As sport to watch, sport to play : exclusive interview with head of Yonex

ダイハツ工業を新たにメーンスポンサーに加えた今年のジャパンオープン。この日本で開催される最上位の国際大会を冠スポンサーとして30余年、支えてきたヨネックスの林田草樹社長に BadPaL が単独取材を実施。「見るスポーツ」、「やるスポーツ」の2つの側面から、バドミントン事業のこれからを聞いた

The president of Yonex, Kusaki HAYASHIDA standing beside All Japan championships Women’s singles trophy which was earned by Sayaka SATO, one of the key players of Team Yonex

業界のリーディングブランド、ヨネックスが1982年にスタートさせた、世界トップ選手が集まる上位国際大会「ヨネックスオープンジャパン」。36回目を迎えた今年、初めて大会名の「上座」をダイハツ工業に譲り、「ダイハツ・ヨネックスジャパンオープン」として新たなスタートを切った

大手企業のスポンサー参入が、日本バドミントン界全体にとってプラスに働くことは自明の理。ただ、昨年まで単独で冠スポンサーの重責を担ってきたヨネックスにとってはどうか。大会閉幕の翌日、東京・文京区にあるヨネックス本社で BadPaL の取材に応じた林田社長は、どちらの名前を先に置くか議論があったことを明かしつつ、「用具メーカーが先頭に立って上位大会の冠スポンサーを務めるのは、他競技を見てもほとんど例がなく、本来の姿ではない。色々な企業の支援を受けて一層盛り上げていければ」と忌憚なく答え、あらためてダイハツ工業の参入を歓迎する姿勢を見せた

仮にこの先、支援が拡大して、大会名からヨネックスの名前が外れることになったとしたら、と水を向けても、やぶさかではないとする立場を確認。ヨネックスを出しすぎないでも、用具サプライヤーとして変わらぬサポートができると説明した

Indonesia Masters 2018 sponsored by Daihatsu ~photo courtesy of PBSI

ダイハツ工業は、日本以外でもバドミントン支援の方針を打ち出している。来年1月に開催されるスーパーシリーズ(SS)と同等の格付け(レベル4)となるインドネシアマスターズとマレーシアマスターズ。この2大会のスポンサーにつくことで、10月3日にインドネシアバドミントン協会(PBSI)、同5日にマレーシアバドミントン協会(BAM)とそれぞれ正式合意。ダイハツ工業執行役員の成瀬修氏が現地に出向いて、調印式を行った

このうちインドネシアは、「ダイハツインドネシアマスターズ2018」の大会名で1月23~28日、大規模な改修工事が行われたジャカルタの「イストラセナヤン」を会場とする予定。8月に控える4年に1度の一大イベント、アジア競技大会のテストイベントの意味合いも持つ

Malaysia Masters 2018 presented by Daihatsu ~photo courtesy of A18 SPORTS

マレーシアの大会は、ダイハツ工業の現地合弁小型車メーカー、プロドゥアを前面に出した「プロドゥアマレーシアマスターズ2018」の名で1月16~21日、2018年最初のSS相当大会としてクアラルンプールで開催される

林田社長はまた、今年のジャパンオープンを振り返り、伝統ある全英オープンをはじめ、上位国際大会で広く採用されている、暗闇の中、コートを浮かび上がらせる視覚効果を狙った照明技術の対象コートを昨年より拡大するなど、「見る側」を楽しませる演出の成果を説明。国内で開催されるバドミントン最高の舞台として、「大会をこなすためだけではなく、プレーする選手のほか、見に来てくれた人に感動、あこがれを与え、すごいなと思わせる大会でなければ」と繰り返し強調した

伝統の全英、支え活かす

ヨネックスは、SSと同等以上の格付けを与えられた上位大会では、この先、自国開催のジャパンオープンのほか、全英オープンにメーンスポンサーとしてかかわっていく(※デンマークオープンのスポンサーは今年から競合メーカー、ビクターに移る)。1899年に始まった全英オープンはいわずもがな、この2つはともに長い歴史を持つ大会で、ヨネックスには冠スポンサーとして30年以上支え続けてきた実績と誇りがある

ただ、ダイハツ工業を新たなスポンサーに迎えたジャパンオープンとは異なり、全英オープンは、運営母体であるバドミントンイングランドが政府支援を打ち切られ、クラウドファンディングなどを実施しているが、財務状況は決して良好といえない。来年から向こう4年間、大会の格付けが引き上げられたのに伴い賞金総額が60万ドル(約6,768万円)から100万ドル(約1億1,280万円)へ上積みされ、冠スポンサーであるヨネックスの負担が増大するのは明らか。それでも林田社長は、「リスクは認めるが、それによって行動しないのはダメ」と言い切る。1977年まで世界選手権の位置付けにあった権威ある全英オープンを世界に向けたショーケースとして、ヨネックスの製品とサービスの質の高さをさらにアピールし、市場増大につなげていく決意だ

同様に、今年5月の男女混合国・地域別対抗戦スディルマン杯から、世界バドミントン連盟(BWF)主要大会(※世界選手権、トマス・ユーバー杯、スディルマン杯、世界ジュニア選手権、世界シニア選手権)の用具オフィシャルサプライヤーに「復帰」したことでも、「トップの大会に貢献できる。他社との差別化。製品に対する安心感やスタッフの質で、違いを見せられる」と、専業メーカーとしての自負をはっきり示している

