かつて日本が世界で勝てなかったころ、代表選手は下位大会を数多くこなし、少ないポイントを積み重ねることで世界ランクの引き上げに努めてきたが、今シーズン、スーパーシリーズ(SS)12大会中10大会でファイナリスト輩出と状況は一変した。ただ来シーズンは、賞金額引き上げに伴う大会の質向上を狙い出場義務が拡大され、とりわけトップ選手を過密なスケジュールが待ち受ける

2018年は世界ランク上位の選手にとって、より厳しいシーズンとなる。SSファイナル終了後に更新される世界ランキングで、シングルス世界15位、ダブルス世界10位までに入った「トップ選手」に、◆レベル2(プレミアオブSSプレミア相当=賞金総額100万ドル以上)の3大会◆レベル3(SSプレミア相当=70万ドル以上)の5大会◆レベル4(SS相当=35万ドル以上)の7大会中4大会――の、合わせて12大会への出場を、世界バドミントン連盟(BWF)が義務付けるため
◆レベル2:(1)全英オープン(2)インドネシアオープン(3)中国オープン
◆レベル3:(1)マレーシアオープン(2)ジャパンオープン(3)デンマークオープン(4)フレンチオープン(5)チャイナマスターズ
◆レベル4:(1)マレーシアマスターズ(2)インドネシアマスターズ(3)インドオープン(4)タイオープン(5)シンガポールオープン(6)韓国オープン(7)香港オープン
日本選手で対象となるのは、【女子シングルス】山口茜、奥原希望、大堀彩、佐藤冴香【男子ダブルス】園田啓悟・嘉村健士、金子祐樹・井上拓斗【女子ダブルス】高橋礼華・松友美佐紀、福島由紀・廣田彩花、米元小春・田中志穂、福万尚子・與猶くるみ――。その後、18年7月第1木曜日の世界ランキングで同じランクに上がってきた選手が同様(※)の出場義務を負う(※年後半のレベル2とレベル3全部。レベル4は3大会)
また、1~2月は3週連続(マレーシア、インドネシア、インド)、6~7月は4週連続(マレーシア、インドネシア、タイ、シンガポール)、9月には3週連続(日本、中国、韓国)と、上位へ勝ち進むほど負担の大きくなる連戦が3度組まれており、トップ選手には「選択」も必要だ
早速、1月16~21日に開催されるマレーシアマスターズの初回エントリーリストが12月8日に発表されたが、米元・田中組、福万・與猶組の名はなし。同時期に開催される「S/Jリーグ」への出場を優先させた結果だ。米元・田中組の所属する北都銀行は21日、本拠地秋田でのホームゲーム(対七十七銀行)、福万・與猶組のヨネックスは同じ日、悲願の優勝に向けもう負けられない強豪との一戦(対日本ユニシス)がそれぞれ控えている。こうした国内大会との兼ね合いも、来シーズンは重要になってくる
2018年BWF大会カレンダー(レベル4=SS相当以上の上位大会のみ)
【1月】
16~21日) マレーシアマスターズ(★★★★レベル4=SS相当)
23~28日) インドネシアマスターズ(★★★★レベル4=SS相当)
30~04日) インドオープン(★★★★レベル4=SS相当)
【3月】
14~18日) 全英オープン(★★レベル2=プレミアオブSSプレミア相当)
【6月】
26~01日) マレーシアオープン(★★★レベル3=SSプレミア相当)
【7月】
03~08日) インドネシアオープン(★★レベル2=プレミアオブSSプレミア相当)
10~15日) タイオープン(★★★★レベル4=SS相当)
17~22日) シンガポールオープン(★★★★レベル4=SS相当)
【9月】
11~16日) ジャパンオープン(★★★レベル3=SSプレミア相当)
18~23日) 中国オープン(★★レベル2=プレミアオブSSプレミア相当)
25~30日) 韓国オープン(★★★★レベル4=SS相当)
【10月】
16~21日) デンマークオープン(★★★レベル3=SSプレミア相当)
23~28日) フレンチオープン(★★★★レベル3=SSプレミア相当)
【11月】
06~11日) チャイナマスターズ(★★★レベル3=SSプレミア相当)
13~18日) 香港オープン(★★★★レベル4=SS相当)
【12月】
日程未定) ワールドツアーファイナル(★レベル1=SSファイナル相当※賞金総額150万ドル以上)
さらに、レベル4(SS相当)以上の大会が実施されない月には、【2月】アジアチーム選手権(=トマス・ユーバー杯アジア予選、マレーシア・アロースター)【4月】アジア選手権(中国・武漢)【5月】トマス・ユーバー杯(タイ・バンコク)【8月】世界選手権(中国・南京)、アジア大会(インドネシア・ジャカルタ)――と、トップ選手にとって出場不可避な主要大会が組み込まれており、1年間通じて気が抜けない
一方で、日本代表以外の選手にとっては、これまで以上に代表とのポイント差を縮めるのが難しくなる。日本バドミントン協会が、国際大会に優先的にエントリーされる代表選手の人数枠を拡大したのに加え、今シーズンまでは「門戸が開かれていた」唯一のSS、自国開催のジャパンオープンも、レベル3(SSプレミア相当)に格上げ(=賞金総額倍増)されたことで予選もなくなり(※)、出場は実質的に不可能となった(※レベル2とレベル3は予選廃止。レベル4の予選枠は男子シングルスで16、その他種目で8まで)
そのため、エントリーの制限はあるものの代表以外も自費参戦が可能な、レベル5(GPゴールド相当)とレベル6(GP相当)、さらにその下に位置するインターナショナルチャレンジ、インターナショナルシリーズ、フューチャーシリーズといった大会で、継続的に結果を残すことが求められる
◆レベル5:(1)タイマスターズ(2)スイスオープン(3)スペインオープン(4)ドイツオープン(5)ニュージーランドオープン(6)オーストラリアンオープン(7)USオープン(8)台湾オープン(9)マカオオープン(10)インド・サイドモディインターナショナル(11)コリアマスターズ
◆レベル6:(1)フランス・オルレランズマスターズ(2)中国レベル6※名称未定(3)カナダオープン(4)ジャパンマスターズ~秋田開催~(5)ロシアオープン(6)ベトナムオープン(7)インド・ハイデラバードオープン(8)インドネシア・レベル6※名称未定(9)ダッチオープン(10)ドイツ・ビットブルガーマスターズ(11)スコットランドオープン