
アジア競技大会・バドミントン競技は19~22日、男女別団体戦が実施され、日本女子は1970年以来12大会ぶりの優勝を飾り、アジア団体選手権、ユーバー杯に続く今シーズン3つ目の団体戦タイトルを手にした
メンバー全員が、個人戦で国際大会優勝経験を持つ今の日本女子は、個々が「勝てる力」を有しているため、1種目落としても次でカバーできる補完体制がしっかり確立されている
今大会第1シードの日本は、2回戦(準々決勝)から登場。シングルスに2枚看板を据えるインドと対戦し、一番手の山口茜が、世界選手権銀メダルのプサルラ・ヴェンカタ・シンドゥに敗れるも、続く3種目を奪い返して勝利。ここでは、3番目に登場の奥原希望がコモンウェルスゲームズ覇者のサイナ・ネワルをフルゲームの末に振り切り、チームの勝利を決定づけた
準決勝は開催国インドネシアが相手。自国開催の今大会、準々決勝で韓国ソン・ジヒョンを倒すなど勢いのある世界ジュニアチャンピオン、グレゴリア・マリスカ・トゥンジュンに山口は敗れた。しかし、安定感を増し頼れる第1ダブルスに成長した福島由紀・廣田彩花組が、のせたらインドネシア勢全体に好影響を与えるムードメーカー、グレイシア・ポリー/アプリヤニ・ラハユ組を止め、流れを引き戻してチームの決勝進出をお膳立てした
決勝は大方の予想通り、第1シード日本と第2シード中国の頂上対決となる
中国女子はアジア大会の団体戦において、◆1974年テヘラン◆78年バンコク◆82年ニューデリー◆86年ソウル◆90年北京◆94年広島◆98年バンコク◆2002年釜山◆06年ドーハ◆10年広州◆14年仁川――と、11大会連続でメダルを獲得。とりわけ、唯一銅メダルに終わった広島大会の後、5連覇中で、今大会は6連覇がかかる
対する日本女子がアジア大会団体戦でこれまでに獲得したメダルは、金2つ(1966、70年)、銀3つ(82、86、2006年)、銅6つ(74、78、90、94,98、2014年)。中国の成績(金10、銅1)には遠く及ばない
決勝はまず、準決勝でタイのラッチャノク・インタノンを倒した中国のエース、チェン・ユーフェイが山口をストレートで降す。次に、新旧世界ランク1位の対戦となった第2種目、福島・廣田組がチェン・チンチェン/ジア・イーファン組を寄せ付けず、取り返す
1ー1で迎えた第3種目、日本に比べるとコマ不足が否めない中国は、ホー・ビンジャオで必勝を期すが、奥原が押し戻した。とりわけ1ゲームずつ取り合い迎えたファイナルゲーム、序盤から一気に引き離して16-2まで点差を広げる。その後、17-14まで詰められるが、気を静めるように間を取り、18点目を奪って反撃の勢いを断ち切ると、最後は21-15で勝利。チームに貴重な2勝目をもたらした

日本王手の状況でコートに立ったのは、リオデジャネイロ五輪金メダリストで現世界2位の高橋礼華・松友美佐紀組。このところ手の内を知り合う日本ペアに敗れることは増えたが、外国ペア相手には負けない強さを示す2人が、23歳ホワン・ドンピンと22歳ツェン・ユーが組む世界98位に、経験と力の差を見せつけ快勝。最終種目を残して、日本の優勝を決めた
高橋・松友組は5月のユーバー杯を前に、世界ランクの変動でそれまで指定席だった第1ダブルスから第2ダブルスに回ることになったのを受け、「楽しみ。チームの勝敗を決する場面で出てみたい」と話していた。ユーバー杯決勝では前の3種目(第1シングルス、第1ダブルス、第2シングルス)で決まり、出番が回ってこなかったが、今回、アジア大会決勝でその大役をきっちり果たした
今の日本女子チーム、一部メンバーに入れ替わりはあるが、2月のアジア団体選手権<https://badpal.net/2018/02/12/japanese-women-take-aim-at-uber-cup-as-asian-champ/>、5月のユーバー杯<https://badpal.net/2018/05/27/day-7-in-bangkok-top-seed-japan-comes-out-on-top-in-uber-cup/>、そして8月のアジア大会と、今シーズン団体戦のタイトル3つを総なめにした



