世界選手権2日目、男子シングルス第2シード、マレーシアのリー・チョンウェイ選手がフランスのブリス・レベルデス選手に初戦で敗れ、悲願の世界タイトル獲得の夢は、2回戦以降に待ち構える中国勢と顔を合わせる前に、あっけなく潰えた
レベルデス選手は昨年10月、デンマークオープンスーパーシリーズ(SS)プレミア準々決勝で、それまで7戦全敗だったリー・チョンウェイ選手から初勝利を挙げていて、チョンウェイ陣営も組み合わせが決まった時点で、初戦の相手として警戒していた
第1ゲーム、レベルデス選手が中盤15-10と優位に立つが、チョンウェイ選手が逆転に成功し、終盤19-18までリードを保つ。それでもあきらめないレベルデス選手は連続得点を決めて21-19でこのゲームを取る。第2ゲーム、流れをつかんだレベルデス選手が16-9と差を広げてこのままいくかと思われた。しかし、チョンウェイ選手が徐々に追い上げ、18-18で並ぶや一気に抜き去り、ゲームポイント(20-18)をつかむ。レベルデス選手も踏みとどまり、マッチポイントを奪い返してみせたが、チョンウェイ選手のチャレンジで、レべルデス選手の勝利を確定させたかにみえた線審の判定が覆るなどして、最終的に24-22でチョンウェイ選手に軍配。勝敗の行方はファイナルゲームに持ちこされる
ファイナルゲームは、息を吹き返したチョンウェイ選手がリードし、いったんは5点差(14-9)をつける。しかしここでもレベルデス選手が食い下がり、徐々に点差を詰めていくと、チョンウェイ選手にらしからぬ簡単なミスも続いて、レベルデス選手が21-17で逆転勝利。チョンウェイ選手の夢を砕いた
リー・チョンウェイ選手は試合後、会見に臨み、「ベストを尽くしたが、ネット際、ライン際で相手の方につきがあった」と語った。昨年10月デンマークオープンで初めて敗れていたことがこの試合に及ぼした影響を尋ねられると、「その後の対戦、3月の全英オープンでは勝っている」とし、否定した
世界選手権への挑戦を来年も続けるかについては、「(試合が終わったばかりの)現時点では何も考えられない。もし、自分の中に火がつかなったら(意欲がわかなかったら)、あす、引退するかもしれない」と苦笑交じりに述べ、明確にはしなかった
勝ったレベルデス選手も遅れて取材に応じ、この試合、チョンウェイ選手相手に混戦となり疲れていたことは認めながらも、「さまざまな経験を踏まえて、勝つための戦い方やマインドセットが最近、分かるようになってきた」と自信をのぞかせた
対チョンウェイの特別な戦略はあったのか BadPaL が問うと、「ここでは明かせないが」とニヤリ。ただその一方で、「それを彼だけを対象にしたものにすべきではない」と真顔で付け足した。世界トップクラスのリー・チョンウェイ選手と対戦する際、勝つにはこちらがアグレッシブにいくしかない。しかし世界ランク下位の選手が相手の時は、受けに回ってしまうことがあり、それが取りこぼしにつながっているとの自己分析と反省に基づく言葉だ
コーチをつけない戦い方については、フランスで長年見てもらっているコーチ、ベルトラン・ガレ氏が大会に帯同できないためで、試合の前と後に電話で戦略などのやりとりやアドバイスを受けるので問題ない、と説明した。また、自分がナショナルチームから離れて活動していること、自分のことをよく知る人でないと却って負の影響が出るため、フランスナショナルチームのコーチに加わったデンマークのピーター・ゲード元選手が、コーチ席に着かないことも明かした
この日は、1回戦の残り試合すべてと、混合ダブルスと女子シングルスの2回戦が行われ、日本勢は男子シングルスの上田拓馬選手と混合ダブルスの渡辺勇大・東野有紗組以外、順当に勝ち上がった
男子ダブルス1回戦に登場したのは、ともにノーシードの日本3番手、小林優吾・保木卓朗組と4番手、遠藤大由・渡辺勇大組。小林・保木組は香港リー・チュンヘイ/ロウ・チュクヒム組に第1ゲームを先取されるが、接戦となった第2ゲームを奪い返すと、ファイナルゲームも続けて取り、勝利した
2回戦でぶつかる、USオープンでGPゴールド初制覇を達成するなど上り調子にある2番手、金子祐樹・井上拓斗組に対する意識を聞くと、世代も近くライバル視していることを認めた上で、国際大会で対戦するのは日本でやるのとは違う、と指摘。既にこの会場で1試合、こなしたのをアドバンテージに、持ち味である攻撃を活かした速い展開に持ち込みたいと述べ、同国対決での勝利に意欲を示した
遠藤・渡辺組は、強打をほこるサトウィクサイラジ・ランキレディ選手を擁する若いインドペアが相手で、難しい初戦となることも予想された。ところが、相手の武器である攻撃をしっかりレシーブすることで、対戦相手を精神的に追い込むことに成功。終わってみれば、つけ入る隙を与えず快勝した
