世界ジュニア選手権・カザン大会個人戦決勝、女子シングルスで郡司莉子が日本3人目となるチャンピオンの座に着いた。男子シングルスではクンラウット・ウィティサンが3連覇を達成した

郡司は、第2シードのツォウ・メン(中国)相手に幸先よくオープニングゲームを取る。しかし、チームは勝利したものの団体戦で喫したストレート負けの雪辱を期すアジアジュニア覇者に、第2ゲームを奪い返される。それでもファイナルゲームに入ると再度主導権を握り、中盤以降一気に引き離して快勝。世界ジュニア2度目の挑戦で、頂点に立った
日本勢のこの種目での優勝は、奥原希望(2012年)、山口茜(13~14年)に次ぐ3人目
郡司は、2014年山口優勝の後、◆15年:ゴー・ジンウェイ(マレーシア)◆16年:チェン・ユーフェイ(中国)◆17年:グレゴリア・マリスカ・トゥンジュン(インドネシア)◆18年:ゴー・ジンウェイ(マレーシア)――と、日本から離れていっていた女子シングルスのタイトルを、5年ぶりに取り戻した

一方、中国勢は、3年ぶりとなるタイトル奪還を狙ったが果たせなかった。ただ、メダルなしに終わった2015年の後、16年チェン・ユーフェイの9年ぶり優勝(07年ワン・リン以来)を経て、◆17年:銀1銅1◆18年:銅2◆19年:銀1銅1――と3年続けて複数のメダルを獲得。体系的、持続的なジュニア強化策の成果がうかがえる
また、準決勝で郡司に敗れ銅メダルに終わったラッチャノク・インタノンの後継者と目されるピッタヤポーン・チャイワン(タイ)は、ジュニアランクで長く1位を維持するなど、この世代での実力の高さは誰もが認めるところ。しかし、世界ジュニア個人戦ではこれが初のメダル。そのほか、ユース五輪は銅メダル(18年)、アジアジュニアは銀メダル(17年)が最高成績で、U19(19歳未満)のメジャー大会では無冠に終わった。真価はこの先、シニアでどう成長を遂げるかで問われる

そのピッタヤポーンとともに、ジュニアの国際大会でタイをけん引してきたクンラウット・ウィティサンは、男子シングルス決勝でクリスト・ポポフ(フランス)を圧倒。ストレート勝ちで、目標としてきた世界ジュニア3連覇を決めた
同じクラブに所属する先輩ラッチャノク・インタノンが女子シングルスで2009~11年に史上初めて達成した快挙に、8年後続いた
世界ジュニア男子シングルスのタイトル連続奪取はこれまで、チェン・ジン(中国)の2連覇が最高だった
クンラウットについて、9月の韓国オープン(SUPER500)1回戦で初めて対戦した現世界チャンピオンの桃田賢斗は BadPaL に対し、「フィジカルやパワーでは(シニアに)劣るが、世界ジュニアのチャンピオンとなれば、技術やかけひきの面でやはり、おっと思わせるものを持っている」と感想を語った。その上で、2012年世界ジュニアチャンピオンになった当時、上の選手にそうしてもらったように、「今度は世界チャンピオンである自分が実際に試合をすることで、国籍に関係なく、シニアに上がってくるジュニアのトップ選手に何かを伝えられたら」と指摘。対戦を通じて、新しい世代の盛り上げにも一役担っていく意向を示した
なお、クンラウットと同じ歳のライバルで昨年の銅メダリスト、ラクシャ・セン(インド)は、奇しくもこの日、世界ジュニアと並行して開催されていたダッチオープン(SUPER100)の決勝を戦い、ワールドツアー初優勝。これに今大会に出場しなかったもう1人、昨年銀メダルの奈良岡功大も加えた2001年生まれの3人は今後、シニアの大会で上位選手にもまれながら、競い合っていくことになる