一方、敗れた中国は、アジア大会団体戦6連覇を逃し、初の銀メダルとなった、ただ、連続メダル獲得大会数は12に伸ばした
銅メダルは、5月に自国開催のユーバー杯で初めて準優勝を遂げたタイと、開催国インドネシアが手にした
また、前回準優勝で、1994年広島大会での優勝実績もある韓国は今回、準々決勝でインドネシアに敗れ、78年バンコク大会以来40年ぶりのメダルなしに終わった
◆女子団体1回戦(19日)の結果
①インドネシア3-0香港
②モルジブ3-2ネパール
③台湾3-0パキスタン
◆女子団体準々決勝(20日)の結果
①日本(第1シード)3-1インド
【第1シングルス】(世界2位)<18-21,19-21>プサルラ・ヴェンカタ・シンドゥ(3位)山口茜
【第1ダブルス】福島由紀・廣田彩花(1位)<21-15,21-6>ネラクリヒ・シキ・レディ/アラシ・サラ・スニル
【第2シングルス】奥原希望(8位)<21-11,23-25,21-16>(10位)サイナ・ネワル
【第2ダブルス】高橋礼華・松友美佐紀(2位)<21-13,21-12>アシュウィニ・ポンナッパ/プサルラ・ヴェンカタ・シンドゥ
【第3シングルス】大堀彩(17位)<打ち切り>サイ・ウッテジサ・ラオ・チュッカ(105位)
②韓国(第4シード)1-3インドネシア
③タイ(第3シード)3-0台湾
④中国(第2シード)3-0モルジブ
◆女子団体準決勝(21日)の結果
①日本(第1シード)3-1インドネシア
【第1シングルス】(2位)<16-21,21-9,18-21>グレゴリア・マリスカ・トゥンジュン(22位)山口茜
【第1ダブルス】福島由紀・廣田彩花(1位)<21-13,21-12>(4位)グレイシア・ポリー/アプリヤニ・ラハユ
【第2シングルス】奥原希望(8位)<19-21,21-4,21-10>(40位)フィトリアニ
【第2ダブルス】高橋礼華・松友美佐紀(2位)<21-13,21-10>(10位)リズキ・アメリア・プラディプタ/デラ・デスティアラ・ハリス
【第3シングルス】大堀彩(17位)<打ち切り>ルセリ・ハルタワン(82位)
②中国(第2シード)3-0(第3シード)タイ
【第1シングルス】チェン・ユーフェイ(5位)<21-14,17-21,21-17>(4位)ラッチャノク・インタノン
【第1ダブルス】チェン・チンチェン/ジア・イーファン(3位)<22-20,16-21,21-14>(7位)ラウィンダ・プラジョンジャイ/ジョンコンパン・キッティハラクンラウィンダ・プラジョンジャイ/ジョンコンパン・キッティハラクン
【第2シングルス】ホー・ビンジャオ(7位)<21-17,21-12>(11位)ニチャオン・ジンダポン
【第2ダブルス】ホワン・ドンピン/ツェン・ユー(98位)<打ち切り>サプシリー・テラッタナチャイ/プティッタ・スパジラクン(182位)
【第3シングルス】ガオ・ファンジエ(14位)<打ち切り>ブサナン・ウンバンルンパン(23位)
◆女子団体決勝(22日)の結果
①日本(第1シード)3-1(第2シード)中国
【第1シングルス】(2位)<15-21,12-21>チェン・ユーフェイ(5位)山口茜
【第1ダブルス】福島由紀・廣田彩花(1位)<21-12,21-17>(3位)チェン・チンチェン/ジア・イーファン
【第2シングルス】奥原希望(8位)<21-16,19-21,21-15>(7位)ホー・ビンジャオ
【第2ダブルス】高橋礼華・松友美佐紀(2位)<21-16,21-11>(98位)ホワン・ドンピン/ツェン・ユー
【第3シングルス】大堀彩(17位)<打ち切り>ガオ・ファンジエ(14位)
アジア大会女子団体の最終結果
