全英オープン(SUPER1000)決勝、111回目を迎えた権威と伝統ある大会は、連覇達成1種目、数年ぶり2度目の優勝2種目、そして昨年覇者からタイトル奪取に成功しての初制覇が2種目、という結果で幕を閉じた

2連覇のかかった3種目(男子シングルス、男子ダブルス、女子ダブルス)の中で、見事これを達成したのは、昨年、日本男子ダブルス陣で史上初優勝を遂げた遠藤大由・渡辺勇大
全英オープンでは初めて決勝に進み、初優勝を狙う園田啓悟・嘉村健士に第2ゲームを奪い返されながらも、ファイナルゲーム、後半7連続得点を決めて一気に抜け出し勝利。この種目では、◆パク・ジュボン/キム・ムンス(1986~86年)◆リ・ヨンボ/ティエン・ビンギ(87~88年)◆レキシ―・マイナキー/リッキー・スバグジャ(95~96年)◆マルクス・フェルナルディ・ギデオン/ケビン・サンジャヤ・スカムルジョ(2017~18年)――らに並ぶ、大会2連覇を記録した
2人は試合後、「素直にうれしい。日本人同士で戦えたのは誇りに思う」(渡辺)。「競技をやり始めて、テレビで強い選手を見ていたのがこの大会。この場所で立ってやりたいと小さいころから思っていた」(遠藤)と喜びを表した

渡辺は、東野有紗と組む混合ダブルスでも優勝。金子祐樹・松友美佐紀をストレートで降して、初優勝した2018年以来3年ぶり2度目のタイトルを手にした
日本が長い間、重視してこなかったこの種目、国際大会の決勝で日本勢同士が対戦するのは、今後も含め、非常に稀な機会となる。混合ダブルスのコーチ、ジェレミー・ガンの果たしている役割は大きい
2人は試合後、「この舞台で優勝できるのはうれしい。もう一度、3年前と同じ気持ちを味わいたいという思いで今回、全英に臨んだ」(東野)。「タイトルを手にすることができてうれしい。これを続けられるようにがんばっていく」と述べた

渡辺・東野のほかに、全英オープンで2度目のタイトルを手にしたのが女子シングルスの奥原希望。勢いのあるポーンパウィー・チョチュウォンの挑戦を跳ね返して、16年以来5年ぶりに頂点に立った
奥原は試合後、再び全英チャンピオンになれたのを率直に喜び、第2ゲーム、相手がスピードを上げてきた時、それを上回るスピードで対応できたことを勝因の一つに挙げた
コロナウイルスの感染拡大を受け中断したワールドツアー再開後、最初に参戦した昨年10月のデンマークオープン(SUPER750)から5カ月ぶりの国際大会にもかかわらず、出場2大会連続で優勝と、調整力の高さを示す結果となった

一方、2連覇のかかるディフェンディングチャンピオンを倒し、新たなチャンピオンが誕生したのは2種目。女子ダブルスでは、永原和可那・松本麻佑が、前年覇者で、以降ここまで好調を維持している福島由紀・廣田彩花を抑え込み、ストレート勝ちした
2019年以来2度目の決勝進出で初優勝を果たし、◆16年高橋礼華・松友美佐紀◆20年福島・廣田――に続いた
中国、韓国、インドネシアのライバル不在の大会だったが、昨年、10月デンマークオープン、12月全日本総合選手権といずれも決勝で負けていた福島・廣田を破っての優勝は、永原・松本にとって意義あり
2人は試合後、「相手は2連覇を狙っていたと思う。そこを阻止できたのは大きい」(松本)。「参加できなかった国もあった大会。この優勝はしっかり自分たちの自信にして、次も優勝できるように」(永原)と述べた

もう一種目、男子シングルスはリー・ヅージアが、連覇を狙う出場7大会連続決勝進出のビクター・アクセルセンを破り、リー・チョンウェイに次ぐマレーシア選手として、全英の頂点を獲るという快挙を達成した
大接戦となった第1ゲームを30-29で競り勝ちながら、第2ゲームは20-22で逆に競り負け、試合はふりだしに。感情の起伏が激しい面があるだけにどうなるかと思われたが、ファイナルゲームも気持ちを切らすことなく、前半から抜け出すと、そのまま気を緩めることなく最後まで駆け抜けた
ヅージアは試合直後、様々な感情が交錯して今の気持ちを表現するのは難しい、とした上で、「ただ1点ずつ取るために戦った。あきらめなかった」と話し、1月から参戦を再開した国際大会で調子が上がらず、国内で批判も受け落ち込む中、手にした特別な勝利をかみしめた
決勝の結果
【男子シングルス】ビクター・アクセルセン(デンマーク、第2シード)<29-30,22-20,9-21>リー・ヅージア(マレーシア、第6シード)

【女子シングルス】奥原希望(第2シード)<21-12,21-16>ポーンパウィー・チョチュウォン(タイ、第6シード)

【男子ダブルス】園田啓悟・嘉村健士(第3シード)<15-21,21-17,11-21>遠藤大由・渡辺勇大(第4シード)

【女子ダブルス】福島由紀・廣田彩花(第1シード)<18-21,16-21>永原和可那・松本麻佑 (第2シード)

【混合ダブルス】渡辺勇大・東野有紗 (第2シード)<21-14,21-13>金子祐樹・松友美佐紀
