世界選手権3日目、2回戦の残り試合が行われ、各種目のベスト16が出そろった。日本の女子は全員シードのため、2回戦が初戦だったが、佐藤冴香選手以外は順当に3回戦へ進んだ。一方、男子シングルスでは、1回戦を唯一突破した常山幹太選手がマッチポイントを握りながら勝てず、悔しい敗戦。前回、桃田賢斗選手が日本人初のメダルを獲得したこの種目、今回は誰もベスト16に届かなかった
時差調整などを兼ねて17日に現地入りした日本選手団。6日を経過して最初の試合に臨んだ日本勢のうち、女子ダブルス第1シードの高橋礼華・松友美佐紀組は、世界ランク下位の台湾ヤン・チントゥン/チャン・チンフイ組の挑戦をあっさり退け、難なく3回戦に進んだ
高橋選手に試合後、今回の世界選手権に臨むための良い準備はできたか尋ねると、「日本での事前合宿はきつく、現地入りしてからも疲れが抜けていなかった」と明かした。ただ、グラスゴーでも練習ばかり続いて、「早く試合をしたい、という気持ちできょうの初戦に臨めたのは良かった」と答えた
高橋・松友組に次ぐ日本2番手、第7シードの米元小春・田中志穂組は、フランスのオドレイ・フォンテーヌ/ロレーヌ・バウマン組に第1、2ゲームとも一桁の点数しか与えず快勝。ペアとしての世界選手権デビューを白星で飾った
3番手福島由紀・廣田彩花組の相手はリオデジャネイロ五輪オランダ代表のセリーナ・ピーク/イーフィア・ムスケンス組。現在は世界ランクを落としているが、五輪前には世界7位につけていた欧州の強豪で、接戦になることも予想された。しかしいざ試合が始まってみると、福島・廣田組が圧倒。第1ゲームを21-12で奪い、第2ゲームも前半を11-4と大きくリードして終えたところで、相手棄権によりあっけない結末を迎えた
福島・廣田組は試合後、「世界選手権だからというわけではなく、スーパーシリーズ(SS)やほかの大会同様、初戦ということで緊張した部分はあった」と認めた。棄権勝ちという結果には、「もう少し長く試合をしたかった」と述べた
福万尚子・與猶くるみ組は現在、日本4番手ながら、4ペアの中で唯一、前回、2015年コペンハーゲン大会でノーシードから銅メダルを獲得した実績を持つ。最近はSSでもベスト16どまりが多く、成績としては物足りない。ただ、リオ五輪出場を逃してから取り組むプレースタイルの改良は順調に進んでいる様子で、7~8割程度は自分たちの考える動きができるようになっているという。初戦を難なく切り抜けた今大会、世界上位ペアを相手にした場合はどれくらいできるのか試したい、と意欲を見せている
女子シングルスは、前日、先に試合を行った第1シードの山口茜選手に続いて、第7シードの奥原希望選手と第11シードの大堀彩選手が初戦(2回戦)を突破し、3回戦に駒を進めた
世界選手権2度目の出場となる奥原選手は前回、2015年コペンハーゲン大会は初戦敗退。世界戦でまだ1つも勝っていないことを意識したか、BadPaL が問うと、意識していたことは認めながらも、「それほど強く意識していわけではない」と答えた。前回の世界戦から自分が変わったと思うところを尋ねると、「劣勢になっても余裕を持ってできた。(この2年で培った)自信と経験のおかげ」と述べた
初出場の大堀選手にとって世界選手権は、五輪と並び称される特別な大会であると同時に、格上の選手と対戦できる貴重な機会との意味合いがある。大堀選手は、SSより下位のグランプリ(GP)ゴールドで複数回優勝するなど、世界ランク同程度またはそれ以下の選手には負けない実力をつけてきた。ただ、かねて、「世界ランク上位の選手には勝ててない」と認めている。今大会では、「上位選手と多く試合をすることで、早く同じ舞台で戦えるようになりたい」と述べている
一方、佐藤冴香選手は、デンマークの20歳ミア・ブリクフェルト選手のあきらめないプレーに翻弄され、フルゲームを戦うもファイナルゲーム後半に逆転され、初戦で姿を消した
金星を挙げたブリクフェルト選手は試合後、BadPaL らに対し、戦略としては、「最後まで走り続ける、戦い続けることだけだった」と明かし、「勝てるとは思っていなかったので信じられない。うれしい」を連発した
男子ダブルスは、第4シードの園田啓悟・嘉村健士組が今大会初戦に臨み、ドイツのマーク・ラムスフス/マルビン・エミル・シーデル組に第1ゲームを奪われる苦しい出だしとなる。しかし、徐々にペースをつかんで、続く2ゲームを連取。生みの苦しみを味わいながらも、白星発進した
園田・嘉村組は、現地入りから最初の試合まで間が開いたことについて、「経験したことのない長さ。2~3日目の方が調子が良かった」と苦笑交じりに語った
日本ペア同士の対決となった金子祐樹・井上拓斗組と小林優吾・保木拓斗組の試合は、ラリーの応酬となるが、やはりこの日が初戦の金子・井上組がストレート勝ちで3回戦に進んだ
日本のもうひとペア、遠藤大由・渡辺勇大組は、リオデジャネイロ五輪金メダルの中国ツァン・ナン選手を擁する第8シードの中国ペアと対戦。第1、第2ゲームともに現時点の力の差を見せられ、2回戦敗退となった
