フー・ビビアン・カームン(マレーシア、世界21位)対バオ・イーシン/ツォン・チエンシン組(中国、世界33位)◆松尾静香・内藤真実(世界6位)対チェン・ウェンシン/チエン・ユーチン(台湾、世界7位)◆キム・ミンジュン/ハ・ジュンユン(韓国、世界3位)対ウォン・ペイティ/チン・イエイフイ(マレーシア、世界16位)
【混合ダブルス】 ◆ツァン・ナン/ツァオ・ユンレイ(中国、世界1位)対アレクサンドロ・ニコラエンコ/バレリ・ソロキナ(ロシア、世界15位)◆チャン・ペンスーン/ゴー・リュウイン(マレーシア、世界11位)対ダニー・ベワ・クリスナンタ/ユーヤン・バネッサ・ネオ(シンガポール、世界31位)◆タントウィ・アーマド/リリアナ・ナッチル(インドネシア、世界4位)対マニーポン・ジョンジット/サビトリー・アミタパイ(タイ、世界20位)◆シュー・チェン/マー・ジン(中国、世界2位)対イ・ヨンデ/ハ・ジュンユン(韓国、世界7位)