世界選手権5日目、準々決勝が行われ、混合ダブルスの渡辺勇大・東野有紗をはじめ、日本選手は全種目でメダルを確定させた。一方で、女子ダブルスの米元小春・田中志穂が途中棄権するという予期せぬ事態も発生した
渡辺・東野は、先のジャパンオープンでストレート負けを喫したマレーシアのチャン・ペンスーン/ゴー・リュウインに出だしから一気に5-16まで点差を広げられる。11-16まで巻き返し、その後も逃げるマレーシアペアに追いすがり18-20まで詰めるが、届かず、18-21でオープニングゲームを落としてしまう

しかし、ここから立て直し、続く第2ゲームを21-12の大差で奪い返すと、ファイナルゲームはさらに勢いを増し、一度もリードを譲らぬまま試合終了まで駆け抜けた
ベスト4に入った渡辺・東野はこの時点で、まず、混合ダブルスでは日本史上初となるメダルを確保した。しかし2人の国際大会に臨む姿勢はジュニア時代から変わらず、あくまで目指すのは優勝である点を強調している。これまで幾度も準決勝・決勝進出、さらには優勝を阻む壁として立ちはだかってきた第1シード、中国ツェン・シウェイ/ホワン・ヤチオンを倒し、一歩先に進めるか、準決勝が注目される
一方、7度目の世界選手権で初のメダル獲得を目指したマレーシアペアは試合後、前回南京大会に続いてメダルまであと一歩のところにいながら好機を逃した、と悔しさを隠さなかった。今大会、初戦から3試合続けてのファイナルゲーム突入で、最後は「ガス欠」になったことを認めた上で、これが恐らく2人にとって最後の世界選手権、と述べた
混合ダブルスでは結局、第1~4シードの上位4ペアが準決勝に進み、表彰台を占めることになった

第1~8シードが勢ぞろいした女子ダブルス準々決勝には、予期せぬドラマが待っていた。日本の4ペアの中で最初に登場した世界ランクで日本3番手につける福島由紀・廣田彩花は、苦しみながらも、韓国1番手のシン・スンチャン/イ・ソヒをファイナルゲーム21-18で振り切り、まず4強の一角に入った

続いて日本2番手の高橋礼華・松友美佐紀が、中国2番手リ・インフェイ/ドゥ・ユエと対戦。実力伯仲で1ゲームずつ取り合い、ファイナルゲームに突入。途中、リ・インフェイが左ふくらはぎあたりにけいれんを起こし、試合が中断。その後もストレッチを繰り返すなど進行が遅れる。それでもプレーは続け、中盤以降は文字通り一進一退の展開に。2時間に迫り消耗戦の様相を呈する中、高橋・松友は、最初の相手マッチポイント(20-19)を凌いだ後、合わせて3つのマッチポイントを握ったが、ミスも出て活かせず、23-25で力尽きた

最後は、所属も同じ1番手永原和可那・松本麻佑と4番手米元小春・田中志穂の同門対決。第1ゲームは互いに一歩も譲らす20-20まで進み、ここから2連続得点を決めた永原・松本が先取する。続く第2ゲーム、米元・田中が3-2とリードした場面で、後方に上がったシャトルをジャンプして打ち返した米元が着地後、倒れ込み動けなくなる。左足首辺りを負傷(※)し、そのまま棄権となってしまった
(※追記:翌24日になって日本バドミントン協会が、左アキレス腱断裂と発表)
なお、世界バドミントン連盟(BWF)の規定では、同国選手との試合を棄権した場合、棄権した選手/ペアにはその大会のポイントが加算されないことになっている
女子ダブルスではほかに、2017年世界選手権・グラスゴー大会優勝の中国1番手チェン・チンチェン/ジア・イーファンが、インドネシアのグレイシア・ポリー/アプリヤニ・ラハユにストレート負けを喫し、メダルを逃した
準決勝では、前回優勝の永原・松本がインドネシアペア、準優勝の福島・廣田が高橋・松友を破った中国ペアと対戦し、決勝進出を狙う
男子ダブルスで実現したもうひとつの日本ペア対決は、7月のインドネシアオープン(SUPER1000)に続いて、小林優吾・保木卓朗が園田啓悟・嘉村健士に連勝した。所属の同じ先輩と後輩だが、17年銅メダル、18年銀メダルに次ぐ日本男子ダブルス陣史上初の金メダルを目指すエースの園田・嘉村、今より一段上にいくため初のメダル獲得に意欲を燃やす若い小林・保木。ともに負けられない一戦は、1ゲームずつ取り合い迎えたファイナルゲーム、小林・保木が終始リードを保って振り切った
