東南アジア4連戦の2大会目、インドネシアオープン(SUPER1000)は3日、ジャカルタのイストラスナヤンで開幕。4日までに1回戦を終え、前週振るわなかった日本男女シングルスの3、4番手が気を吐いた
初戦の注目は、前週マレーシアオープン(SUPER750)でいずれも1回戦負けに終わった佐藤冴香、常山幹太、大堀彩、坂井一将の4人。それぞれ、◆カロリナ・マリン(スペイン)◆ヤン・ヨルゲンセン(デンマーク)◆ツァン・ベイウェン(アメリカ)◆タノンサク・センソンブーンサック(タイ)――という、上位大会優勝経験者を沈めた
女子シングルス3番手の佐藤は、今大会第6シード、リオデジャネイロ五輪金メダルのマリンに挑んだ。「相手のタッチが速く、対応できなかった」と認めたように、第1ゲームを奪われたのに続き、第2ゲームも16-20と4つのマッチポイントを握られる。まさにがけっぷちの状況だったが、粘り強くプレーを続け、ここから起死回生の逆転勝利を収めた
佐藤選手は試合直後、BadPaL に対し、第2ゲームの逆転場面について、「追い詰められても1点1点最後まで、の気持ちで戦っていた」と振り返った。その上で、「昨年のインドネシアオープン(当時のスーパーシリーズプレミア)優勝から1年、(ベスト8より上に)勝てなかった。今回、過去に負い結果(優勝1回、準優勝1回)を残せているインドネシアオープンでマリンに勝てたのを機に、来年スタートする五輪レースに向けてここから切り替えていきたい」と述べ、明るい表情を見せた
2回戦以降に向けての抱負を聞くと、「勝っても負けても、課題がみつけられるように」と答えた
男子シングルス4番手の常山は、予選のないこの大会、リザーブからの繰り上がりでコートに立つ機会を得て、5月のトマス杯準決勝デンマーク戦、チームを救う値千金の白星を挙げた相手、元世界2位のヨルゲンセンと再び顔を合わせた
第1ゲームを落とすが、第2ゲームは自分のペースに持ち込み、序盤からリードを保ったまま奪い返す。ファイナルゲームに入ると、やり難さからかヨルゲンセンの気持ちが切れ、常山は一方的な展開で押し切り、トマス杯敗北のリベンジを狙った2014年インドネシアオープン優勝者を返り討ちにしてみせた
常山選手に試合後、BadPaL がトマス杯で勝っていたことで自信があったかと問うと、「トマス杯はトマス杯、今回は今回の気持ちで臨んだ。ただ、イメージ的にはトマス杯の時と同じく、前後に動かし疲れた所で決めるというものだった」と説明した
前週マレーシアオープン初戦で香港ウン・カロンに敗れた後、2週目のインドネシアオープンを迎えるに当たっては、「桃田がリー・チョンウェイと戦ったマレーシアの決勝を見て、自分もああいう試合がしたいと思い、強い気持ちでこの大会に入った」という。そしてこの先も、持ち味である「相手の嫌がるようなプレー」で挑んでいく意向を示した
女子シングルス4番手の大堀は、過去3戦して一度も勝ったことがない、2月のインドオープン(SUPER500)を制したツァン・ベイウェンと対戦。第1ゲームを先取するも、第2ゲームは競り合いの中、21-20とマッチポイントを握りながら連続失点で落としてしまう。これまでならそのまま崩れておかしくない流れだったが、ファイナルゲームはしっかり立て直し、ベイウェンから初白星を挙げて2回戦に進んだ
大堀選手は昨年まで、「グランプリ(GP)ゴールドでは勝てた相手でも、スーパーシリーズで対戦すると勝てない」とこぼすことがあった。しかし今回は、「大会のグレードを気にせず臨んでいる」と BadPaL に語った
プレーに図太さが増した印象だが、と水を向けると、「このレベルまでくると、簡単には決まらないし、すぐに勝つことはできない。ラリーをがまんして続けて、いい球がくるのを待つしかない」と指摘した。ツァン・ベイウェンには直近のUSオープン(SUPER300)準決勝で負けていて、勝ちたい気持ちはあったと認めながらも、相手どうこうではなく「自分自身との戦い」と強調。声援が大きいインドネシア特有の会場の雰囲気が及ぼす影響も、「ここでは当たり前」として問題視せず、あくまで「自分との戦い」と繰り返した
男子シングルス3番手の坂井は、2016年デンマークオープン(当時のSSプレミア)優勝のタノンサクと初顔合わせ。接戦となったオープニングゲームに競り勝つと、続く第2ゲームは付け入る隙を与えず、前半からリードを保って振り切った
