
世界ジュニア選手権・個人戦決勝、久保田友之祐・金子真大組が、団体戦で苦杯を喫したアジアジュニア選手権覇者の中国ペアを破って優勝。男子ダブルスでは史上初の日本人チャンピオンとなった
準決勝で第1シードの韓国ペアに競り勝った久保田・金子組は、自信を持って決勝に臨んでいた。相手のディー・ヅ―ジエン/ワン・チャン組には男女混合団体戦で敗れていたが、オープニングゲームを先取。第2ゲームは落としたものの、「自分たちの持ち味」と語る攻撃の手を緩めることなく、ファイナルゲームは序盤から着実にリードを広げ、21-13と快勝。◆男子シングルスの桃田賢斗(2012年)◆女子シングルスの奥原希望(12年)と山口茜(13、14年)◆女子ダブルスの松山奈未・保原彩夏(16年)――に次ぐ世界ジュニアのタイトル獲得で、男子ダブルスでは日本史上初優勝の記録を刻んだ

表彰式と合同記者会見の後、BadPaL の取材に応じた久保田、金子両選手は、「率直にうれしい」(金子)。「これまで日本で誰も取っていないタイトルで、(自分たちが)取りたい気持ちはあった」(久保田)と、世界ジュニアチャンピオンになった直後の感想を笑顔で語った
世界ジュニアの男子ダブルスでは過去、2012年に金子祐樹・井上拓斗組、14年に玉手勝輝・中田政秀組が決勝まで進んだが、いずれも準優勝に終わっていた
ただ、大会前には、「(9月の)べトナムオープングランプリ(GP)、ジャパンオープンスーパーシリーズ(SS)ともに良いプレーができず1回戦負けで不安があった」(金子)と明かした。ナショナルB代表として同世代に負けられない、負けたくないというプレッシャーも認めた。さらに、大会前半に行われた男女混合団体戦の準決勝で中国ペアに敗れチームも敗退。「団体戦にかけていたので、負けて正直、ガクッと落ち込んだ」(久保田)。それでも、まだ個人戦が残っていると気持ちを切り替え、大会後半の個人戦に入ったと説明した
個人戦は、「ドローを見て、ベスト4に入ってからが勝負と思っていた。山場はやはり準決勝の韓国戦。これに勝てたことで、自信を持って決勝に臨めた」という。決勝の相手、中国ペアには団体戦で敗れていたが、長谷川博幸総監督は、「サーブ周りに対応できたのが勝因。誤算だった団体戦での負けが生きた結果」と評した
久保田・金子組に、世界ジュニアチャンピオンとして来月出場を予定するマカオオープンGPゴールドでは下手な試合はできないと考えるか、と問うと、そういう気負いはまったく見せず、「これ(世界ジュニア優勝)はこれ。シニアの大会ではまだまだなので、目の前の試合をひとつひとつ、がむしゃらに戦っていきたい」と冷静に答えた
シニアの大会でも通用するようになるため、今後取り組むべき課題は何か、2人に聞くと、「全体的なレベルアップが必要」としながら、まずは「フィジカルの強化」を挙げた。現状では、合宿などでA代表が淡々とこなすウェートトレーニングにもついていくのがきついと痛感している様子だ。現時点で東京五輪は見えていないと言う。それでも、「ここからがスタート。ひとつひとつの大会で結果を残して、それが(東京またはパリ五輪へと)つながっていけば」と締めた

男子シングルス決勝は、タイの16歳クンラウット・ウィティサン選手が、7月のアジアジュニア選手権準決勝で敗れたアジアジュニアチャンピオン、リョン・ジュンハオ選手(マレーシア)を、第2ゲーム後半以降、攻略。とりわけファイナルゲームはほとんど何もさせずに完勝した

ウィティサン選手は表彰式後、コーチのウドム・ルアンペトチャラポーン氏と共に BadPaL らの取材に応じ、「第1シードだったが、中国をはじめ、ランキングポイントのかかるジュニアの国際大会に選手を派遣しない強豪国もあり、優勝できると考えていたわけではない。勝てて幸せ」と語った。ただ、今回16歳でタイトルを取れたことで、同じクラブ「バントンヨド(BTY)バドミントンスクール」に所属する先輩、ラッチャノク・インタノン選手だけが成し遂げている世界ジュニア3連覇に挑戦する意欲を見せた
BadPaL がこの先、ウィティサン選手が軸足を置くのはジュニアの大会かシニアの大会か聞いたところ、今年からBTYのコーチに就いた元ナショナルチームコーチ、ウドム・ルアンペトチャラポーン氏は、来年も世界ジュニア選手権(カナダ・トロント)、さらにユース五輪(アルゼンチン・ブエノスアイレス)出場を目指すものの、「主戦場はあくまでシニアの大会」と強調。2020年東京五輪出場、そして次の24年パリ五輪でのメダル獲得に向けて進んでいく方針を確認した