小林・保木は、落ちついて自分たちのプレーができたことを勝因に挙げ、前日、中国2番手ペアから挙げた勝利で自信が増したと説明した。準決勝では、中国1番手のリュウ・ユーチェン/リ・ジュンフェイに挑む。準決勝もうひと試合は唯一の同国対決、インドネシアの2,3番手がぶつかる
男女シングルスは、桃田賢斗と奥原希望がそろって順当に勝ち上がった。桃田は前日、西本拳太を破ったリー・ヅージアを寄せ付けず快勝。引退したリー・チョンウェイの後継者となることが期待されるマレーシアの21歳は試合後、「桃田はあらゆるショットがトップクオリティで、格が違った」と完敗を認めた。その上で、ベスト8という結果に満足せず、今大会の経験を活かし、さらに強くなるためより一層精進する、と誓った
桃田の準決勝の相手は、アンソニー・シニスカ・ギンティン、ジョナタン・クリスティと世界ランク上位につけるインドネシアの1,2番手を連破し、インドの男子シングルス陣で1983年のプラカシュ・パドゥコーン以来36年ぶりのメダル獲得を決めたB.サイ・プラニース
男子シングルス準決勝もうひと試合は、中国チェン・ロンを破り全種目を通じ今大会、ヨーロッパ勢で唯一メダルを確保したデンマークのアナース・アントンセンと、第2シードの台湾チョウ・ティエンチェンに競り勝ったタイのカンタポン・ワンチャロンが激突する。この2人、7月のインドネシアオープン(SUPER1000)でも揃って準決勝に進むなど、トップを狙える力を着実に蓄えてきている
奥原は準々決勝第1ゲーム、中国2番手ホー・ビンジャオをスピードとショットの精度を武器に圧倒。第2ゲームは中盤、競り合う場面もあったが、崩れることはなく、20-14と早々にマッチポイントを握る。その後、4点を献上したものの、あっさりストレート勝ちした
決勝進出をかけて奥原が対峙するのは、ともに世界タイトルホルダーであるジュニア時代からのライバル、タイのラッチャノク・インタノン。インタノンは、奥原との対戦について聞かれ、「奥原は長いラリーで自分を疲れさせようとしてくる。試合のプランは(最後まで)戦い続けること」と笑顔で答えた
女子シングルスの別の山では、中国チェン・ユーフェイとインドのプサルラ・ヴェンカタ・シンドゥが勝ち上がった。とりわけシンドゥは、第2シードの台湾タイ・ツーインに第1ゲームを先取されながらの逆転勝ちで、3大会連続となるメダルを確定させた。対照的にタイ・ツーインは、またもメダルなし(※)に終わった(※11年棄権、13年ベスト8、14年ベスト8、15年ベスト8、17年台湾開催のユニバーシアード優先で出場辞退、18年ベスト8)
一方、準々決勝敗退となりメダルには手が届かなかったものの、今大会躍進したシンガポールの20歳ヨー・ジアミン。この日は、スピード、ショットの質ともに低調で、対戦相手のラッチャノクに「コントロールされた」と語り、敗戦を真摯に受け入れた。今大会全体を振り返ると、貴重な経験で、改善すべき点が多いことも認識できたとし、「ここからが新たなスタート」と自らへの期待を示した。その一方で、自分に対する周囲の期待が大きくなることは理解しながら、今後も「自分にできること」に集中していく意思を明確にした
5日目(準々決勝)の結果
【男子シングルス】
①桃田賢斗(第1シード)<21-12,21-8>(マレーシア、第14シード)リー・ヅージア
②(インドネシア、第4シード)<22-24,14-21>B.サイ・プラニース(インド、第16シード)ジョナタン・クリスティ
③>(中国、第3シード)<20-22,10-21>アナース・アントンセン(デンマーク、第5シード)チェン・ロン
④>(台湾、第2シード)<16-21,21-11,14-21>カンタポン・ワンチャロン(タイ、第12シード)チョウ・ティエンチェン
