インドネシアオープンSSプレミア準々決勝、高橋礼華・松友美佐紀組が勝ち、日本勢で唯一、準決勝に進んだ。試合後には、過去2連敗していた中国ペアを初めて破ったことより、まったく初めての環境で試合をするリオデジャネイロ五輪を意識し、風によりこれまで苦手にしていたインドネシアオープンの会場に対応し克服できたことへの充足感を示した
日本のエースペアは、ユーバー杯準決勝で日本代表団体戦での初黒星を喫した後、「(自分たちの想定と)違うなと言っているばかりではやられてしまう」ことをあらためて学び、「自分たちがやろうとすることを迷わないでやる」ことを確認し合ったという
第1ゲームは風の影響を受けやすいコートに入り、「(1回戦シードのため)昨日(2回戦)が初戦で、最初は速さについていけなかった」(松友)、「風を嫌がりすぎた」(高橋)などの理由から、簡単に落としてしまう。第2ゲームに入りエンドが変わると、「ハーフ球がずれるので、松友には前だけに集中してもらい後はカバーする」(高橋)と、ある意味、シンプルな形にすることを決め、競り合いに持ち込む。終盤、19-20と先にマッチポイントを握られるが、ここから3連続得点を決めてゲームカウントを1対1のタイに戻す。こうなると総合力で勝る世界1位がリズムに乗り、ファイナルゲーム5-4からどんどん点差を広げていき、21-14で1時間越えの接戦に決着をつけた
高橋・松友組は試合後、BadPaL の取材に応じ、「苦手な会場、とばかり言っていられない。五輪会場がこんな感じだったらと意識して臨み、インドネシアオープンではベストの試合ができた」と笑みを見せた。一方、これまで勝ったことのなかった対戦相手のタン・ジンフア/ホワン・ヤチオン組については、「2度負けていたが、それほど意識していたわけではない」(高橋)。「リオ五輪には出てこないが、五輪後に何度も対戦が続く相手」(松友)との認識を持っていたことを説明した
インドネシアオープン、オーストラリアンオープンと続く、8月の五輪本番前最後の上位2大会(SS)に入る前に抱いた気持ちを聞いたところ、松友選手は「 1つでも多く試合がしたい」。高橋選手は「五輪前にもう一度、インドネシアかオーストラリアで優勝したい」と答えた
女子シングルスの奥原希望選手は、台湾タイ・ツーイン選手と対戦。SS初優勝を果たした2015年ジャパンオープン以来3連勝中(通算成績3勝2敗)だったが、タイ選手は今大会、ロンドン五輪金メダルの中国リ・シュエリ選手をストレートで破るなど仕上がりの良さを見せている
試合は第1ゲームをタイ選手、第2ゲームを奥原選手が取り合う。しかし迎えたファイナルゲームは、序盤に7-0と一気にリードを広げたタイ選手が、奥原選手に追い上げを許さず快勝した
奥原選手は試合後、BadPaL の取材に応じ、「まだ完璧ではないものの、動きが合ってきた。高いレベルのタイ選手と試合をする中で自然に動けるようになっていった」とさばさばした表情で答えた。滑る床に対する危ぐは完全に払しょくされたかと問うと、「汗が垂れているとまだ・・・」と述べ、もう少しとの印象を残した。この日の敗戦を踏まえ、五輪本番までに取り組むべき改善点を1つ聞くと、動きがいい時は取れていたタイ選手のフェイントをかけたドロップに引っかかったとし、守備を挙げた
五輪前最後のSSとなる次週のオーストラリアンオープンに向けては、「気温が低かったりシャトルが飛ばなかったりと、また違った試合環境に対応できるようにしたい」と抱負を語った