ペアとしての現状について尋ねると、遠藤選手は、「実戦の数をこなしたいのはそうだが、出場する大会の数を増やすのではなく、出場した1つの大会の中で数多く試合をするよう、2人で話しあっている」と説明した。また、「現在はまだ2人のそれぞれの癖を互いに知り合っている段階」とし、とりわけ競り合った場面でのゲームメイクや切り替えが十分できていないのでは、という指摘を、甘んじて受け入れた
遠藤・渡辺組は2回戦で、第8シードの中国ツァン・ナン/リュウ・チェン組に挑む
シードのためともに2回戦が初戦となった、日本の混合ダブルス2ペア。数野健太・栗原文音組は、スウェーデンのニコ・ルポネン/アマンダ・ヘーグストレーム組にストレート勝ち。日本勢が世界選手権で唯一手にしていないメダルへのこだわりを聞くと、「ベスト8に入ったリオデジャネイロ五輪の結果を上回りたい」(数野)。日本での混合ダブルスへの認知向上を目指す上で、「切り開きたい。そのためにはメダル」(栗原)と答え、表現は異なるが、それぞれ意欲を見せた
一方、渡辺・東野組は、「シャトルが飛ばない」会場で、自分たちの持ち味である速い展開に持ち込むことができなかった。若さを活かした思い切りの良いプレーも影をひそめる結果になり、アイルランドのサム・マギー/クロエ・マギー組に競り負け、世界戦デビューを白星で飾ることはできなかった
男子シングルスは初日に勝利した常山幹太選手に続いて、上田拓馬選手が1回戦に登場。リオデジャネイロ五輪銅メダリストで今大会第3シードに入ったデンマークのビクター・アクセル選手から第1ゲームを奪ってみせる。しかし第2、3ゲームは現在の力と勢いの差があらわれ、逆転負け。上田選手は、通算3度目の世界選手権を初戦で終えた
日本期待の女子シングルス陣はこの日、山口茜選手が先陣を切ってコートに立った。世界選手権デビュー戦を第1シードで迎えるという特別な状況だったが、緊張した様子も見せず、デンマークのエース、リネ・ケアースフェルト選手を圧倒した
常山選手と同様、2014年ユース五輪南京大会から20年東京五輪に向かう6年の中間点で、日本の女子シングルス1番手として世界選手権初出場を果たしたわけだが、「当時は、リオデジャネイロ五輪出場すら考えていなかった」と述べ、現在の立ち位置に関し、できすぎとの認識を示した
山口選手以外の日本の女子シングルス陣、奥原希望、佐藤冴香、大堀彩の3選手は大会3日目のあす、初戦(2回戦)に臨む
◆日本選手2日目の結果
【男子シングルス1回戦】 ビクター・アクセルセン(デンマーク、世界3位)<17-21,21-6,21-13>上田拓馬(世界54位)
【男子ダブルス1回戦】 小林優吾・保木卓朗(世界21位)<20-22,21-19,21-14>リー・チュンヘイ/ロウ・チュクヒム(香港、世界29位)、遠藤大由・渡辺勇大(世界28位)<21-8,21-12>シラグ・シェッティ/サトウィクサイラジ・ランキレディ(インド、世界38位)
以下、2回戦
【女子シングルス2回戦】 山口茜(世界2位=第1シード)<21-6,21-13>リネ・ケアースフェルト(デンマーク、世界37位)
【混合ダブルス2回戦】 数野健太・栗原文音(世界14位)<21-13,21-5>ニコ・ルポネン/アマンダ・ヘーグストレーム(スウェーデン、世界33位)、渡辺勇大・東野有紗(世界22位)<13-21,21-16,15-21>サム・マギー/クロエ・マギー(アイルランド、世界35位)
◆日本選手3日目の対戦カード
【男子シングルス】
ウォン・ウィンキ(香港、世界14位)対常山幹太(世界33位)
【女子シングルス】
奥原希望(世界8位)対レイチェル・ホンデリッチ(カナダ、世界53位)
佐藤冴香(世界13位)対ミア・ブリクフェルト(デンマーク、世界43位)
大堀彩(世界15位)対マリヤ・ミトソワ(ブルガリア、世界85位)
【男子ダブルス】
園田啓悟・嘉村健士(世界4位)対マーク・ラムスフス/マルビン・エミル・シーデル(ドイツ、世界34位)
金子祐樹・井上拓斗(世界19位)対小林優吾・保木卓朗(世界21位)
ツァン・ナン/リュウ・チェン(中国、世界8位)対遠藤大由・渡辺勇大(世界28位)
【女子ダブルス】
高橋礼華・松友美佐紀(世界1位)対ヤン・チントゥン/チャン・チンフイ(台湾、世界78位)
米元小春・田中志穂(世界7位)対オドレイ・フォンテーヌ/ロレーヌ・バウマン(フランス、世界59位)
福島由紀・廣田彩花(世界9位)対セリーナ・ピーク/イーフィア・ムスケンス(オランダ、世界62位)
福万尚子・與猶くるみ(世界11位)対フ・リンファン/チェン・ユーチエ(台湾、世界48位)