タイマスターズ(SUPER300)2回戦、女子シングルスで日本A代表の3人が揃って勝ち、ベスト8に名を連ねた。とりわけ高橋沙也加は、1回戦に続いて、前回対戦時に敗れていた中国の若手とフルゲームを戦い、振り切った
日本3番手の高橋は、前日の中国7番手ツァン・イーマン(23)に次いで、この日も年下の中国5番手ツァイ・ヤンヤン(20)と対戦。前回の対戦時、2018年香港オープンで敗れていて、難しい戦いになることも予想された
試合は1回戦同様、2回戦でもオープニングゲームを落とす嫌な立ち上がりに。しかし第2ゲームを終盤、7連続得点を決め奪い返すと、ファイナルゲームは中盤10-14とリードを許しながらも逆転勝ち。2日連続で、中国の若手相手に前回敗戦の借りをきっちり返してみせた
高橋沙は試合直後、BadPaL の取材に応じ、「前回負けていた相手で、力が入った」と、出だしのつまづきを認めた。さらに「3週目で疲労もある。第3ゲームまでいって当然」と話した。ただ、「相手より体力的には上。焦らずいけば逆転できる。最後は相手の隙をついていけた」と、ファイナルゲーム前半リードされていても、冷静に相手を見れていたことを明かした
かつて、ワン・イーハン、ワン・シン、リ・シュエリといった当時の中国のエース級から金星を挙げた高橋に、今では立場が逆転し中国の若手に金星を狙われるようになったのでは、と水を向けると、「昨年中国オープンでベスト4に入るなどしたことで、中国選手にマークされているのを感じる」と答えた。その上で、「チェン・ユーフェイ、ホー・ビンジャオを除く中国選手には追われる立場。その状況を踏まえながら、逆にチャレンジしていけるように」と語った
準々決勝に向けては、「あすからは向かっていく立場」と強調し、ケガから復帰後のカロリナ・マリンの強さを真摯に認め、「今日の勝ちは忘れて次へ、全てをかけていいというぐらいの気持ちで」と意気込んだ
日本4番手、大堀彩の相手は、デンマークのリネ・ケアースフェルト。実は過去2度対戦し、一度も勝ったことがない難敵だ
第1ゲームは、先にゲームポイント(19-20)を握られながら逆転で先取する。これで一気に流れに乗るかと思われた。しかし続く第2ゲームは一転、いきなり連続得点で0-9と離され、追い上げを開始したのもつかの間、後半さらに7連続得点を決められ、9-21の大差であっさり落とす
どうなることかと思われたファイナルゲームだったが、大堀が何とか気持ちを立て直して前半を11-9とリード。後半も着実に点差を広げて21-13。これまで勝てなかったデンマークの2番手から初白星を挙げることに成功した
大堀は試合直後、BadPaL に対し、第1ゲーム序盤から「動きは良かった」と話した。しかし、突然失速した第2ゲームについては、「なんでそうなってしまったのか、分からない」といい、「まただ」という不安な気持ちを抱いたことを率直に吐露。途中10点の差がついた時点で、ファイナルゲーム勝負に切り替えた、と説明した。結果的には、これによりエネルギーを温存でき、最後は快勝。事なきを得たが、釈然としない様子を隠さず、「今日中に答えを見つけ消化してから、あすの準々決勝に臨みたい」と言い残し、取材エリアを後にした
日本1番手、今大会第1シードの山口茜は、開催国期待の18歳ピッタヤポーン・チャイワンと初顔合わせ。第1ゲームは21-19と点差が詰まったが、全体で見れば、危なげない勝利で、順当にベスト8に残った
試合を終えたばかりの山口に BadPaL が話を聞くと、「身体の動きの部分は良くなってきている」としながら、「それが(試合中の)プレーに反映できればいいが、まだ連動できていない」と指摘。自信がなくなってしまい、1つのミスを気にしすぎると、自らが認識するメンタル面の課題を挙げた