【金メダル】日本(1970年以来12大会ぶり3度目※前回銅メダル)
【銀メダル】中国(※前回金メダル)
【銅メダル】タイ、インドネシア

日本男子は今大会、中国、インドネシアに続くチームランク3位で第3シードに入った。組み合わせ抽選の結果、1回戦から試合となり、まず、体調不良を理由に欠場したリー・チョンウェイを欠くマレーシアを3ー0と完封した。園田啓悟・嘉村健史組が相手チームのポイントゲッター、ゴー・ウェイシェム/タン・ウィーキョン組をきっちり抑えたのが大きかった
2回戦(準々決勝)では、4年前、仁川大会で同じく準々決勝でぶつかり、2-3で敗れメダルを奪われた韓国と対戦。唯一の前回優勝メンバーであるエース、ソン・ワンホに桃田賢斗がストレート勝ちし流れを作ると、日本は続く2種目も難なく取り、まずはメダル確保。前回とは逆に、1982年から9大会連続でメダルを獲得(金3、銀3、銅3)してきた韓国を、40年ぶりに表彰台の外に追いやった
準決勝の相手は、第2シードのインドネシア。先陣を切った桃田は、7月に同じ会場で開催されたインドネシアオープンで破ったアンソニー・シニスカ・ギンティンにファイナルゲーム8-15まで追い込まれる。ただ、この圧倒的劣性の状況下に置かれても気持ちを切らさず、逆転でチームに勝利を持ち帰る
しかし、先の世界選手権で園田・嘉村組に攻略された世界1位、マルクス・フェルナルディ・ギデオン/ケビン・サンジャヤ・スカムルジョ組が、「前回のミスから学んだ」と語った通り、ホームで強さを見せ1-1のタイに戻す。これで勢いづいたジョナタン・クリスティとムハンマド・リアン・アルディアント/ファジャル・アルフィアン組を、西本拳太、金子祐樹・井上拓斗組は止められず、日本の敗戦(=銅メダル)が決まった
決勝は、第1シードの中国と第2シードのインドネシアの頂上対決となり、最初の種目で日本の第3シングルス、常山幹太と同世代の2人、シー・ユーチとアンソニー・シニスカ・ギンティンが激突した。入場券が売り切れた団体戦最終日夜の部の会場を埋めた観客の後押しもあり、世界世界12位のギンティンが同2位のシー・ユーチを攻め立て第1ゲームを先取。続いて第2ゲームでは20-18とマッチポイントを握るが、ここは全英覇者シー・ユーチが踏ん張る
ファイナルゲームもギンティンが16-12とリードするが、追いつかれ、そして18-18からスマッシュを決め次の1点を取ったところで、我慢していた足の痛みに耐えかねしゃがみ込み、次のラリーの途中、コート上に倒れ込んでしまう。足のケアのための小休止の後、プレーを再開するが既に満足に動けず、シー・ユーチのミスで20-19とマッチポイントをつかむも、もはや1点を取りにいける状態ではなく、再び並ばれ追い抜かれた(20-21)ところでギブアップ。シー・ユーチが薄氷の勝利をつかみ、中国に最初の1ポイントをもたらす
次のポイントは、世界1位のギデオン/スカムルジョ組が、世界チャンピオンのリュウ・ユーチェン/リ・ジュンフェイ組にストレート勝ちし、インドネシアが奪い返すが、反撃もここまで。続く2種目は、中国がともに元世界チャンピオンのチェン・ロン、ツァン・ナン/リュウ・チェン組で取って3-1。前回、韓国に奪われたタイトルを2大会ぶりに取り戻した

なお、第3シングルスに控えていたリン・ダンは結局、一度も出番なし。シー・ユーチ、チェン・ロンに次ぐ中国3番手のため個人戦にはエントリーできず、これで自身5度目の出場となったアジア大会を終えた
4年に1度のアジア大会でリン・ダンは、◆2002年:団体戦銅メダル◆06年:団体戦金メダル、個人戦銀メダル◆10年:個人戦金メダル、団体戦金メダル◆14年:個人戦金メダル、団体戦銀メダル◆18年:団体戦金メダル――という結果(金5、銀2、銅1)を残した
◆男子団体1回戦(19日)の結果
①日本(第3シード)3-0マレーシア
【第1シングルス】桃田賢斗(世界4位)<21-13,21-14>(27位)ダレン・リュー