坂井選手は試合後、BadPaL に対し、今回と同じ会場で1月に行われたインドネシアマスターズ(SUPER500)で準優勝した後、ケガで続くドイツオープン(SUPER300)と全英オープン(SUPER100)の出場を取りやめ。そこから、◆アジア選手権1回戦負け◆マレーシアオープン1回戦負け――と,国際大会(個人戦)で1つも勝てなくなった、と話した。さらに「トマス杯でもチームに迷惑をかけた」とし、「出し切れずもやもやしていた。長いトンネルに入りこんでしまったよう」と今大会に臨む前の心情を明かした。そうした状況を踏まえ、この日、自身にとって「第2のホーム」であるインドネシアでようやく1つ勝てたことで、「光が見えた」と強調した
前週振るわず、今週奮起して勝ちをつかんだこれらシングルス4選手とは対照的に、前週マレーシアで頂点に立った男子ダブルスの園田啓悟・嘉村健士組は、インドネシアのムハンマド・リアン・アルディアント/ファジャル・アルフィアン組とフルゲームを戦い敗れ、初戦で姿を消した
園田選手は試合後、BadPaL の取材に応じ、「チャンスに決められなかった」と敗因を語った。また嘉村選手は、「(優勝した)マレーシアでは園田が当たっていた。これが実力だと思う」と悔しさをにじませながら述べ、優勝した前週から一転、初戦敗退に終わった厳しい現実を、何とか受け止めようとしていた
一方、前週、決勝まで進みながら優勝を逃した男子シングルスのエース、桃田賢斗は第1ゲーム、「マレーシアの疲れがあって動けなかった」としながらも取り、第2ゲームはネット前のショットが冴え、2週続けての対戦となったインドのスリカンス・キダンビを再び破り、無事、2週連続で白星発進を遂げた
桃田選手に試合後、BadPaL が話を聞くと、マレーシアオープンの決勝で敗れ、「ショックな部分はあった」というが、優勝したリー・チョンウェイに地元のヒーローというものを感じ、「皆に応援されるああいう選手になりたい、というモチベーションを抱いた」と、ポジティブな受け止めもできたことを明かした
桃田に次ぐ日本2番手の西本拳太は、デンマークのアナース・アントンセンに僅差で敗れ、韓国ソン・ワンホに屈したマレーシアオープンに次いで、2週連続1回戦負けに終わった
西本選手は試合後、BadPaL に対し、「うまくいかない。マレーシアからプレーに迷いがある」と苦しい心情を吐露。次週のタイオープンに向けては、「(この窮状を)少しでも打破できるように」と懸命に前を向いた
女子シングルスで佐藤、大堀以外に初戦を突破したのが、1、2番手の山口茜と奥原希望。2人は2回戦、直接対決が控える
このうち山口選手は BadPaL の取材に応じ、「調子はいい。自分のコートじゃないところで盛り上がると気になり、タイミングがずれる部分がある」と、この会場特有の大声援が及ぼす影響を含め、初戦を終えた感想を語った
2回戦の同国対決について聞くと、「特別意識しているつもりはないが、考えている部分はあると自分でも認識している」と自らの言葉で返した。奥原選手に対しては、「全日本実業団で対戦して、やはり難しいと感じた。相性がよくない相手といった感じ。ただ、日本人に限らず、そういう相手との対戦も越えていかないと、と思っている」と述べた
一方、この種目5番目の日本選手、川上紗恵奈は、第1シードの台湾タイ・ツーインにストレート負け。第8シードの中国ホー・ビンジャオに屈したマレーシアに次いで、世界ランク1ケタの強豪相手に2週続けて初戦敗退となった
川上選手は 、「過去2度の対戦は、いずれも30分程度で簡単に負けていた。3度目の今回は少しでも長く試合をしたいとコートに入った」という。しかし、「苦労して点を取った後、相手にエースを決められるのでなく、こちらのミスで点を失っていた。もったいない」と反省の弁を述べた
また、4月にケガをしてから試合をしていない期間が続いたこともあり、「イメージが先走りして、コートが広く感じる」という現状下、「A代表のほかの選手に目を向けられる状況にない」とした後、次週のタイオープン(SUPER500)、その後、代表合宿を経て臨む秋田マスターズ(SUPER100)と試合が続く中、「自分に向き合っていきたい」と語った
女子ダブルスは、前週マレーシアオープンで優勝した今大会第5シードの高橋礼華・松友美佐紀組が、1日に(マレーシアオープンの)決勝を戦った後、「初日(3日)から試合で、気持ちの準備ができていない部分があった」と認めながらも、初戦突破を果たした。そのほか、第2シードの福島由紀・廣田彩花組、第4シードの米元小春・田中志穂組もそろって勝ち、順当に2回戦へ進んだ
唯一、同国対決となった永原和可那・松本麻佑組と福万尚子・與猶くるみ組の試合は、互いに一歩も譲らぬ1時間越えの大接戦となったが、ファイナルゲームを25-23で制した永原・松本組に軍配が挙がった
混合ダブルスでは、出場3ペアのうち、保木卓朗・米元小春組が初戦で消えた。試合後2人に話を聞くと、8月に今大会と同じ会場で行われるアジア大会・バドミントン競技への出場が内定しており、「当面はそこに向かってがんばる」との答え。ただ、2人で組んで行う混合ダブルスの練習量は増えておらず、実戦を通じて経験を積んでいる段階という