ここで山口が口にした「自信がなくなってしまった」のは何に対してか、あらためて尋ねてみると、返ってきたのは、「勝負事なので調子が良くても負けることはある。(故に)負ければ悔しいが、自信を失ったのは勝ち負けの部分ではなく、納得(いくプレーが)できるか」との答え。ただ、「自分が納得いかなくても、期待に応える必要もある。そこはバランスをとって」と付け加えた
一方、男子シングルスは、日本3番手の西本拳太が、前日、奈良岡功大を退けた2番手の常山幹太とのA代表同士の対決に勝ち、1人、準々決勝へ駒を進めた
もうひとりのA代表、渡邉航貴は、インドネシア3番手のシェサル・ヒレン・ルスタビトにストレート負けで、ワールドツアー最初のアジア3連戦を終えた
渡邉に試合後、BadPaL が敗因を尋ねると、「前日にビデオで見たときは速いだけと思っていたが、実際に試合してみるとタイミングも違う。動きを止められてしまう、これまでやったことがないタイプ」と明かした。この先、A代表として世界のトップレベル相手に戦っていくため、3連戦を通じ自ら強化が必要と感じる部分をひとつ挙げてもらうと、「アタック力よりも、やはり足腰。フットワーク」と躊躇なく答えた
男子ダブルスでも、勝ち上がりはA代表のみとなった
古賀輝・齋藤太一は、昨年11月に世界ジュニア選手権を制した、ともに18歳のインドネシアペアの挑戦を受けるも、しっかり跳ね除け、準々決勝へと進んだ
古賀・齋藤は、「一昨日の1回戦でシードのデンマークペア(アナース・スカールプ・ラスムセン/キム・アストルプ・ソレンセン)を破って自信がついた」という。さらに、「前週のインドネシアマスターズで、敗れはしたがインドネシア3番手のペア(ムハンマド・リアン・アルディアント/ファジャル・アルフィアン)と対戦していたことで、今回、相手を過大評価せずに試合に入れた」と述べた
また、今シーズンからA代表入りした2人、「3週連続は初めて。疲れはあるが世界ランクを上げるべく、ひとつひとつ上を狙っていく」考えを示した。まずは、現在の33位から20位台に引き上げるのが当面の目標
小林優吾・保木卓朗は、日本代表以外で今大会、自費参戦してきた竹内義憲・松居圭一郎との同国対決を、ストレート勝ちで切り抜けた
保木は試合後、BadPaL に、「今回はあえて、相手を日本人と考えずに臨んだ」と明かす。理由は、同国対決の場合、「A代表として」などと意識してしまうため、と説明した
一方、故障でシーズン初め出遅れた小林に、焦りはないか尋ねると、「試合をやっていない時は焦りを感じることもあったが、コートに立てばやることは同じ。今できることをやっていくだけ」と答えた。現在の状態は良好で、アタック力は9割方戻っているという
男子ダブルスA代表は、ケガ等で今シーズンここまで、目立った活躍を見せていないが、「ここで結果を残して一歩リード出来れば」(保木)と期待も口にした
女子ダブルスでは、志田千陽・松山奈未が3週連続、2回戦で世界ランク1位のチェン・チンチェン/ジア・イーファン(中国)と顔を合わせた
前2週、マレーシアマスターズとインドネシアマスターズ(ともにSUPER500)では、志田・松山が続けて番狂わせに成功した。しかし3週目のタイでは、第1、第2ゲームともに13点しか取れず、ストレート負けに終わった
志田・松山は試合直後、BadPaL に対し、「得意の形を出させてもらえず、ペースを持っていかれた。相手の変化への対応も遅れた」と敗戦の弁を述べた
A代表として臨んだ最初の3連戦を総括してもらうと、「1週目ベスト4、2週目がベスト8で、最低ラインはクリアできた」(志田)との認識を示した。その一方で、「自分たちの形になれば、世界1位を含むトップにも勝てると自信になったが。それ以外ではまだまだ」(松山)と、気を引き締めるのも忘れなかった
今大会、B代表で唯一、2回戦に進んだ混合ダブルスの山下恭平・篠谷菜留は、1回戦に続いてデンマークのペアと対戦した
