ウーバー杯決勝は稀に見る大熱戦となり、最終種目までもつれた総力戦の結果、韓国が2010年に次いで中国との直接対決を制し、12年ぶり2度目の優勝を遂げた
中国の主力、チェン・ユーフェイとチェン・チンチェン/ジア・イーファンは、この試合会場「インパクトアリーナ」に特別な感情を抱いていた。4年前、準決勝敗退という中国女子にとっては「惨敗」を経験した場所だから
中国はウーバー杯に参戦を始めた1984年から17大会続けて決勝進出。逃したことは一度もなかった。それが2018年、まさにこの場所でタイに敗れ、初めて進めなかった時のメンバーに3人は名を連ねていた
当時の準決勝出場メンバーは、◆チェン・ユーフェイ◆チェン・チンチェン/ジア・イーファン◆ガオ・ファンジエ◆タン・ジンフア/ホワン・ヤチオン◆リ・シュエリ――。この時敗れたシングルス陣3人の中で唯一、現役のチェン・ユーフェイは今大会期間中、当時は大きなショックを受けたと認め、「この会場に再び足を踏み入れた時、感傷的になった」と話した。それと同時に「あの敗北がなければ今の自分はない」と言い切り、悔しさをばねにここまで強くなってきたことを強調した
この思いは決勝の第1試合、アン・セヨンとのエース対決でも明確に見えた。消耗戦となったファイナルゲーム、17-20と相手に3つのマッチポイントを握られる、心が折れてしまうような状況に追い詰められてもなお、あきらめずに食らいつき、逆転してチームに最初のポイントをもたらしてみせた
ただ一方で、途中から足をつりながらも「チームメイトを落胆させたくない」との思いから最後までコートに立ち続け、あらゆるショットを返球してきた韓国20歳のエースに対する敬意を言葉で表することも忘れなかった
中国リードで迎えた2種目目の第1ダブルス、チェン・チンチェン/ジア・イーファンも、準決勝敗退という4年前の失敗から立ち上がろうと決意し、前回オーセフ大会で日本から奪還することに成功したタイトル。今回はそれを防衛したい、と前日語っていた
しかしこの日は韓国のベテラン2人の思いが勝る。シン・スンチャン/イ・ソヒは準決勝の日本戦でも「自分たちの勝ちをおぜん立てしてくれた」と称賛していた後輩アン・セヨンの奮闘を目の当たりにして一層奮起。オープニングゲームを奪われながらも、個人戦では過去5回対戦して一度も勝ったことのない中国エースペアから、ウーバー杯決勝という大舞台で初白星をもぎとり、チームのため試合をふりだしに戻してみせた
3種目目の第2シングルスは、今大会負けなしのホー・ビンジャオが、前日、奥原希望を破り日本戦勝利の立役者となったキム・ガウンを寄せ付けずにストレート勝ち。中国2連覇に王手をかけて、第2ダブルスにつないだ
ともに非正規ペア同士の対戦となった4種目目は、女子ダブルス世界4位のコン・ヒヨンを擁する韓国ペアを、混合ダブルス世界4位のホワン・ドンピンがけん引役を務める中国ペアが追いかける展開に。第1ゲームは20-20、第2ゲームは17-18と、ここで優勝を決めたい中国ペアが終盤肉薄するも、いずれも韓国ペアが突き放して勝利。決着は最終種目に持ち越された
第3シングルスに出場する2人を比較すると、直近のアジア選手権でアン・セヨン、山口茜を連破して優勝するなど、実績、世界ランクともにワン・ジューイが上。中国の連覇はほぼ決まったかにみえた。しかし試合開始と同時に、チームメイトの戦いぶりに刺激を受けた韓国のシム・ユジンがこうした机上の見方に抗うファイティングスピリットを見せ、引けを取らないどころか、先行する展開で20-17とゲームポイントをつかむ。負けられないワン・ジュ―イも凌いで逆にゲームポイントを奪い返すが、シム・ユジンは譲らず、ここから一進一退の攻防を繰り広げて28-26、オープニングゲームを競り勝つ
第2ゲームは、ワン・ジュ―イが地力を見せ15-7と大きくリードする。しかし、こういう点差になっても韓国のチャレンジャーはスタミナ温存に切り替えるそぶりなく追い続け、1点差まで詰め寄る。結局、このゲームは落としたものの、向かっていく姿勢が相手に流れを渡してしまうのを阻止する結果に
そして迎えたファイナルゲーム、競り合いになった前の2ゲームとは一転、シム・ユジンが一方的に得点を重ねていき、そのまま快勝。誕生日翌日の決勝で価値ある勝利をつかんだ23歳は、韓国を12年ぶりの優勝に導く大役を見事に果たし、コートに駆け込んできたチームメイト全員と喜びを分かち合った
一方、準優勝に終わった中国チームの選手たちは、両エースが倒れこむまで続いた第1シングルスの1時間31分とほぼ同じ1時間28分に及んだ激闘を終えた22歳のワン・ジュ―イを慰め、労わった
韓国チームのシングルスコーチを務めるソン・ジヒョンは、「落ち着いてプレーするようにとだけ伝えていたが、彼女のパフォーマンスの良さに驚かされた」と述べ、うれしい誤算を喜び、シム・ユジンを称えた
ちなみに、韓国女子シングルス、ダブルスのコーチ、ソン・ジヒョン(30)とイ・キョンウォン(42)は、それぞれ第2シングルス、第2ダブルスとして2010年クアラルンプール大会決勝で中国を破った初優勝時のメンバー。今回はコーチとして、ウーバー杯2つ目の金メダルを手にした
今大会の結果を受け、韓国はウーバー杯での連続メダル獲得回数を8大会(金2、銀2、銅4)に伸ばし、日本の7大会(金1、銀2、銅4)を1つ上回る。中国は今回、優勝こそ逃したものの、17大会(金12、銀4、銅1)と両国のはるか上にいる
ウーバー杯・決勝の結果
①中国(B組1位)2ー3韓国(D組1位)
【第1シングルス】チェン・ユーフェイ<17-21,21-15,22-20>アン・セヨン
【第1ダブルス】チェン・チンチェン/ジア・イーファン<21-12,18-21,18-21>シン・スンチャン/イ・ソヒ
【第2シングルス】ホー・ビンジャオ<21-12,21-13>キム・ガウン
【第2ダブルス】ホワン・ドンピン/リ・ウェンメイ<20-22,17-21>コン・ヒヨン/キム・ヘジョン
【第3シングルス】ワン・ジュ―イ<26-28,21-18.8-21>シム・ユジン
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ウーバー杯最終結果
◆優勝:韓国(12年ぶり2度目※前回3位)
◆準優勝:中国(※前回優勝)
◆3位:日本(※前回準優勝)、タイ(※前回3位)