【第1ダブルス】園田啓悟・嘉村健士(3位)<21-18,21-18>(11位)ゴー・ウェイシェム/タン・ウィーキョン
【第2シングルス】西本拳太(10位)<21-18,21-17>(53位)リー・ヅージア
【第2ダブルス】金子祐樹・井上拓斗(7位)<打ち切り>テオ・イーイ/オン・ユーシン(25位)
【第3シングルス】常山幹太(19位)<打ち切り>リョン・ジュンハオ(69位)
②韓国3-1タイ
③インド3-0モルジブ
④ネパール3-1パキスタン
⑤香港棄権モンゴル
◆男子団体準々決勝(20日)の結果
①中国(第1シード)3-0香港
②台湾(第4シード)3-0ネパール
③日本(第3シード)3-0韓国
【第1シングルス】桃田賢斗(世界4位)<21-16,21-14>(5位)ソン・ワンホ
【第1ダブルス】園田啓悟・嘉村健士(3位)<21-13,21-13>(53位)カン・ミンヒョク/キム・ウォンホ
【第2シングルス】西本拳太(10位)<21-19,21-9>(78位)ホ・クワンヒ
【第2ダブルス】金子祐樹・井上拓斗(7位)<打ち切り>チェ・ソルギュ/ソ・スンジェ(189位)
【第3シングルス】常山幹太(19位)<打ち切り>ハ・ヨンウン(191位)
④インドネシア(第2シード)3-1インド
◆男子団体準決勝(21日)の結果
①中国(第1シード)3-1(第4シード)台湾
【第1シングルス】(世界2位)<13-21,19-21>チョウ・ティエンチェン(6位)シー・ユーチ
【第1ダブルス】リュウ・ユーチェン/リ・ジュンフェイ(2位)<19-21,21-12,21-9>(10位)チェン・フンリン/ワン・チリン
【第2シングルス】チェン・ロン(7位)<18-21,21-13,21-17>(18位)ワン・ツーウェイ
【第2ダブルス】ツァン・ナン/リュウ・チェン(4位)<21-13,21-17>(15位)リー・ジェフエイ/リー・ヤン
【第3シングルス】リン・ダン(14位)<打ち切り>スー・ジェンハオ(35位)
②インドネシア(第2シード)3-1(第3シード)日本
【第1シングルス】>(12位)<21-14,14-21,16-21>桃田賢斗(4位)アンソニー・シニスカ・ギンティン
【第1ダブルス】マルクス・フェルナルディ・ギデオン/ケビン・サンジャヤ・スカムルジョ(1位)<21-18,21-12>(3位)園田啓悟・嘉村健士
【第2シングルス】ジョナタン・クリスティ(15位)<21-15,21-19>(10位)西本拳太
【第2ダブルス】ムハンマド・リアン・アルディアント/ファジャル・アルフィアン(9位)<21-10,21-10>(7位)金子祐樹・井上拓斗
【第3シングルス】イーサン・マウラナ・ムストファ(39位)<打ち切り>常山幹太(19位)
◆男子団体決勝(22日)の結果
①中国(第1シード)2-1インドネシア(第2シード)
【第1シングルス】シー・ユーチ(世界2位)<14-21,23-21,21-20棄権>(12位)アンソニー・シニスカ・ギンティン
【第1ダブルス】(2位)<17-21,18-21>マルクス・フェルナルディ・ギデオン/ケビン・サンジャヤ・スカムルジョ(1位)リュウ・ユーチェン/リ・ジュンフェイ
【第2シングルス】チェン・ロン(7位)<19-21,21-16,21-18>(15位)ジョナタン・クリスティ
【第2ダブルス】ツァン・ナン/リュウ・チェン(4位)<21-18,17-21,21-18>(9位)ムハンマド・リアン・アルディアント/ファジャル・アルフィアン
【第3シングルス】リン・ダン(14位)<打ち切り>イーサン・マウラナ・ムストファ(39位)
アジア大会男子団体の最終結果
【金メダル】中国(2大会ぶり6度目※前回銀メダル)
【銀メダル】インドネシア
【銅メダル】日本(1970年以来12大会ぶり3度目の銅メダル)、台湾(※前回銅メダル)
