マレーシア、インドネシアに続くワールドツアー第3戦、タイマスターズ(SUPER300)が21日、バンコクで開幕した。3週連続参戦となるA代表のほかに、B代表の山下恭平・篠谷菜留と自費参戦の竹内義憲・松居圭一郎が1回戦を突破。今シーズン、白星スタートを切った
A代表以外にとって2020年最初の国際大会。格付けは前2週よりひとつ下の「SUPER300」だが、カロリナ・マリン(スペイン)、シー・ユーチ(中国)といったトップ選手も出場している
日本から派遣されたB代表の中で唯一の混合ダブルスペア、山下・篠谷。予選を突破し本戦へと駒を進めた後、1回戦では、世界ランクでデンマーク最上位(29位)につけるマシアス・クリスチャンセン/アレキサンドラ・ボイエに逆転勝ち。ペアとして初めて臨む「SUPER300」の大会で、本戦初白星を挙げた
山下・篠谷は試合後、BadPaL の取材に応じ、「シャトルが飛ぶコート、飛ばないコートの戦い方が分かっていない。25-24までもつれた第2ゲームを、最後は(相手への)レッドカードで取るなどラッキーな部分もあった。どうなっていたか分からない」(篠谷)。「手応えを感じられたのは、第2ゲーム後半から」(山下)と述べ、ともに勝利を手放しで喜ぶことはなかった
昨年4月大阪インターナショナルチャレンジでの国際大会デビューから、まだ10カ月に満たない2人に今シーズン全体を通じた抱負を聞くと、篠谷は「B+として、上の大会に出させてもらっている。勝敗とは別に、成長していけるよう、内容のない試合をなくしていきたい」と答えた。山下は、「去年は競って負けることが多かった。今年は、我慢して勝ち切れるようにしたい」とコメントした
女子ダブルスのほか、別のパートナーと組み混合ダブルスでも国際大会で優勝を経験している篠谷に「引っぱってもらっている」と話す山下に、この種目で気を付けている点を聞くと、「男子が後ろ、女子が前の形にこだわらず、思いきって前に出る」ことを挙げた
篠谷は、まだ日本で1番手の渡辺勇大・東野有紗に追いついていくには不十分であることを認めつつ、「組み初めは男女のダブルスだったが、徐々にミックスの形になってきた。成長している」と、前へ進む手応えを感じている
男子シングルスでは、B代表筆頭の18歳奈良岡功大が、A代表で世界トップ10に食い込んできた常山幹太に挑んだ。第1ゲームは1点を取り合うほぼ互角の展開で19-20まで詰めるが、あと一歩届かず。続く第2ゲームも落として、敗戦となった
日本2番手として、5番手に順当勝ちした常山だが、BadPaL に対し開口一番、「1回戦で負けてもおかしくない」状態にあることを明かした。年末に日本国内で行われたS/Jリーグでダブルスに出場したことで、「(シングルスとしての)動きが落ちている」という。それでも、プラスの部分もあったとして努めてポジティブにとらえていると強調。ここから、3月の全英オープンに向けて高めていく意向を示した
今シーズン初戦を白星で飾れなかった奈良岡は試合後、格上の常山相手にも「やれる手応えはあったが、相手どうこうではなく、自分がかみ合わなかった」と敗因を語った
一方で、昨年からコーチングを受け始めたブーンサック・ポンサナ氏について、「球の質が違う。日本人相手では受けられないもの。自分の引き出しを増やしてくれる」と、これまでに自ら感じている「効果」を説明した
タイのエースとして2000年シドニー大会から4度の五輪出場実績を持つポンサナ氏は、正式に日本バドミントン協会の承認を受け、今大会、奈良岡に帯同している
男子シングルスでは、A代表の西本拳太と渡邉航貴も順当に初戦を突破した。このうち渡邉は、ジュニア時代から6連敗中だった2016年世界ジュニアチャンピオン、スン・フェイシアン(中国)から初勝利を挙げた
日本4番手につける渡邉は、今シーズンからA代表として練習、試合に参加する中で、先輩である桃田賢斗や西本から、時に「お叱り」を受けながらも、最後まで全力でプレーすることなど、「学びが多い」とあらためて指摘。本戦で1勝を挙げられなかった前2週の「SUPER500」(マレーシアマスターズ、インドネシアマスターズ)でも、敗戦後の練習時などを含め、充実した時間を過ごせていた、と語った
