香港オープンSS準決勝、混合ダブルスの保木卓朗・廣田彩花組は敗れたものの、十分勝機のあるプレーで、観客も魅了した。ただ、「次」の可能性についてはあくまで、「まずは全日本総合の男女ダブルスで勝って、それから」とし、回答を固辞した
東京五輪に向けた強化策の一環として日本バドミントン協会が招へいし、来年1月から日本代表の混合ダブルスを見ることになるマレーシアのジェレミー・ガン氏が視察に訪れ、最前列で見守る中、保木・廣田組はデンマークのマシアス・クリスチャンセン/クリスティナ・ペダーセン組にストレート負け。ジャパンオープンに次ぐSS決勝進出はならなかった。ただ、粗削りではあるものの、運動量豊富な保木選手と、前衛で思い切りの良い動きを見せ始めている廣田選手が、9月の東京に続いて、ペアとしてポテンシャルのあるところを見せた
保木・廣田組は試合後、BadPaL の取材に応じ、「勝てるチャンスがあったのに、悔しい」と、9月のジャパンオープン決勝で敗れた時とは違う反応を示した。6月のオーストラリアンオープンから組みはじめ、所属が違うため、練習は代表合宿の時のみ。それでも、出場した今シーズン後半のSS6大会で、◆準優勝:1回(日本)◆ベスト4:1回(香港)◆ベスト8:1回(韓国)◆ベスト16:2回(デンマーク、中国)◆ベスト32:1回(オーストラリア)――と、まずまずの結果を残した
保木、廣田両選手も「混合ダブルスは楽しむことを優先」としながらも、上位相手にもやれる手ごたえは感じていると言う。ただ、ジェレミー・ガン氏をはじめとするコーチ陣の判断に依るが、来シーズン以降も混合ダブルスを継続していきたい意向はあるか聞くと、「まずは全日本総合の男女ダブルスで勝って、それから」ときっぱり。来シーズンの代表入りが白紙の段階で、混合ダブルスのことは考えられない現時点における立場を明確にした
保木選手は小林優吾選手と組む男子ダブルス、廣田選手は福島由紀選手と組む女子ダブルスでの日本代表入りを目指し、帰国後すぐに始まる全日本総合選手権に参戦し、無条件でA代表入りが決まる優勝を目指す
男子ダブルスでは、金子祐樹・井上拓斗組が世界6位のマッズ・コンラド・ペターセン/マッズ・ピーラー・コルディング組(デンマーク)と初めて対戦した。相手は、日本勢が苦戦を強いられることの多い長身のペアだが、金子・井上組はジャパンオープンで、同じく長身のウラジミール・イワノフ/イワン・ソゾノフ組(ロシア)を克服している
試合はデンマークペア主導で進む。第1ゲームは前半6-11とリードされるが、後半15-19から追いつき、逆転(22-20)で取る。第2ゲームも前半はリードを許すが、後半15-15で追いつくと、そのまま19-18までいく。しかし今度はサーブミスなどが出て決め切れず、逆に20-22で落としてしまう。ファイナルゲームに入ると、流れを引き戻したデンマークペアの勢いの前に金子・井上組は失速。追い上げ叶わず15-21で試合終了。ジャパンオープンに次ぐ2度目のSS決勝進出は果たせなかった
井上選手は試合後、第2ゲーム、19-18で勝負しにいったサーブでミスしたことを悔やんだ。一方、金子選手はほぼ互角のドライブ戦だったが、相手のパワーのほか、こちらの返球が甘くなり押し込まれる場面があったことを認めた。ただそれ以上に、第1ゲームは劣勢の中、ゲーム途中で対応し逆転することができた。しかしその後、相手が少しずつ交えてきた戦略の変化への対応が遅れたことを主たる敗因として冷静に説明した。この点は、まさにデンマークペアが試合後に指摘した点で、第1ゲームを失った後、対応策を講じリセットして第2ゲームに入ったことを明かしている
一方、2人にこの後控える全日本総合へ向けた抱負を聞くと、B代表として、文句なしにA代表入りするため優勝以外ないとの考えを明確に示し、タイトル獲得に挑む強い覚悟を見せた
日本勢以外ではこの日、男子シングルスで35歳リー・チョンウェイ選手が、同世代のライバル、リン・ダン選手を破って勝ち上がってきた21歳シー・ユーチ選手(中国)に、圧倒的な攻撃力で快勝。リオデジャネイロ五輪で悲願の金メダルを奪われた28歳チェン・ロン選手(中国)の待つ決勝に進んだ
女子シングルス決勝には、前日の山口選手に続いてラッチャノク・インタノン選手(タイ)をストレートで退けたプサルラ・ヴェンカタ・シンドゥ選手(インド)が勝ち上がり、昨年決勝で敗れた世界1位タイ・ツーイン選手(台湾)へのリベンジに挑む
準決勝の結果
【男子シングルス】
チェン・ロン(中国、世界4位)<21-14,19-21,21-17>アナース・アントンセン(デンマーク、世界13位)
シー・ユーチ(中国、世界5位)<19-21,8-21>リー・チョンウェイ(マレーシア、世界6位)
【女子シングルス】
