女子の国・地域別対抗戦ウーバー杯は16日、決勝が行われ、前回覇者の日本を中国が破り、2大会ぶりにタイトルを取り戻した。この試合に出場した両チームのメンバー平均年齢は、日本の26.3歳に対し、中国は23.3歳だった
日本女子チームは現状、でき得る限りのプレーを見せた。山口茜のスディルマン杯に続くチェン・ユーフェイ連破に始まり、組み換え2戦目にもかかわらず、福島由紀と松本麻佑が世界ランク2位チェン・チンチェン/ジア・イーファンと互角にわたりあった。高橋沙也加は世界9位のホー・ビンジャオ相手に劣勢となるも、途中、流れを引き戻して見せた。そして、松友美佐紀と松山奈未は、同じく組み換えできたホワン・ドンピン/リ・ウェンメイから両ゲームとも先にゲームポイントをつかんだ

それでも中国は勝ち切った。前回、2018年バンコク大会の準決勝でタイに不覚を取った試合に出ていたチェン・ユーフェイとチェン・チンチェン/ジア・イーファンを軸に、若手がそれぞれ足場を固めた結果で、この先数年、ウーバー杯で中国の覇権が続くことも予想される

チームの若手シフトが成功しているのは、今回、実質的にエースのラッチャノク・インタノン抜きで3位になったタイも同じ。ラッチャノクに代わる絶対的エースこそまだいないものの、全体的にバランスのよい布陣で、経験値を付加することで次回以降、さらなる躍進が期待できる
日本女子チームに今、必要なのは、先輩の引退で繰り上がる「順番待ち」ではなく、山口や奥原希望といった突出した現在のトップを倒してのし上がってくる、ガツガツした若手の存在。そのためには、B代表以下の選手のオープン大会への自費参戦の機会を広げる競争環境の整備が不可欠になる
決勝で日本チームに唯一のポイントをもたらした山口は試合後、「前回スディルマン杯でチェン・ユーフェンに勝利した時は、向かっていく気持ちがいいプレーにつながっていた。戦術としてラリーで点数をとるのも大事だが、つなぐだけでなく積極的に主導権を握っていくという気持ちの部分を特に大切に入った」と述べた
敗れた昨日の試合(準決勝)からの切り替えは、「もちろん反省が必要だが、団体戦では次がありチームの雰囲気も大事。自分だけが落ち込んではいられないので、今日(決勝)に向けて昨晩から切り替えて準備できた」と説明。「準決勝では自分が負けたが、皆が勝ってつないでくれた決勝。第1シングルスながら皆につなぐという気持ちで戦い、勝ててよかった」と述べた
また、接戦を落とした福島・松本は、「第1ゲーム、何度もゲームポイントを握った展開がありながら、取り切れなかった。そこが悔しい」(松本)。「すごく長い時間プレーして、最後の最後に相手の方がスピードも気持ちも上げてきていたので、その分すごく悔しい気持ちがある。後半ミスも出て相手を乗らせてしまった」とコメント。一方、組み換えで臨んだことについて、「率直にすごくに楽しかった。いつものパートナーではないので、いろんな経験ができたのは自分にとってプラスだった」(福島)とした
決勝の結果
①日本1-3中国
【第1シングルス】山口茜<21-18,21-10>チェン・ユーフェイ
【第1ダブルス】福島由紀・松本麻佑<27-29,21-15,18-21>チェン・チンチェン/ジア・イーファン
【第2シングルス】高橋沙也加<9-21,18-21>ホー・ビンジャオ
【第2ダブルス】松友美佐紀・松山奈未<22-24,21-23>ホワン・ドンピン/リ・ウェンメイ
【第3シングルス】大堀彩<打ち切り>ハン・ユエ
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◆優勝:中国(※2大会ぶり15度目、前回3位)

◆準優勝:日本(※前回優勝)

◆3位:タイ(※前回準優勝)

◆3位:韓国(※前回3位)