女子シングルスではこの日、第1シード、スペインのカロリナ・マリン選手がインドのサイナ・ネワル選手を相手に冷静さを備えた強さを見せた。とりわけ第2ゲームは、インドネシアオープンを過去3度(2009、10、12年)制しているネワル選手を圧倒した。昨年、同じ会場で世界選手権2連覇を成し遂げたマリン選手はユーバー杯の後、中国からインドネシアに入り、インドネシアのナショナルチームに混ざってトレーニング。「会場内を吹く風のコントロールを含め、準備ができていた」と試合後述べ、その成果を主張している。準決勝では、韓国ソン・ジヒョン選手にファイナルゲーム18-20と追い詰められながら、逆転勝ちした11年優勝ワン・イーハン選手を迎え撃つ
日本男子唯一の勝ち残り、園田啓悟・嘉村健士組は、過去2戦2敗の難敵、マッズ・コンラド・ペターセン/マッズ・ピーラー・コルディング組に挑んだ。しかし「デンマークの壁」に3たび跳ね返され、準決勝には進めなかった
ただ日本2番手のペアは、リオ五輪出場の可能性が断たれた4月以降、気持ちを切り替え、◆シンガポールオープンSS準優勝◆チャイナマスターズグランプリ(GP)ゴールドベスト4◆アジア選手権(SS相当)ベスト4◆インドネシアオープンSSプレミアベスト8――と、出場した大会すべてで結果を残してきた
園田、嘉村両選手に試合後、2人がここから先目指すところを聞くと、まずシンガポールオープンに続くSSでの決勝進出。シード権を得て世界ランク8位内に入り、年末のSSファイナルに出場すること、と明確に答えた
この日、会場が最高の盛り上がりを見せたのは男子シングルス、デンマークのヤン・ヨルゲンセン選手と、インドネシアのジョナタン・クリスティ選手の一戦。2013年の今大会で引退したアテネ五輪金メダルのタウフィック・ヒダヤット元選手から後継者指名を受け、期待に応えて成長を続けるクリスティ選手は前日の2回戦で、北京、ロンドンと2大会連続で五輪金メダルを手にした中国リン・ダン選手を撃破し、勢いに乗っていた
会場を埋めた地元ファンによる地鳴りのような大声援を背に第1ゲームを先取。第2ゲームも中盤逆転に成功し17-13とリードすると、会場の熱気は最高潮に達した。しかしここから、トマス杯優勝の立役者の1人で、2014年インドネシアオープン優勝、15年準優勝のヨルゲンセン選手が盛り返し、このゲームを逆転で奪う。ファイナルゲームは、ヨルゲンセン選手が序盤からペースをつかみ14-4までリードを広げると、クリスティ選手は反撃の手なく力尽きた
準々決勝の結果
【男子シングルス】
ティエン・ホウウェイ(中国、世界6位)〈14-21,21-15,21-18〉フ・ユン(香港、世界14位)
ヤン・ヨルゲンセン(デンマーク、世界5位)〈14-21,21-19,21-14〉ジョナタン・クリスティ(インドネシア、世界19位)
ラジフ・ウーセフ(イングランド、世界15位)〈21-17,12-21,12-21〉イーサン・マウラナ・ムストファ(インドネシア、世界29位)
リー・チョンウェイ(マレーシア、世界2位)〈21-16,9-2棄権〉ワン・ツェンミン(中国、世界18位)
【女子シングルス】
カロリナ・マリン(スペイン、世界1位)〈24-22,21-11〉サイナ・ネワル(インド、世界8位)
ワン・イーハン(中国、世界3位)〈21-18,13-21,22-20〉ソン・ジヒョン(韓国、世界7位)
奥原希望(世界5位)〈18-21,21-13,8-21〉タイ・ツーイン(台湾、世界9位)
ワン・シーシャン(中国、世界6位)〈18-21,21-19,21-16〉スン・ユ(中国、世界13位)