【女子シングルス】
①ラッチャノク・インタノン(タイ、第7シード)<21-17,21-11>(シンガポール)ヨー・ジアミン
②奥原希望(第3シード)<21-7,21-18>(中国、第6シード)ホー・ビンジャオ
③チェン・ユーフェイ(中国、第4シード)<21-17,18-21,21-15>(デンマーク、第12シード)ミア・ブリクフェルト
④(台湾、第2シード)<21-12,21-23,19-21>プサルラ・ヴェンカタ・シンドゥ(インド、第5シード)タイ・ツーイン
【男子ダブルス】
①ムハンマド・リアン・アルディアント/ファジャル・アルフィアン(インドネシア、第7シード)<21-13,21-17>(韓国)チェ・ソルギュ/ソ・スンジェ
②ヘンドラ・セティアワン/モハンマド・アーサン(インドネシア、第4シード)<21-17,21-19>(台湾、第13シード)リャオ・ミンチュン/スー・チンヘン
③>(第3シード)<16-21,21-18,15-21>小林優吾・保木卓朗(第12シード)園田啓悟・嘉村健士
④リュウ・ユーチェン/リ・ジュンフェイ(中国、第2シード)<21-13,21-12>(中国、第16シード)ツァン・ナン/リュウ・チェン
【女子ダブルス】
①永原和可那・松本麻佑(第1シード)<22-20,3-3棄権>(第8シード)米元小春・田中志穂
②(中国、第4シード)<23-25,21-23>グレイシア・ポリー/アプリヤニ・ラハユ(インドネシア、第5シード)チェン・チンチェン/ジア・イーファン
③(第3シード)<25-23,18-21,23-25>リ・インフェイ/ドゥ・ユエ(中国、第7シード)高橋礼華・松友美佐紀
④福島由紀・廣田彩花(第2シード)<21-11,11-21,21-18>(韓国、第6シード)シン・スンチャン/イ・ソヒ
【混合ダブルス】
①ツェン・シウェイ/ホワン・ヤチオン(中国、第1シード)<23-21,21-10>(韓国、第7シード)ソ・スンジェ/チェ・ユジョン
②渡辺勇大・東野有紗(第3シード)<18-21,21-12,21-11>(マレーシア、第5シード)チャン・ペンスーン/ゴー・リュウイン
③デチャポン・プアバラヌクロー/サプシリー・テラッタナチャイ(タイ、第4シード)<21-11,21-7>(オランダ)ロビン・タベリング/セリーナ・ピーク
④ワン・イーリュ/ホワン・ドンピン(中国、第2シード)<21-19,21-18>(香港、第9シード)タン・チュンマン/ツェ・インシュー
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6日目(準決勝)の対戦カード
【男子シングルス】
①桃田賢斗(第1シード)対B.サイ・プラニース(インド、第16シード)
②アナース・アントンセン(デンマーク、第5シード)対カンタポン・ワンチャロン(タイ、第12シード)
【女子シングルス】
①奥原希望(第3シード)対ラッチャノク・インタノン(タイ、第7シード)
②チェン・ユーフェイ(中国、第4シード)対プサルラ・ヴェンカタ・シンドゥ(インド、第5シード)
【男子ダブルス】
①ヘンドラ・セティアワン/モハンマド・アーサン(インドネシア、第4シード)対ムハンマド・リアン・アルディアント/ファジャル・アルフィアン(インドネシア、第7シード)
②リュウ・ユーチェン/リ・ジュンフェイ(中国、第2シード)対小林優吾・保木卓朗(第12シード)
【女子ダブルス】
①永原和可那・松本麻佑(第1シード)対グレイシア・ポリー/アプリヤニ・ラハユ(インドネシア、第5シード)
②福島由紀・廣田彩花(第2シード)対リ・インフェイ/ドゥ・ユエ(中国、第7シード)
【混合ダブルス】
①ツェン・シウェイ/ホワン・ヤチオン(中国、第1シード)対渡辺勇大・東野有紗(第3シード)
②ワン・イーリュ/ホワン・ドンピン(中国、第2シード)対デチャポン・プアバラヌクロー/サプシリー・テラッタナチャイ(タイ、第4シード)