成長のインド、価値観育てる

ヨネックスがバドミントン事業でこの先、最も成長を期待する市場の1つにインドがある。林田社長はインドでの自社ブランドの認知度について、「ハイエンドの商品はどこよりも高い位置付けにある」との認識を示す。一方、低価格帯の商品に関しては、これから、と認める。「仮想戦略は立てているが、広く名を知られていないローカルブランドまで含めた競合他社の動きを正確につかむことは難しい。それでも、市場が拡大しており成長余力は大きい」と話す

Yonex’s India plant has been started operation since last April ~photo courtesy of Yonex Japan

ヨネックスは、生産本部を置く新潟、東京工場の位置づけにある埼玉のほか、アジアで台湾に製造拠点を持ち、ウェア、シューズ等は海外でOEM生産を行っている。これに加えて2016年、インド・バンガロールに現地法人ヨネックスインディアプライベートリミテッドを立ち上げ、17年4月よりラケットの現地生産を開始した。将来的に、ここから周辺国に輸出する可能性があることは否定しないが、当面はインド国内市場向けに注力するという

林田社長は、「プサルラ・ヴェンカタ・シンドゥ選手やスリカンス・キダンビ選手の活躍で高まるインドのバドミントン人気に応えるべく、インド国内のマスマーケットに向けた製品をつくる工場である」と説明する。廉価品が主体となることで、ヨネックスのブランドイメージに影響はないか尋ねると、「低価格帯の商品を求める現地顧客のニーズに応えることは大事」とした上で、「安かろう悪かろうではなく、そのカテゴリーで競合他社を秀でる品質を提供する」点を強調。安値重視の価格競争だけにまい進する考えはなく、『メードバイヨネックス』の名の下、「耐久性などに優れ、安心して買える商品として価値観を浸透させていく」ことへ尽力する方針を明確にした

少子化日本、ポスト東京に向けて

Japanese shuttlers’ recent achievements at Olympic games, World championships and Japan Open help to promote sport in Japan

ジャパンオープンにおいて日本勢は、2013年(山口茜)、14年(高橋礼華・松友美佐紀)、15年(奥原希望)に続き、17年(高橋・松友)も優勝者を輩出する活躍。国内のバドミントン普及に好影響を及ぼしている

2016年リオデジャネイロ五輪、17年世界選手権・グラスゴー大会での金メダル獲得と、マスメディアが追う世界最高峰の舞台での大躍進もあり、他競技と比較しても、3年後、自国開催の東京五輪までは、メダル候補競技の1つであるバドミントンに注目が集まることは容易に想像がつく。ただ、東京五輪後はどうか。五輪の結果いかんにかかわらず、人気が持続するかは不透明だ

この点を踏まえ、林田社長に、バドミントン事業分野の売上動向の予想を聞いてみると、少子化の影響もあり、日本国内より、中国やインドを中心とした海外の方が伸びしろが大きい、売り上げの比率で海外の割合が増えていくのは間違いないと答えた

一方で、目指すのは現状維持か、と問うた国内市場についても、少子化という現実を前に右肩上がりというわけにはいかないとしながらも、「現状維持」を上回る成長に強い自信を示す。その根拠のひとつとして、日本バドミントン協会への競技者登録数がこのところ、毎年約1万人ずつ増えていることを挙げた(日本バドミントン協会の集計では、平成25年度25万3,000人、26年度26万人、27年度27万5,000人、28年度28万6,000人)。その上で、東京の次、9月13日の国際オリンピック委員会(IOC)総会で正式決定した「2024年パリ五輪」に向け、ジュニアを対象にした勢いを止めない競技の促進・強化活動を続けることが大事と説いた

また、生涯スポーツの観点から、現在、競技を行っている人が「やめない環境、楽しめる環境づくり」の必要性に触れ、少子化の影響もあり、今後さらに推進されるであろう「学校開放」などの機会をどう有効活用していくか、日本バドミントン協会が中心になって探っていくべきとした

別の根拠として、東京五輪と同時期に開催される東京パラリンピックに、バドミントンが初めて正式採用される点を指摘。現在、パラバドミントンの競技者(登録者)数は数百人程度に過ぎないが、競技を目にすることで、障害者の中に勇気を持ってスポーツに乗り出す人が出てきて、競技人口の飛躍的増加も期待できるとの見方を示し、パラバドミントン向けの製品の開発につながる可能性を示唆した

S/J開催を地域おこしに

Badminton tournament/league should be considered as one of  exciting events not only for players but for spectators as well

他競技にひけをとらない優れたコンテンツ(選手)を有しながら、国内の「見るスポーツ」としては、2016年以降、進化を遂げてきているバスケットボールの「Bリーグ」に大きく遅れをとっている感が否めないバドミントンの「S/Jリーグ」。林田社長に、この点に関するコメントを求めると、いちメーカーとしていろいろ言える立場にないとしながらも、「変化の途中であり、ネガティブにはとらえていない。最近では考え方が変化してきて、発展性はある」と前向きに評価する

その上で、ひとつの考えとして、ジャパンオープン同様、「大会をこなすためではなく、開催地ごとに盛り上げていく」大会づくりを提唱する。「昨シーズンの熊本大会では様々な演出で大会が盛り上がった。知恵を絞って、町おこし、地域おこしとも関連付け、ジャパンオープンのミニチュア版を各地に」と、期待を込めて語っている

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