男子ダブルスではこの日、第1シードの中国リュウ・ユーチェン/リ・ジュンフェイ組がインドネシアのモハンマド・アーサン/ライアン・アグン・サプトロ組、第5シードのマレーシア、ゴー・ウェイシェム/タン・ウィーキョン組が韓国キム・ドクヨン/チュン・ウイソク組にそれぞれ敗れる波乱。早くも、優勝争いが混とんとしてきた
男子シングルスは、日本唯一の勝ち残り、常山幹太選手が、世界14位の香港ウォン・ウィンキ選手に挑んだ。オープンニングゲームは、相手のマッチポイント2つを凌いで先取。続く第2ゲームを失い迎えたファイナルゲーム、8-8から抜け出して16-11とリードを広げる。ここから地力に勝るウォン選手の追い上げを許し17-18といったん逆転されるが、再び食らいつき、20-19と先にマッチポイントを握る。ところが、ここから3つ続いたマッチポイントの機会をいずれも逃してしまう。その後、相手に渡ったマッチポイントを2度凌いだが、最後は24-26で力尽きた
常山選手は試合直後、取材に応じ、マッチポイントを複数回握りながら、「決め急いでしまった」と述べ、勝ち切れなかったことへの悔しさを隠さなかった。ただ、北京、ロンドンと五輪2大会連続4位の韓国イ・ヒョンイル選手ら強豪に勝利してきた最近の経験を踏まえ、こうすれば勝てるという自分のスタイルができつつあるとし、「(世界ランク上位ながら)この相手にも勝てる自信はあった」と明かした。その一方で、ここまでが現時点の自分の実力と認め、さらにステップアップをはかる必要があることを強調した
なお、勝ったウォン・ウィンキ選手は BadPaL の取材に応じ、「(常山選手の)表情からは疲れているように見えたが、最後まで動きには疲れを見せず、やり難かった」と常山選手を評し、「まだ若く、ここからさらに強くなる」と将来性を指摘した
男子シングルスでは、前日、マレーシアのリー・チョンウェイ選手を破ったフランスのブリス・レベルデス選手のほか、中国のリン・ダン、チェン・ロン両選手、第1シードの韓国ソン・ワンホ選手ら、優勝候補はそろって勝ち上がった
一方、この大会で現役を引退することを表明しているドイツのマーク・ツイブラー選手は、過去の対戦成績2勝3敗の第6シード、台湾チョウ・ティエンチェン選手と対戦。第1、第2ゲームと接戦を演じるが、ファイナルゲーム12-21で敗れ、ドイツの応援団が見守る中、選手生活に1つの区切りをつけた。ツイブラ―選手は今年初め、BadPal に対し、引退後はビジネスに軸足を移す考えを明かした。ただ、バドミントンには今後もかかわっていく予定で、SSなどの国際大会を連戦することはもうないが、招聘されれば、プロリーグや団体戦などに出場する可能性があることを示唆している
◆日本選手3日目の結果
【男子シングルス】
ウォン・ウィンキ(香港、世界14位)<21-23,21-15,26-24>常山幹太(世界33位)
【女子シングルス】
奥原希望(世界8位)<21-10,17-21,21-7>レイチェル・ホンデリッチ(カナダ、世界53位)
佐藤冴香(世界13位)<14-21,21-14,18-21>ミア・ブリクフェルト(デンマーク、世界43位)
大堀彩(世界15位)<21-7,21-15>マリヤ・ミトソワ(ブルガリア、世界85位)
【男子ダブルス】
園田啓悟・嘉村健士(世界4位)<19-21,21-15,21-9>マーク・ラムスフス/マルビン・エミル・シーデル(ドイツ、世界34位)
金子祐樹・井上拓斗(世界19位)<21-16,25-23>小林優吾・保木卓朗(世界21位)
ツァン・ナン/リュウ・チェン(中国、世界8位)<21-9,21-15>遠藤大由・渡辺勇大(世界28位)
【女子ダブルス】
高橋礼華・松友美佐紀(世界1位)<21-10,21-5>ヤン・チントゥン/チャン・チンフイ(台湾、世界78位)
米元小春・田中志穂(世界7位)<21-9,21-8>オドレイ・フォンテーヌ/ロレーヌ・バウマン(フランス、世界59位)
福島由紀・廣田彩花(世界9位)<21-12,11-4棄権>セリーナ・ピーク/イーフィア・ムスケンス(オランダ、世界62位)
福万尚子・與猶くるみ(世界11位)<21-7,21-17>フ・リンファン/チェン・ユーチエ(台湾、世界48位)
◆日本選手4日目の対戦カード
【女子シングルス】
山口茜(世界2位)対チェン・ユーフェイ(中国、世界11位)
奥原希望(世界8位)対大堀彩(世界15位)
【男子ダブルス】
園田啓悟・嘉村健士(世界4位)対リッキー・カランダ・スワルディ/アンガ・プラタマ(インドネシア、世界10位)
マシアス・ボー/カールステン・モゲンセン(デンマーク、世界2位)対金子祐樹・井上拓斗(世界19位)
【女子ダブルス】
高橋礼華・松友美佐紀(世界1位)対福万尚子・與猶くるみ(世界11位)
米元小春・田中志穂(世界7位)対ガブリエラ・ストエバ/ステファニ・ストエバ(ブルガリア、世界12位)
ホワン・ドンピン/リ・インフェイ(中国、世界6位)対福島由紀・廣田彩花(世界9位)
【混合ダブルス】
クリス・アドコック/ガブリエル・アドコック(イングランド、世界5位)対数野健太・栗原文音(世界14位)