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15日に行われた準決勝2試合、「日本対韓国」と「中国対タイ」の両カードは、2018年バンコク大会と同じ。前回は日本とタイが勝ち優勝を争ったが、今回の勝者は日本と中国。両国によるウーバー杯決勝は14年ニューデリー大会以来3大会ぶり
韓国と対戦した日本は、前回と同じく第1シングルスを務める山口茜が、前回の第3シングルスから今回第1シングルスに成長を遂げたアン・セヨンに敗れ、今大会、4戦目で初黒星。山口は、スディルマン杯、ウーバー杯と、通常なら1年ごとに開催される国・地域別団体戦が2大会続くのは初めての経験で、疲れの蓄積はあると認めつつ、「皆同じ条件。その中でもっとコントロールしていかないといけないと思う」と話した
チームにとって劣勢スタートとなったが、次の福島由紀と松本麻佑は、「(0-1で回ってきたが)自分たちがどうにか1ポイントを取って貢献しチームが勝てるように、という気持ちの方が大きかったので、ネガティブではなくポジティブにコートに入れた」(福島)と試合後語ったように、動揺なし。「第1ゲームはゆっくりな展開で押され気味、2ゲーム目以降はスピードを上げて前に出るようにした」(松本)と試合中も冷静に対応し。ペアを組んで2戦目ながら、世界4位シン・スンチャン/イ・ソヒ相手に逆転勝ちを決め、試合をふりだしに戻した
3番手に登場の高橋沙也加は、世界ランクが同程度のキム・ガウンと対峙したが、「焦りやプレシャーもあったが、開き直るしかない」と試合に臨んだ気持ちを明かした。第1ゲーム、16-12とリードしたところから逆転され落とすが、「最初はいい感じで入れたが、2ゲーム目の途中まで迷いがあった」という。それでも、チャンスで決めにいくプッシュなどのミスが多かったのを自認し、コースを狙いすぎないなど、ミスをしないで粘る方向へ試合の中で変えることができたと指摘。結果的に、逆転勝ちにつながった「自分の粘りを見せられてよかった」と総括した
2-1と日本が勝利に王手をかけ、コートに立った松友美佐紀と松山奈未。ただ、相手は東京五輪銅メダルのキム・ソヨン/コン・ヒヨンで、ペアを組んで2戦目の松友・松山にとって厳しい戦いになることが予想された。ところが試合が始まってみると、第1ゲームは一度もリードを許さぬまま押し切り、第2ゲームも前半こそ追いかける展開になるが、8-10から5連続得点を決めひっくり返すと、その後は世界5位に逆転を許さずストレート勝ち。チームの2大会連続決勝進出を決めた
松山は試合後、「自分たちが勝ったら日本チームが勝利、という形で回してもらえたので、勝とうと話して入った。パフォーマンスもよかったし、結果勝てたのでよかった」と勝利の喜びを表した
一方、松友は対戦相手について、「このペアでは初めてだが、それぞれのペアで対戦したことがあるので、初めて戦う相手ではなかった。ただ相手というより、まずは自分たちのプレーをしっかりできたらと思っていた」とコメント。あすの決勝に向けては、「1試合1試合が毎回勝負と思ってここまで戦ってきたので、決勝まで試合ができることがうれしい。中国は本当に強いが、自分たちのプレーがどこまでできるか、楽しんでやれたら」と抱負を述べた
もうひとつの試合は、タイが、遅れてチームに合流したラッチャノク・インタノンを第1シングルスに置いたが、試合開始からほどなくして試合をやめた。ラッチャノク自ら、心身ともに準備不足であることを認め、五輪後の肩の故障から十分回復していないこともあり、棄権したと説明した
ランキングの高いラッチャノクの起用により、第2シングルスに回った今大会ここまで第1シングルスとして4戦負けなしのポーンパウィー・チョチュウォンが、中国から1ポイント奪えるかが注目された。しかし、チェン・ユーフェイとの対戦は回避しても、次に控えるホー・ビンジャオに跳ね返され、結局、タイチームは0-3の完敗に終わった。それでも準々決勝までラッチャノク抜きで戦い勝ち抜いたタイの若手の成長は見て取れる。ラッチャノクも、若いチームメイトが今大会成長し、大舞台のプレッシャーにも耐えられるようになった、と称賛した
準決勝の結果
①日本3-1韓国
【第1シングルス】山口茜<14-21,7-21>アン・セヨン
【第1ダブルス】福島由紀・松本麻佑<19-21,21-16,21-14>シン・スンチャン/イ・ソヒ
【第2シングルス】高橋沙也加<18-21,21-18,21-14>キム・ガウン
【第2ダブルス】松友美佐紀・松山奈未<21-17,21-18>キム・ソヨン/コン・ヒヨン
【第3シングルス】高橋明日香<打ち切り>シム・ユジン
②中国3-0タイ
【第1シングルス】チェン・ユーフェイ<5-2棄権>ラッチャノク・インタノン
【第1ダブルス】チェン・チンチェン/ジア・イーファン<21-15,21-10>ラウィンダ・プラジョンジャイ/プティッタ・スパジラクン
【第2シングルス】ホー・ビンジャオ<21-15,21-16>ポーンパウィー・チョチュウォン
【第2ダブルス】ホワン・ドンピン/リ・ウェンメイ<打ち切り>サプシリー・テラッタナチャイ/ジョンコンパン・キッティハラクン
【第3シングルス】ハン・ユエ<打ち切り>ブサナン・ウンバンルンパン