
韓国オープンSS決勝、山口茜選手が開催国韓国のエース、ソン・ジヒョン選手にフルゲームの末に競り勝ち、2013年ジャパンオープン以来のSS2勝目を挙げた。表彰式後、BadPaL に対し、「負けなかったこと」と今回の優勝を評価する一方、「欲を言えば先週(日本で)勝ちたかった」と本音も漏らした
昨年の準決勝の再戦となったこの試合、山口選手がまず主導権を握るが、ソン選手も離されずについてきて、先につかんだゲームポイント(20-19)をしのがれ、オープニングゲームを失う。第2ゲームを取り返し、迎えたファイナルゲーム開始早々、勢いに乗ってスピードを上げ一気に引き離しにかかる。しかしソン選手はこれを許さず逆にひっくり返されると、そのまま点差を4点に広げられる。山口選手は反撃に転じ12-12で追いつくが、再び追いていかれて15-17に。それでも、ここから4連続得点を決め19-17とようやく逆転に成功すると、相手のネットに絡む好ショットで1点は失うも、続く2点を取り、1時間10分を超える熱戦に終止符を打った
山口選手は表彰式後、BadPaL の取材に応じ、「SS優勝はうれしい」としながらも、「欲を言えば、先週勝ちたかった」と本音を吐露した。決勝では、いいラリーを続けながら、決めにいくフィニッシュの部分でミスが出て失点する場面が散見されたと指摘すると、相手が調整不足との情報もあり、「普通にラリーしていれば自分に分があると思っていた。ただ、もうすぐ決まるかな、という時に狙いにいってしまい自分からミスしてしまった。もう一球がまんできるようにならないと」と、反省を込めて自らのプレーを振り返った。また、ファイナルゲーム終盤、19-17からソン選手のネットに絡むスーパーショットが決まり失点。1点差に追いつかれた場面は、「それまでなかなか追いつけない状態が続いていたことを考えると、逆転に成功した後の1点ぐらい」と、動揺はなかったと説明した

上位大会SSでの優勝は、2013年ジャパンオープン以来3年ぶりとなるが、2勝目はなかなか挙げられなかったという印象か、と問うと、「ジャパンオープンは、(まだ実力も伴わないのに)優勝してしまったという感じ」。そこから今まで優勝できなかったのは、できないのが当たり前とはいわないが、ごく自然な結果との認識を示した。ただ今回の勝利は、実力が追いついてきていることのあかし。リオデジャネイロ五輪のメダリスト3人をはじめ、「出てきていない(上位)選手がいる」としながらも、「負けなかったことは今後の自信にしていいと思う」と述べた
リオ五輪から約2カ月が経過。次の節目となるゴールは決めていないというが、目指す世界ランクはどの辺りに置いているのか。「8シードは取れるものなら取りたいが、ここから先は結局、上の選手に勝っていくしかない。勝てばシード上位の選手も落ちてくる」と指摘。世界ランク何位を目指すという直接的な表現ではないが、自らの言葉で現在の考えを示した
山口選手は今回の優勝で、年末開催のSSファイナル出場へ一歩近づいた。SSファイナルへの思いを聞くと、是が非にも出なければと考えているわけではないと断った上で、「一昨年は出場できたが、昨年は出場できずさみしかった」と明かす。「1年間コンスタントに勝った結果がSSファイナル出場。通常のトーナメントとは異なり、トップ選手といっぱい試合ができる、楽しみの1つ」と述べ、初出場でいきなりベスト4入りした2014年以来2度目となる出場に期待をのぞかせた
なお、今回で25回目を迎えた韓国オープンで日本選手が優勝するのは全種目を通じ初めて。女子シングルスではSSの格付けになる前の2000年、米倉加奈子元選手が決勝まで進み、デンマークのカミラ・マーティン元選手に敗れ準優勝に終わったのが過去最高成績。山口選手はこの記録を塗り替えた

男子ダブルスは、韓国のエースペア、イ・ヨンデ/ユ・ヨンソン組が、前週ジャパンオープンを制して上り調子にある中国リュウ・ユーチェン/リ・ジュンフイ組に先制され、ファイナルゲームも16-16まで追い込まれる。それでも、最後は観客の期待を裏切ることなく連続得点で突き放し、勝利を収めた、
この試合を最後に韓国代表を引退するイ・ヨンデ選手はこれで、◆チョン・ジェソン元選手と組んで3回(2007,10-11年)◆コ・ソンヒョン選手と1回(13年)◆ユ・ヨンソン選手と2回(15-16年)――の計6回、自国開催のSSで男子ダブルスのタイトルを手にしたことになる。このほか、2008年と09年の2回、北京五輪で金メダルを獲得したイ・ヒョジョン元選手とのペアで、混合ダブルスでも優勝している
イ・ヨンデ選手は試合後のインタビューで、最後の国際大会でたくさんのファンを前に勝ってしめくくれて良かったと述べた。今後は、韓国の国体に出場した後、世界でも数少ない「客を呼べる選手」として、プロリーグなどに活動の主軸を移していく予定

男子シングルスでは新たなチャンピオンが誕生した。自国開催のSSで初優勝を狙った世界8位のソン・ワンホ選手の悲願を打ち砕き、世界41位の中国チャオ・ビン選手がSSのタイトルを初めて手にした
世界ランクで中国6番手につけるチャオ選手は今年、2月のアジア団体選手権、5月のトマス杯と大事な団体戦に続けて起用されるなど、今後を期待される23歳。7月の台湾オープングランプリ(GP)ゴールドでは、世界7位の台湾チョウ・ティエンチェン選手に敗れたが、準優勝という結果を残している

女子ダブルスと混合ダブルスは、ともに第1シードの韓国ペアが中国ペアを破って優勝した。自国でSSのタイトル獲得に成功した女子ダブルスのチョン・ギョンウン/シン・スンチャン組、混合ダブルスのコ・ソンヒョン/キム・ハナ組は昨年のこの大会、そろってベスト4に終わっていた。なお、韓国オープンがSSの格付けとなった2007年以降、韓国勢は男子シングルス、女子シングルス、男子ダブルス、混合ダブルスの4種目では勝ってきたが、女子ダブルスで優勝するのは今回が初めて
決勝の結果
【男子シングルス】 ソン・ワンホ(韓国、世界8位)〈11-21,23-21,7-21〉チャオ・ビン(中国、世界41位)
【女子シングルス】 ソン・ジヒョン(韓国、世界7位)〈22-20,15-21,18-21〉山口茜(世界10位)
【男子ダブルス】 イ・ヨンデ/ユ・ヨンソン(韓国、世界1位)〈16-21,22-20,21-18〉リュウ・ユーチェン/リ・ジュンフイ(中国、世界12位)
【女子ダブルス】 チョン・ギョンウン/シン・スンチャン(韓国、世界3位)〈21-13,21-11〉ルオ・ユー/ルオ・イン(中国、世界6位)
【混合ダブルス】 コ・ソンヒョン/キム・ハナ(韓国、世界1位)〈21-14,21-19〉ツェン・シウェイ/チェン・チンチェン(中国、世界35位)