一方、優勝は逃したものの、今大会大躍進を遂げた02年生まれのクリスト・ポポフは、かつてブルガリアの選手だったトマ・ポポフが、フランスに移住し自ら立ち上げたクラブで指導する3人息子の1人
長男トマ・ジュニオール(21)は、16年世界ジュニアで、リー・ヅージア(マレーシア)に準々決勝で敗れメダルこそ逃したが、山澤直貴、奈良岡功大(当時中学生)らを破ってベスト8入り。現在は世界ランク66位、フランス4番手としてシニアの大会で戦っている
次男クリスト(17)は、17年世界ジュニアでベスト8。翌18年はヨーロッパ選手権で準優勝しながら1回戦負けに終わったが、今年、中国選手を初めて破るなどして準優勝。フランス選手で初のメダル獲得という記録も刻んだ
三男ボリス(10)は時期尚早ながら、トマ・ジュニオールとクリストの2人は、この先も順調に成長を遂げれば、5年後に迎える自国開催の2024年パリ五輪では主力として活躍することも期待される
残る3種目のうち、男子ダブルスと混合ダブルスでは、それぞれのディエンディングチャンピオン、ディー・ヅ―ジエン/ワン・チャン(中国)とレオ・ロリー・カルナンド/インダ・カヒャ・サリ・ジャミル(インドネシア)が敗れ、世界ジュニア2連覇を逃した
女子ダブルスは、第4シードのリン・ファンリン/ツォウ・シンルー(中国)が第3シードのアマリア・カハヤ・プラティウィ/フェブリアナ・ドゥイプジ・クスマ(インドネシア)に勝利。18歳リン・ファンリンは混合ダブルスとの2冠を達成した
決勝(13日)の結果
【男子シングルス】クンラウット・ウィティサン(タイ、第1シード)<21-8,21-11>クリスト・ポポフ(フランス、第10シード)
【女子シングルス】ツォウ・メン(中国、第2シード)<13-21,21-12,14-21>郡司莉子(日本、第7シード)
【男子ダブルス】ディー・ヅ―ジエン/ワン・チャン(中国、第1シード)<19-21,18-21>ダニエル・マーシン/レオ・ロリー・カルナンド(インドネシア、第2シード)
【女子ダブルス】アマリア・カハヤ・プラティウィ/フェブリアナ・ドゥイプジ・クスマ(インドネシア、第3シード)<20-22,21-11,14-21>リン・ファンリン/ツォウ・シンルー(中国、第4シード)
【混合ダブルス】レオ・ロリー・カルナンド/インダ・カヒャ・サリ・ジャミル(インドネシア、第1シード)<17-21,17-21>フェン・ヤンジュー/リン・ファンリン(中国、第2シード)
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各種目のメダリスト
【男子シングルス】
金メダル: クンラウット・ウィティサン(タイ、第1シード※3連覇)
銀メダル: クリスト・ポポフ(フランス、第10シード)
銅メダル: リ・ユンヅー(中国、第4シード)、ヨナサン・ラムリー(インドネシア、第13シード)

【女子シングルス】
金メダル: 郡司莉子(日本、第7シード)
銀メダル: ツォウ・メン(中国、第2シード※アジアジュニア優勝)
銅メダル: ピッタヤポーン・チャイワン(タイ、第1シード)、ダイ・ワン(中国、第11シード)

【男子ダブルス】
金メダル: ダニエル・マーシン/レオ・ロリー・カルナンド(インドネシア、第2シード※アジアジュニア優勝)
銀メダル: ディー・ヅ―ジエン/ワン・チャン(中国、第1シード※昨年優勝)
銅メダル: フェン・ヤンジュー/ダイ・エンイ(中国、第3シード)、川本拓真・河村翼(日本、第6シード)

【女子ダブルス】
金メダル: リン・ファンリン/ツォウ・シンルー(中国、第4シード)
銀メダル: アマリア・カハヤ・プラティウィ/フェブリアナ・ドゥイプジ・クスマ(インドネシア、第3シード)
銅メダル: ルオ・シューミン/リ・イージン(中国、第2シード)、鈴木陽向・大澤佳歩(日本、第13シード)

【混合ダブルス】
金メダル: フェン・ヤンジュー/リン・ファンリン(中国、第2シード)
銀メダル: レオ・ロリー・カルナンド/インダ・カヒャ・サリ・ジャミル(インドネシア、第1シード※昨年優勝)
銅メダル: ラッチャポン・マッカサシトーン/ベニャパ・エイムサード(タイ、第3シード)、ジアン・ツェンバン/リ・イージン(中国、第4シード)