同国2番手(世界50位)のニクラス・ノール/サラ・チューセンに第1ゲーム22-22、第2ゲーム21-21まで競り合ったが、いずれも勝ち切れず。ベスト8には届かなかった
この日、シード勢で姿を消したのは、男子シングルス第4シードの常山のほか、第7シードのリー・ヅージア(マレーシア)と第8シードのワン・ツーウェイ(台湾)
また、男子ダブルス第1シードのリー・ヤン/ワン・チリン(台湾)は、第1ゲーム途中で棄権している
日本選手2回戦の結果
【男子シングルス】
(第4シード)<15-21,15-21>西本拳太常山幹太
シェサル・ヒレン・ルスタビト(インドネシア)<21-19,21-15>渡邉航貴
【女子シングルス】
山口茜(第1シード)<21-19,21-10>(タイ)ピッタヤポーン・チャイワン
高橋沙也加(第8シード)<16-21,21-15,21-18>(中国)ツァイ・ヤンヤン
大堀彩<22-20,9-21,21-13>(デンマーク)リネ・ケアースフェルト
【男子ダブルス】
小林優吾・保木卓朗(第7シード)<21-9,21-12>竹内義憲・松居圭一郎
古賀輝・齋藤太一<21-11,21-11>(インドネシア※予選勝ち上がり)ダニエル・マーシン/レオ・ロリー・カルナンド
【女子ダブルス】
チェン・チンチェン/ジア・イーファン(中国、第1シード)<21-13,21-13>志田千陽・松山奈未
【混合ダブルス】
ニクラス・ノール/サラ・チューセン(デンマーク※予選繰り上がり)<24-22,23-21>(※予選勝ち上がり)山下恭平・篠谷菜留
準々決勝の対戦カード
【男子シングルス】
スッパンユ・アビヒンサノン(タイ)対クンラウット・ウィティサン(タイ)
西本拳太対ツァオ・ジュンペン(中国)
ウン・カロン(香港、第3シード)対ホ・クワンヒ(韓国)
シー・ユーチ(中国、第2シード)対シェサル・ヒレン・ルスタビト(インドネシア)
【女子シングルス】
山口茜(第1シード)対グレゴリア・マリスカ・トゥンジュン(インドネシア)
カロリナ・マリン(スペイン、第4シード)対高橋沙也加(第8シード)
アン・セヨン(韓国、第3シード)対チー・シュエフェイ(フランス※予選繰り上がり)
ラッチャノク・インタノン(タイ、第2シード)対大堀彩
【男子ダブルス】
リー・ジェフエイ/ヤン・ポシュアン(台湾)対ユン・ミンノク/チャン・タクチン(香港※予選勝ち上がり)
小林優吾・保木卓朗(第7シード)対テオ・イーイ/オン・ユーシン(マレーシア)
ゴー・ウェイシェム/タン・ウィーキョン(マレーシア、第4シード)対クリス・ラングリッジ/マーカス・エリス(イングランド)
リュウ・チェン/ホワン・カイシアン(中国)対古賀輝・齋藤太一
【女子ダブルス】
チェン・チンチェン/ジア・イーファン(中国、第1シード)対リ・インフェイ/ドゥ・ユエ(中国、第5シード)
キム・ソヨン/コン・ヒヨン(韓国、第3シード)対ツェン・ユー/リ・ウェンメイ(中国、第8シード)
シン・スンチャン/イ・ソヒ(韓国、第4シード)対チャン・イエナ/キム・ヘリン(韓国)
チョン・ギョンウン/ペク・ハナ(韓国)対ビビアン・フー/ヤップ・チェンウェン(マレーシア)
【混合ダブルス】
タン・キアンメン/ライ・ペイジン(マレーシア、第8シード)対ニクラス・ノール/サラ・チューセン(デンマーク※予選繰り上がり)
ハフィズ・ファイザル/グロリア・エマヌエル・ウィジャジャ(インドネシア、第4シード)対アドラン・マウラナ/ミシェル・クリスティン・バンダソ(インドネシア)
ゴー・スーンフアト/シェボン・ジェミー・ライ(マレーシア、第3シード)対ユン・ミンノク/ウン・ツーヤウ(香港※予選勝ち上がり)
マーカス・エリス/ローレン・スミス(イングランド、第6シード)対チェ・ソルギュ/シン・スンチャン(韓国※予選繰り上がり)