マレーシア、インドに続き今シーズン3戦目のグランプリ(GP)ゴールド、タイマスターズが8~13日、バンコクで開催された。日本リーグ最終節とスケジュールが重なったため日本代表はエントリーしなかったが、リオデジャネイロ五輪で最もメダル獲得の可能性が高い日本女子ダブルス陣の最強のライバルとなる「中国2番手」の争いが、ここにきて明確になった

未だ金メダルを獲得したことのない日本と異なり、五輪では当然のように優勝が求められる中国ナショナルチームは、パートナーを組み替え実戦で試しながら、確実に金メダルを取れるペアを見極めていく。11日付の最新の女子ダブルス世界ランキングで上位にいる中国勢は、◆ルオ・イン/ルオ・ユー組(世界1位)◆マー・ジン/タン・ユエンティン組(世界8位)◆ツァオ・ユンレイ/ティエン・チン組(世界10位)◆ユー・ヤン/ワン・シャオリ組(世界18位)――の4ペア。このうち世界ランク1位のルオ姉妹が、昨年末のスーパーシリーズ(SS)ファイナルを制して抜け出した。これに続く2組目がどのペアになるのか、注目されている
2番手につけるマー・ジン/タン・ユエンティン組は昨年、4月のアジア選手権と5月のオーストラリアンオープンSSで続けて勝ち期待された。しかし、その後、結果(=優勝)を残せず、ベスト4に終わった10月のデンマークオープンSSプレミアを最後にペアとして試合に出ていない
4番手のユー・ヤン/ワン・シャオリ組は、4年前のロンドン五輪で優勝間違いなしとみられていたが失格処分となりメダルを逃した。それでも世界選手権を2度(2011、13年)制した実績などから、最強の称号はその後も揺らぐことはなかった。しかしワン選手が昨年からひじなどのケガに苦しみ、手術に踏み切るも術後の回復が思わしくなく、昨年末、中国代表からの引退を決めたことで、リオ五輪候補から外れた

残るは、3番手のツァオ・ユンレイ/ティエン・チン組。ロンドン五輪で金メダルを獲得した実力が今も健在なのは、世界選手権2連覇(2014、15年)で証明済み。現在、世界ランクが10位にとどまっているのはペアとして国際大会への出場回数が少ないため(五輪レース開始後は5大会のみ)で、ルオ姉妹に次ぐ2番手、もしくは逆転して1番手での五輪出場権獲得はかたいとみられていた

ところがそこへ急浮上してきたのがユー・ヤン/タン・ユエンティン組。デビュー戦は昨年5月の男女混合国・地域別対抗戦スディルマン杯。ここで2試合に出て2勝と期待に応えると、その後は、◆独ビットブルガーオープンGPゴールド優勝(昨年10月)◆チャイナオープンSSプレミア優勝(同11月)◆香港オープンSS準優勝(11月)◆インドネシアマスターズGPゴールド優勝(12月)◆マレーシアマスターズGPゴールド準優勝(1月)――と、出場した5大会すべて決勝に進む明確な結果(うち優勝3回)を積み重ね、世界ランクも23位まで上昇した
実質的な中国の2番手、3番手になったツァオ・ユンレイ/ティエン・チン組とユー・ヤン/タン・ユエンティン組は今回、バンコクで順当に決勝まで勝ち上がり、チャイナオープン準決勝、香港オープン決勝に続いて、3たび国際大会で顔を合わせた。1ゲームずつ取り合い迎えたファイナルゲーム、五輪金メダリストのベテラン3人に比べると実力、実績ともに見劣りする21歳のタン・ユエンティン選手を百戦錬磨のユー・ヤン選手が盛り立て、18-20と2つのマッチポイントを握られながら凌いで、逆に21-20とマッチポイントを奪い返す粘り強さを見せる。しかし反撃もここまで。21-23で敗退し、高橋礼華・松友美佐紀組に敗れたマレーシアマスターズに続いてGPゴールド準優勝に終わった
ただこの結果、勝ったツァオ/ティエン組は7,000点、敗れたユー/タン組も5,950点のポイントを上乗せし、さらに世界ランク上位に食い込んでくる。北京五輪金メダルのユー・ヤン選手とロンドン五輪金メダルのツァオ・ユンレイ選手はこれまで、誰と組んでも高橋・松友組をはじめとする日本代表を常に脅かしてきた存在。出場すればリオデジャネイロ五輪でも確実にメダルに絡んでくる実力の持ち主だけに、これから五輪レースが終わる5月初めまで、中国ナショナルチームの思惑も踏まえ、この2ペアの動向から目が離せない
女子シングルスと男子ダブルスは、リオデジャネイロ五輪で金メダル獲得を狙う、タイのラッチャノク・インタノン選手とインドネシアのヘンドラ・セティアワン/モハンマド・アーサン組がそれぞれ勝ち、五輪イヤーのシーズン、最高のスタートを切った
一方、男子シングルスは、ともに4位入賞を果たした北京、ロンドンを含め過去3度出場している五輪に、今回は出場しない意向を示している韓国のベテラン、35歳イ・ヒョンイル選手が、初の五輪出場に近づいている香港のエース、34歳フ・ユン選手にストレート勝ち。全種目を通じて唯一、大会2連覇を達成した
混合ダブルスでは、昨年、アジアジュニア選手権と世界ジュニア選手権を制した中国の18歳ペア、ツェン・シウェイ/チェン・チンチェン組が、世界ランク13位でリオデジャネイロ五輪出場圏内にいるマレーシアのチャン・ペンスーン/ゴー・リュウイン組をストレートで破り、優勝した。このうちツェン・シウェイ選手は1月、同じく18歳のリ・インフェイ選手と組んでマレーシアマスターズGPゴールドのタイトルを手にしている
決勝の結果
【男子シングルス】 フ・ユン(香港、世界13位)〈18-21,19-21〉イ・ヒョンイル(韓国、世界19位)
【女子シングルス】 ラッチャノク・インタノン(タイ、世界6位)〈21-19,18-21,21-17〉スン・ユ(中国、世界11位)
【男子ダブルス】 ヘンドラ・セティアワン/モハンマド・アーサン(インドネシア、世界2位)〈12-21,21-15,21-12〉キム・サラン/キム・ギジョン(韓国、世界7位)
【女子ダブルス】 ツァオ・ユンレイ/ティエン・チン(中国、世界10位)〈11-21,21-12,23-21〉ユー・ヤン/タン・ユアンテイン(中国、世界23位)
【混合ダブルス】 チャン・ペンスーン/ゴー・リュウイン(マレーシア、世界13位)〈17-21,15-21〉ツェン・シウェイ/チェン・チンチェン(中国、世界68位)