タイ・ツーイン(台湾、世界1位)<21-9,18-21,21-7>ソン・ジヒョン(韓国、世界5位)
プサルラ・ヴェンカタ・シンドゥ(インド、世界3位)<21-17,21-17>ラッチャノク・インタノン(タイ、世界6位)
【男子ダブルス】
マルクス・フェルナルディ・ギデオン/ケビン・サンジャヤ・スカムルジョ(インドネシア、世界1位)<21-13,16-21,21-13>リュウ・ユーチェン/リ・ジュンフェイ(中国、世界3位)
マッズ・コンラド・ペターセン/マッズ・ピーラー・コルディング(デンマーク、世界6位)<20-22,22-20,21-15>金子祐樹・井上拓斗(世界12位)
【女子ダブルス】
チェン・チンチェン/ジア・イーファン(中国、世界1位)<21-19,21-19>ラウィンダ・プラジョンジャイ/ジョンコンパン・キッティハラクン(タイ、世界10位)
グレイシア・ポリー/アプリヤニ・ラハユ(インドネシア、世界17位)<11-21,23-21,21-15>ホワン・ドンピン/リ・ウェンメイ(中国、世界355位)
【混合ダブルス】
保木卓朗・廣田彩花(世界49位)<15-21,20-22>マシアス・クリスチャンセン/クリスティナ・ペダーセン(デンマーク、世界69位)
ワン・イーリュ/ホワン・ドンピン(中国、世界6位)<10-21,18-21>ツェン・シウェイ/ホワン・ヤチオン(中国、世界75位)
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大会最終日、26日に行われた決勝は、男子シングルスでリー・チョンウェイ選手(マレーシア)が、リオデジャネイロ五輪決勝以来の対戦となるチェン・ロン選手(中国)を破り、今シーズンのSS、最初(第1戦=全英オープン)と最後(第12戦=香港オープン)に頂点に立った。チョンウェイ選手は今大会、1回戦のティエン・ホウウェイ、準決勝のシー・ユーチ、決勝のチェン・ロンと、中国トップ3選手をいずれもストレートで降している
香港オープンは、2009、10、13、15年に次ぐ通算5度目の優勝で、優勝回数でライバルのリン・ダン選手(2003、05、06、07、11年)に並んだ。試合後、今年が香港オープンでチョンウェイ選手のプレーを見られるのは最後になるのでは、と懸念する地元のファンに向けて、来年も戻ってくるとメッセージを送った
男子ダブルスでは、世界1位のマルクス・フェルナルディ・ギデオン/ケビン・サンジャヤ・スカムルジョ組(インドネシア)が勝ち、この種目では2015年のイ・ヨンデ/ユ・ヨンソン組(韓国)と並ぶ、史上最多タイのSS年6勝に到達した。インドネシアペアは今シーズンのSS全12戦のうち、8戦で決勝に進出。文句なしのSSランク1位として、3週間後に行われるSSファイナルで、年間グランドチャンピオンの座を狙う
昨年の決勝と同じカードとなった女子シングルスは、世界1位タイ・ツーイン選手(台湾)が連覇達成で、今シーズン、全英、マレーシア、シンガポール、フランスに次ぐSS5勝目を挙げた。SSランク1位は山口茜選手に譲ったものの、ディフェンディンチャンピオンとして臨むSSファイナルでは優勝候補筆頭だ
女子ダブルスも世界ランク1位が勝利。チェン・チンチェン/ジア・イーファン組(中国)は、インドネシアオープン、中国オープンに次ぐ今シーズンSS3勝目。女子シングルスのタイ・ツーイン選手同様、SSファイナル連覇に向け、弾みをつけた
混合ダブルスの世界1位と2位のペアを組み替えたツェン・シウェイ/ホワン・ヤチオン組(中国)。香港オープンはペアとして、マカオオープングランプリ(GP)ゴールド、中国オープンSSプレミアに次ぐ国際大会3戦目だったが、3大会連続優勝と強さを見せつけた。来シーズン以降、この種目のけん引役となることは間違いない
決勝の結果
【男子シングルス】チェン・ロン(中国、世界4位)<14-21,19-21>リー・チョンウェイ(マレーシア、世界6位)
【女子シングルス】タイ・ツーイン(台湾、世界1位)<21-18,21-18>プサルラ・ヴェンカタ・シンドゥ(インド、世界3位)
【男子ダブルス】マルクス・フェルナルディ・ギデオン/ケビン・サンジャヤ・スカムルジョ(インドネシア、世界1位)<21-12,21-18>マッズ・コンラド・ペターセン/マッズ・ピーラー・コルディング(デンマーク、世界6位)
【女子ダブルス】チェン・チンチェン/ジア・イーファン(中国、世界1位)<14-21,21-16,21-15>グレイシア・ポリー/アプリヤニ・ラハユ(インドネシア、世界17位)
【混合ダブルス】マシアス・クリスチャンセン/クリスティナ・ペダーセン(デンマーク、世界69位)<15-21,13-21>ツェン・シウェイ/ホワン・ヤチオン(中国、世界75位)