混合ダブルスのコーチ、ジェレミー・ガン氏は BadPaL に対し、「保木、米元の2人は男女ダブルスの動きはできるが、混合ではどうすればいいかまだ分かっていない。アジア大会も実戦を積む機会としてとらえている」と説明した

日本勢以外に目を転じると、男子シングルスで中国のチェン・ロンとリン・ダンが、それぞれブリス・レベルデス(フランス)、プラノイ・ハシーナ・スニルクマール(インド)にフルゲームの末敗れ、大会初日に姿を消した
また、デンマーク男女ダブルスのエース、マシアス・ボー/カールステン・モゲンセン組とカミラ・リタ・ユール/クリスティナ・ペダーセン組はともにプレーに精彩を欠き、早々に大会を終えている
日本選手1回戦(3~4日)の結果
【男子シングルス】
キダンビ・スリカンス(インド、第4シード)<21-12,14-21,15-21>桃田賢斗
西本拳太<14-21,23-25>アナース・アントンセン(デンマーク)
坂井一将<21-17,21-13>タノンサク・センソンブーンサック(タイ)
ヤン・ヨルゲンセン(デンマーク)<21-12,17-21,6-21>常山幹太(※リザーブ繰り上がり)
【女子シングルス】
山口茜(第2シード)<21-15,21-19>ニチャオン・ジンダポン(タイ)
奥原希望<21-11,21-11>チアン・インリ(台湾)
カロリナ・マリン(スペイン、第6シード)<21-11,20-22,18-21>佐藤冴香
ツァン・ベイウェン(アメリカ、第3シード)<15-21,23-21,11-21>大堀彩
タイ・ツーイン(台湾、第1シード)<21-11,23-21>川上紗恵奈
【男子ダブルス】
園田啓悟・嘉村健士(第6シード)<18-21,21-14,18-21>ムハンマド・リアン・アルディアント/ファジャル・アルフィアン(インドネシア)
金子祐樹・井上拓斗(第7シード)<21-18,18-21,21-14>ヤン・ポハン/ルー・チンヤオ(台湾)
リュウ・ユーチェン/リ・ジュンフェイ(中国、第4シード)<21-18,21-16>小林優吾・保木卓朗
シラグ・シェッティ/サトウィクサイラジ・ランキレディ(インド)<8-21,15-21>遠藤大由・渡辺勇大
【女子ダブルス】
福島由紀・廣田彩花(第2シード)<21-16,21-18>リズキ・アメリア・プラディプタ/デラ・デスティアラ・ハリス
米元小春・田中志穂(第4シード)<21-10,22-24,21-15>パタイマス・ムエンウォン/チャヤニト・チャラドチャラム(タイ)
高橋礼華・松友美佐紀(第5シード)<21-15,21-6>ジャウザ・ファディラ・スギアルト/ヴィルニ・プトリ(インドネシア※リザーブ繰り上がり)
永原和可那・松本麻佑<26-24,19-21,25-23>福万尚子・與猶くるみ
【混合ダブルス】
渡辺勇大・東野有紗<21-15,21-18>ルー・チンヤオ/フー・リンファン(台湾)
小林優吾・松友美佐紀<21-18,17-21,21-8>ヤントニ・エディ・サプトラ/マルシェイラ・ギスチャ・イスラミ(インドネシア)
ニクラス・ノール/サラ・チューセン(デンマーク)<21-19,21-19>保木卓朗・米元小春
日本選手2回戦(5日)の対戦カード
【男子シングルス】
桃田賢斗対アンソニー・シニスカ・ギンティン(インドネシア)
シー・ユーチ(中国、第3シード)対坂井一将
ブリス・レベルデス(フランス)対常山幹太(※リザーブ繰り上がり)
【女子シングルス】
山口茜(第2シード)対奥原希望
佐藤冴香対カースティ・ギルモア(スコットランド)
プサルラ・ヴェンカタ・シンドゥ(インド、第3シード)対大堀彩
【男子ダブルス】
金子祐樹・井上拓斗(第7シード)対キッティサク・ナムダッシュ/ティン・イスリヤネト(タイ)
リャオ・ミンチュン/スー・チンヘン(台湾)対遠藤大由・渡辺勇大
【女子ダブルス】
福島由紀・廣田彩花(第2シード)対ビビアン・フー/ヤップ・チェンウェン(マレーシア)
米元小春・田中志穂(第4シード)対ホワン・ドンピン/リ・ウェンメイ(中国)
高橋礼華・松友美佐紀(第5シード)対シッティ・ファディア・シルバ・ラマダンティ/アガサ・イマヌエラ(インドネシア)
ラウィンダ・プラジョンジャイ/ジョンコンパン・キッティハラクン(タイ)対永原和可那・松本麻佑
【混合ダブルス】
クリス・アドコック/ガブリエル・アドコック(イングランド、第8シード)対渡辺勇大・東野有紗
タントウィ・アーマド/リリアナ・ナッチル(インドネシア、第1シード)対小林優吾・松友美佐紀