マレーシアオープン(SUPER750)準決勝、男子シングルスで桃田賢斗が、世界ランク1ケタのキダンビ・スリカンス(インド)を破り、4月のアジア選手権に続いて決勝に進んだ。この結果、次の世界ランキングで、シード権獲得の対象となる8位に浮上することが確定した
桃田は、2016年全英オープン以来の対戦となったインドのエースについて、攻撃力(スマッシュ)が強いのに加え、「実際に試合をしてみて、前への詰めが以前より速く、とまどった」と話した。それでもこの日は、第1、第2ゲーム通じて主導権を譲らぬままストレート勝ち。世界7位を相手にしても揺るがぬ強さを証明した
桃田選手は試合後、BadPaL に対し、アジア選手権で破ったリー・チョンウェイと彼のホームで再戦することを期待する声が高まる中、「決勝の相手はまだ分からない」と慎重に答え、インドネシアの実力者トミー・スギアルトが勝ち上がってくる可能性を排除しなかった。その一方で、「世界選手権も視野に入る中、決勝まで進めたのは自信になる。8シードも見えてくる」と、当面の目標達成に近づいた喜びを語った
桃田の世界ランクは現在11位(6月28日更新)。今大会準優勝に終わった場合でも、次週7月5日付のランキングは3つ上げて8位になり、シード権を得られる
男子ダブルスでは、ノーシードの遠藤大由・渡辺勇大組が奮起した。4月のアジア選手権で優勝。5月にはトマス杯決勝で日本の優勝を最終的に阻止した第4シードの中国リュウ・ユーチェン/リ・ジュンフェイ組を相手に約80分、息詰まる熱戦を繰り広げた末に勝利。2人で組むペアとして、国際大会で初の決勝進出を果たした
普段は、成長過程にある自分たちのプレーに厳しい目を向ける遠藤選手だが、この日は BadPaL の取材に応じ、「今年に入ってベストに近いプレーができた」と好評価を下した。ただ直後に、浮かれてはダメ、とくぎを刺すのを忘れなかった
試合には、「相手が絶対強い。失敗して学ぼうというスタンスで最初から入った」といい、「やったことはいつもと変わらないが、勝ちたいではなく勝負しようというメンタルが強く保てていた」ことを勝因に挙げた。技術的には、サーブ周りとレシーブがカギだったかと問うと、「レシーブを余裕を持ってできたことで、相手のペースを落とせた」と答えた
最後に遠藤選手に、2016年全英オープン(当時のパートナーは早川賢一)以来となる旧スーパーシリーズ(SS)プレミア同等の大会の決勝にどう臨むか尋ねると、「楽しみたい」と笑顔をみせた
続いて、決勝進出をかけ同じく中国ペアと戦った園田啓悟・嘉村健士組。「自分たちの試合をすれば負けない相手」と試合後、淡々と語った通り、「落ち着いて無理なくプレーする」ことで、過去2戦2勝のホー・ジティン(20)/タン・チアン(19)組をストレートで退けた
この中国ペアは、2016年アジアジュニア選手権の銀メダリスト。またホー・ジティンは15年世界ジュニア選手権で、現在、混合ダブルスで活躍するツェン・シウェイと組んで、金メダルを獲得している有望株だ
最終日に控える遠藤・渡辺組との決勝については、「全日本実業団の再戦をこういう舞台でできるのはすごい幸せ」と述べ、「自分たちの試合をやりとげること」に注力する姿勢を明確にした
女子ダブルスでは、第5シードの高橋礼華・松友美佐紀組が第8シード、インドネシア2番手のリズキ・アメリア・プラディプタ/デラ・デスティアラ・ハリス組への失点を1ケタに抑えて快勝。この日、先に勝利した第1シードの中国チェン・チンチェン/ジア・イーファン組が待つ決勝へ、勝ち上がった
