アジア選手権決勝、福島由紀・廣田彩花がかつていた場所へ戻ってきた。この大会で5年ぶりの優勝を遂げたという結果以上に、それぞれの故障等により戦線離脱を余儀なくされた難しい時期を経て、再び世界トップと競い勝てるところまで状態を戻してきた意味合いが大きい
最終日に対戦したのは、志田千陽・松山奈未、永原和可那・松本麻佑を破ったイ・ソヒ/ペク・ハナで、「危険な相手」に映った。しかし、今大会の福島・廣田にとってはさほど影響なく、大きく揺らがないプレーを続けて第1ゲームを21-7で先取。続く第2ゲームは11-14とリードされるが、動じることなくそこから10連続得点を決めて、勝利した
2人はアジア選手権で、初めて出場した2016年が2回戦敗退、翌17年は初戦でチェン・チンチェン/ジア・イーファンに敗れ早々に姿を消すなど当初、振るわなかった。しかしその後は、18年金メダル、19年銅メダル、コロナ感染拡大による2年間の中止を挟み、22年も銅メダルと連続して表彰台に上がっていて、今年は18年に次ぐ5年ぶり2度目のタイトル奪取となった
ただ今回、道程は平たんではなかった。21年夏、東京五輪直前の廣田の大ケガに続いて、長いリハビリを経て廣田が動けるようになりペアとしてのプレーが徐々に機能し始め出したところで、今度は福島に故障が発生し、22年夏、世界選手権とジャパンオープンを欠場することに。これが23年初めに向け進んでいたランキング正常化の過程に影響して、2人はいったんシード圏外に落ちる
それでも所属チームの正確な情報収集まで含めた多方面にわたるサポートを背景に、焦りすぎず、気持ちを切らさずにじっくり取り組んできた不断の努力の結果として、この時期に世界1位を破り上位大会を勝ち切れるまでに自分たちのプレーを取り戻すことができた。そしてここから先は、もう一段のステップアップに挑むことになる
女子シングルスは、準決勝で山口茜との連敗を5で止めたタイ・ツーインが、決勝ではアン・セヨンへの連敗を3で止めて、頂点に立った
台湾の28歳エースがアジア選手権を制するのは2017年、18年に続き5年ぶり3度目で、最初が山口、2度目がチェン・ユーフェイ、そして今回、アン・セヨンをそれぞれ直接破ってタイトルを手にした。一方、国際大会での優勝は2022年7月の台湾オープン(SUPER300)以来、約1年9カ月ぶりになる
今大会では、準々決勝のホー・ビンジャオ戦でファイナルゲーム6-13から粘り強く盛り返し21-18と逆転勝ちできたことが、準決勝の山口戦、決勝のアン・セヨン戦へと続く良い流れを生み出した
男子シングルスは、第2シードのアンソニー・シニスカ・ギンティンがロー・キーンユーを寄せ付けず、ストレート勝ち。自身初となるアジア選手権のタイトル獲得に成功すると同時に、インドネシア選手としてこの種目、2007年のタウフィック・ヒダヤット以来16年ぶりのチャンピオンとなった
男子ダブルスでは、シラグ・シェッティ/サトウィクサイラジ・ランキレディがオープニングゲームを落とし劣勢になりながらも、インド系の多い観客の応援を力につけ続く2ゲームを奪い返して逆転勝利。ダブルスでは史上初、全種目を通じても、1965年男子シングルスのディネッシュ・カーンナに次ぐ2つ目のアジア選手権金メダルをインドにもたらした
中国ペア同士の対戦となった混合ダブルス決勝は、大方の事前予想を裏切る形で、ディフェンディングチャンピオンで第1シードのツェン・シウェイ/ホワン・ヤチオンが、ジアン・ツェンバン/ウェイ・ヤシンにストレート負けする「波乱」。全種目を通じて唯一、チャンスのあった連覇も果たせなかった。ただ、2016年のツァン・ナン/ツァオ・ユンレイから続く、この種目の中国ペアによる連勝記録は6大会に伸びた
決勝の結果
◆男子シングルス
アンソニー・シニスカ・ギンティン(インドネシア、第2シード)<21-12,21-8>ロー・キーンユー(シンガポール、第7シード)
◆女子シングルス
アン・セヨン(韓国、第2シード)<10-21,14-21>タイ・ツーイン(台湾、第4シード)
◆男子ダブルス
シラグ・シェッティ/サトウィクサイラジ・ランキレディ(インド、第6シード)<16-21,21-17,21-19>テオ・イーイ/オン・ユーシン(マレーシア、第8シード)
◆女子ダブルス
福島由紀・廣田彩花(第7シード)<21-7,21-14>イ・ソヒ/ペク・ハナ(韓国)
◆混合ダブルス
ツェン・シウェイ/ホワン・ヤチオン(中国、第1シード)<15-21,16-21>ジアン・ツェンバン/ウェイ・ヤシン(中国)
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各種目のメダリスト
【男子シングルス】
金メダル: アンソニー・シニスカ・ギンティン(インドネシア、第2シード)
銀メダル: ロー・キーンユー(シンガポール、第7シード)
銅メダル: ルー・グアンズ(中国)、常山幹太
【女子シングルス】
金メダル: タイ・ツーイン(台湾、第4シード※通算3度目)
銀メダル: アン・セヨン(中国、第2シード※前回銅)
銅メダル: 山口茜(第1シード※前回銀)、チェン・ユーフェイ(中国、第3シード)
【男子ダブルス】
金メダル: シラグ・シェッティ/サトウィクサイラジ・ランキレディ(インド、第6シード※この種目インド史上初)
銀メダル: テオ・イーイ/オン・ユーシン(マレーシア、第8シード)
銅メダル: 小林優吾・保木卓朗(第4シード)、ワン・チリン/リー・ヤン(台湾)
【女子ダブルス】
金メダル: 福島由紀・廣田彩花(第7シード※通算2度目)
銀メダル: イ・ソヒ/ペク・ハナ(韓国)
銅メダル: 永原和可那・松本麻佑、ラウィンダ・プラジョンジャイ/ジョンコンパン・キッティハラクン(タイ)
【混合ダブルス】
金メダル: ジアン・ツェンバン/ウェイ・ヤシン(中国)
銀メダル: ツェン・シウェイ/ホワン・ヤチオン(中国、第1シード※前回金)
銅メダル: ゴー・スーンフアト/シェボン・ジェミー・ライ(マレーシア、第8シード)、デジャン・フェルディナンシャ/グロリア・エマヌエル・ウィジャジャ(インドネシア)