【男子ダブルス】
イ・ヨンデ/ユ・ヨンソン(韓国、世界1位)〈21-12,21-16〉コ・ソンヒョン/シン・ベクチョル(韓国、世界5位)
アナース・スカールプ・ラスムセン/キム・アストルプ・ソレンセン(デンマーク、世界22位)〈21-16,21-19〉ルー・カイ/ツェン・シウェイ(中国、世界ランクなし)
ホン・ウェイ/チャイ・ビアオ(中国、世界6位)〈21-18,21-17〉ゴー・ウェイシェム/タン・ウィーキョン(マレーシア、世界14位)
マッズ・コンラド・ペターセン/マッズ・ピーラー・コルディング(デンマーク、世界9位)〈21-13,21-12〉園田啓悟・嘉村健士(世界15位)
【女子ダブルス】
高橋礼華・松友美佐紀(世界1位)〈11-21,22-20,21-14〉タン・ジンフア/ホワン・ヤチオン(中国、世界25位)
セリーナ・ピーク/イーフィア・ムスケンス(オランダ、世界11位)〈10-21,24-22,25-23〉リズキ・アメリア・プラディプタ/ティアラ・ロサリア・ヌライダ(インドネシア、世界86位)
ユー・ヤン/タン・ユエンティン(中国、世界3位)〈21-17,21-17〉チャン・イエナ/イ・ソヒ(韓国、世界8位)
ウーン・ケーウェイ/フー・ビビアン・カームン(マレーシア、世界20位)〈21-14,21-19〉マハデウィ・イスティラニ・ニ・ケトゥット/アンギア・シッタ・アワンダ(インドネシア、世界23位)
【混合ダブルス】
ツァン・ナン/ツァオ・ユンレイ(中国、世界1位)〈21-11,10-21,21-14〉アルフィアン・エコ・プラセトヤ/ア二サ・サウフィカ(インドネシア、世界53位)
コ・ソンヒョン/キム・ハナ(韓国、世界2位)〈21-17,22-20〉リュウ・チェン/バオ・イーシン(中国、世界5位)
ヨアキム・フィッシャー・ニールセン/クリスティナ・ペダーセン(デンマーク、世界4位)〈21-18,19-21,19-21〉シュー・チェン/マー・ジン(中国、世界6位)
ルー・カイ/ホワン・ヤチオン(中国、世界11位)〈21-14,21-14〉キム・アストルプ・ソレンセン/リネ・ケアースフェルト(デンマーク、世界ランクなし※予選勝ち上がり)
準決勝の対戦カード
【男子シングルス】
ヤン・ヨルゲンセン(デンマーク、世界5位)対ティエン・ホウウェイ(中国、世界6位)
リー・チョンウェイ(マレーシア、世界2位)対イーサン・マウラナ・ムストファ(インドネシア、世界29位)
【女子シングルス】
カロリナ・マリン(スペイン、世界1位)対ワン・イーハン(中国、世界3位)
ワン・シーシャン(中国、世界6位)対タイ・ツーイン(台湾、世界9位)
【男子ダブルス】
イ・ヨンデ/ユ・ヨンソン(韓国、世界1位)対アナース・スカールプ・ラスムセン/キム・アストルプ・ソレンセン(デンマーク、世界22位)
ホン・ウェイ/チャイ・ビアオ(中国、世界6位)対マッズ・コンラド・ペターセン/マッズ・ピーラー・コルディング(デンマーク、世界9位)
【女子ダブルス】
高橋礼華・松友美佐紀(世界1位)対セリーナ・ピーク/イーフィア・ムスケンス(オランダ、世界11位)
ユー・ヤン/タン・ユエンティン(中国、世界3位)対ウーン・ケーウェイ/フー・ビビアン・カームン(マレーシア、世界20位)
【混合ダブルス】
ツァン・ナン/ツァオ・ユンレイ(中国、世界1位)対コ・ソンヒョン/キム・ハナ(韓国、世界2位)
シュー・チェン/マー・ジン(中国、世界6位)対ルー・カイ/ホワン・ヤチオン(中国、世界11位)