高橋・松友組は BadPaL に対し、点差は開いたものの、「デラ・デスティアラ・ハリスを中心に、前回対戦した全英オープンの時よりガツガツきて、うまさもある。点差ほどの力の差はない」と相手を評した。その上で、「今回は点の取り方が良かった」と試合を振り返った
昨年8月の世界選手権で敗れて以来となる中国のエースペアとの対戦に向けては、「自分たちらしいプレーをできれば、結果はついてくる」と述べ、準決勝の快勝もあり自信をのぞかせた
この日、日本勢で唯一敗れたのが混合ダブルスの渡辺勇大・東野有紗組。世界1位の中国ワン・イーリュ/ホワン・ドンピン組からコンビネーションを活かしたプレーで得点する場面はあったものの、総じて力の差を見せつけられる形で敗戦。初優勝した3月の全英オープンに次ぐ決勝進出はならなかった
渡辺・東野組は試合後、BadPaL に対し、「相手の方が上だった」と率直に認めた。それでも、「ほとんどのペアは自分たちよりパワー、スピード、コントロールが上。その中で頭を使って勝っていかなくてはならない。初対戦の今回は完敗。ただここで世界1位と対戦できて光栄。負けても、経験をはじめ自分たちにはプラスしかない」と前向きな言葉を口にした
混合ダブルスで上を目指して戦っていく中で、海外のトップペアと打ち合う機会を増やすなど、今後加味したい練習などはあるか、聞くと、「ジェレミー(・ガン氏)がコーチがついてから練習環境も変わった」と述べ、現状への満足感を示した。その上で、「試合でしか感じられないものがある」と強調し、実戦経験を積み重ねていきたい意向を確認した。なお東野選手は、機会があれば、リオデジャネイロ五輪金メダル、世界選手権4度制覇のリリアナ・ナッチル(インドネシア)に学びたい希望を示した
準決勝(30日)の結果
【男子シングルス】
リー・チョンウェイ(マレーシア、第7シード)<21-18,21-15>トミー・スギアルト(インドネシア)
キダンビ・スリカンス(インド、第4シード)<13-21,13-21>桃田賢斗
【女子シングルス】
タイ・ツーイン(台湾、第1シード)<21-15,19-21,21-11>プサルラ・ヴェンカタ・シンドゥ(インド、第3シード)
ラッチャノク・インタノン(タイ、第4シード)<17-21,17-21>ホー・ビンジャオ(中国、第8シード)
【男子ダブルス】
園田啓悟・嘉村健士(第6シード)<21-14,21-19>ホー・ジティン/タン・チアン(中国)
リュウ・ユーチェン/リ・ジュンフェイ(中国、第4シード)<22-24,21-19,17-21>遠藤大由・渡辺勇大
【女子ダブルス】
チェン・チンチェン/ジア・イーファン(中国、第1シード)<21-10,21-15>コン・ヒヨン/キム・ヘリン(韓国)
高橋礼華・松友美佐紀(第5シード)<21-9,21-9>リズキ・アメリア・プラディプタ/デラ・デスティアラ・ハリス(インドネシア、第8シード)
【混合ダブルス】
ツェン・シウェイ/ホワン・ヤチオン(中国、第4シード)<17-21,21-18,21-19>クリス・アドコック/ガブリエル・アドコック(イングランド)
ワン・イーリュ/ホワン・ドンピン(中国、第2シード)<21-15,21-13>渡辺勇大・東野有紗
決勝(1日)の対戦カード
【男子シングルス】リー・チョンウェイ(マレーシア、第7シード)対桃田賢斗
【女子シングルス】タイ・ツーイン(台湾、第1シード)対ホー・ビンジャオ(中国、第8シード)
【男子ダブルス】園田啓悟・嘉村健士(第6シード)対遠藤大由・渡辺勇大
【女子ダブルス】チェン・チンチェン/ジア・イーファン(中国、第1シード)対高橋礼華・松友美佐紀(第5シード)
【混合ダブルス】ワン・イーリュ/ホワン・ドンピン(中国、第2シード)対ツェン・シウェイ/ホワン・ヤチオン(中国、第4シード)