女子シングルスは、遠征3週目に入った山口茜、高橋沙也加、大堀彩のA代表3人が、マレーシアと中国の若手の挑戦を退け、揃って2回戦に進んだ
女子ダブルスも、A代表の志田千陽・松山奈未が3週続けて初戦を突破したのに対し、B代表の星千智・松田蒼は、予選こそ勝ち抜けたが、本戦1回戦で中国2番手リ・インフェイ/ドゥ・ユエにストレート負けし、姿を消した
星は試合後、「ミスの仕方が違う」と淡々と敗戦を振り返った。その上で、昨年3月から国際大会を回り始めた松田とのペアについて、「(昨年で)自分たちの形は見えてきている。ここから世界ランク上位に通用するよう、質を上げていく。この一年が大事」と強調した
男子ダブルスではB代表の2ペア、岡村洋輝・小野寺雅之と金子真大・久保田友之祐が1回戦負け。A代表の小林優吾・保木卓朗と古賀輝・齋藤太一。さらに、自費参戦の竹内義憲・松居圭一郎は勝ち上がった
日本勢以外では、東京五輪出場権獲得に向け、現時点で微妙な立ち位置にいる各国・地域の2、3番手につけるベテランの初戦敗退が相次いだ。この中には、◆インドのキダンビ・スリカンス(男子シングルス2番手)とサイナ・ネワル(女子シングルス2番手)◆中国リン・ダン(男子シングルス3番手)◆韓国のソン・ジヒョン(女子シングルス2番手)とソン・ワンホ(男子シングルス3番手)――が含まれる
このうち昨年準優勝のリン・ダンは、ウン・カロン(香港)にストレート負け(18-21,9-21)。2020年最初のワールドツアー3連戦、いずれも1回戦負けという厳しい船出になった
なお、スリカンス・キダンビとソン・ワンホも3大会連続、サイナ・ネワルとソン・ジヒョンは2大会連続で、初戦敗退に終わっている
日本選手1回戦の結果
【男子シングルス】
常山幹太(第4シード)<21-19,21-10>奈良岡功大
西本拳太<17-21,21-17,21-14>(マレーシア※予選勝ち上がり)チーム・ジュンウェイ
(中国)<21-17,13-21,12-21>渡邉航貴スン・フェイシアン
【女子シングルス】
山口茜(第1シード)<21-12,21-8>(マレーシア※予選勝ち上がり)ゴー・ジンウェイ
高橋沙也加(第8シード)<13-21,21-13,21-6>(中国)ツァン・イーマン
(中国)<16-21,16-21>大堀彩ワン・ジューイ
【男子ダブルス】
小林優吾・保木卓朗(第7シード)<21-10,15-21,23-21>(韓国)ワン・チャン/ナ・ソンスン
(デンマーク、第6シード)<13-21,21-15,16-21>古賀輝・齋藤太一アナース・スカールプ・ラスムセン/キム・アストルプ・ソレンセン
(USA)<19-21,12-21>竹内義憲・松居圭一郎ライヤン・チュウ/フィリップ・チュウ
リャオ・ミンチュン/スー・チンヘン(台湾)<21-17,21-10>岡村洋輝・小野寺雅之
リー・ジェフエイ/ヤン・ポシュアン(台湾)<21-13,21-18>(※予選繰り上がり)金子真大・久保田友之祐
【女子ダブルス】
志田千陽・松山奈未<21-14,21-14>(台湾)ヤン・チントゥン/チャン・チンフイ
リ・インフェイ/ドゥ・ユエ(中国、第5シード)<21-15,21-10>(※予選勝ち上がり)星千智・松田蒼
※高橋礼華・松友美佐紀、櫻本絢子・髙畑祐紀子は出場取りやめ
【混合ダブルス】
(デンマーク)<27-25,24-26,8-21>山下恭平・篠谷菜留(※予選勝ち上がり)マシアス・クリスチャンセン/アレキサンドラ・ボイエ
日本選手2回戦の対戦カード
【男子シングルス】
常山幹太(第4シード)対西本拳太
シェサル・ヒレン・ルスタビト(インドネシア)対渡邉航貴
【女子シングルス】
山口茜(第1シード)対ピッタヤポーン・チャイワン(タイ)
高橋沙也加(第8シード)対ツァイ・ヤンヤン(中国)
大堀彩対リネ・ケアースフェルト(デンマーク)
【男子ダブルス】
小林優吾・保木卓朗(第7シード)対竹内義憲・松居圭一郎
古賀輝・齋藤太一対ダニエル・マーシン/レオ・ロリー・カルナンド(インドネシア※予選勝ち上がり)
【女子ダブルス】
チェン・チンチェン/ジア・イーファン(中国、第1シード)対志田千陽・松山奈未
【混合ダブルス】
ニクラス・ノール/サラ・チューセン(デンマーク※予選繰り上がり)対山下恭平・篠谷菜留(※予選勝ち上がり)