一方、ウィティサン選手らと並んで表彰台に立った、2度目の世界ジュニア出場で銅メダルを獲得した奈良岡功大選手。表彰式後、BadPaL に対し、今大会は団体戦で敗れたが、これまで数回対戦し勝ったこともある同じ16歳のライバル、ウィティサン選手が表彰台の最も高いところにいるのを見て、やはり悔しさを感じたと認めた

女子シングルスは、アジアジュニアとの2冠獲得を狙ったハン・ユエ選手(中国)とのギリギリの接戦に、開催国のエース、グレゴリア・マリスカ・トゥンジュン選手がファイナルゲーム24-22で勝利。インドネシアにこの種目、1992年クリスティン・ジュニタ選手以来、四半世紀ぶりのタイトルをもたらした
中国勢は、男子ダブルスに続いて女子シングルスの決勝でも敗れ、今年の世界ジュニア、団体戦は下馬評を覆し4連覇を達成したが、個人戦はタイトルなしに終わった
インドネシアはほかに、同国対決となった混合ダブルスでもリノブ・リヴァルディ/ピタ・ハニントヤス・メンタリ組が優勝し、期待されながらメダルなしに終わった男女混合団体戦から気持ちを切り替え、個人戦では金メダル2つを奪取。ホスト国の面目を保った。なお、決勝で敗れた同じインドネシアのシティ・ファディア・シルバ・ラマダンティ選手は、試合後体調を崩し、何とか表彰式に参加したものの、途中で倒れ病院に搬送されたが、その後、回復が確認された

インドネシアバドミントン協会(PBSI)の関係者によると、混合ダブルス決勝を戦った女子2人、ピタ・ハニントヤス・メンタリ(18)とシティ・ファディア・シルバ・ラマダンティ(16)は、特に潜在力のある選手として混合ダブルスと女子ダブルスの2種目掛け持ちを許された、世界選手権4回制覇・リオデジャネイロ五輪金メダルのリリヤナ・ナッチル選手(32)の後継者としても期待される逸材という

一方、今回、国内大会と日程が重なり個人戦からの参戦となった韓国主力選手の中で唯一決勝に進んだ女子ダブルスのイ・ユリム/ペク・ハナ組は、アウェーの試合環境の中、ジャウザ・ファディラ・スギアルト/リブカ・スギアルト組(インドネシア)に第1ゲームを奪われる。しかし、その後リズムをつかむと、第2ゲームは11点、ファイナルゲームはわずか3点しか与えぬ力の差を見せ、アジアジュニアとの2冠を達成した
決勝の結果
【男子シングルス】 クンラウット・ウィティサン(タイ、第1シード)<17-21,21-15,21-9>リョン・ジュンハオ(マレーシア、第4シード)
【女子シングルス】 グレゴリア・マリスカ・トゥンジュン(インドネシア、第3シード)<21-13,13-21,24-22>ハン・ユエ(中国、第5シード)
【男子ダブルス】 久保田友之祐・金子真大(第4シード)<21-14,15-21,21-13>ディー・ヅ―ジエン/ワン・チャン(中国、第13シード)
【女子ダブルス】 イ・ユリム/ペク・ハナ(韓国、第2シード)<18-21,21-11,21-3>ジャウザ・ファディラ・スギアルト/リブカ・スギアルト(インドネシア、第4シード)
【混合ダブルス】 レハン・ナウファル・クスハルジャント/シティ・ファディア・シルバ・ラマダンティ(インドネシア、第3シード)<23-21,15-21,18-21>リノブ・リヴァルディ/ピタ・ハニントヤス・メンタリ(インドネシア、第11シード)
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各種目のメダリスト
【男子シングルス】
金メダル: クンラウット・ウィティサン(タイ、第1シード※アジアジュニア銅)
銀メダル: リョン・ジュンハオ(マレーシア、第4シード※アジアジュニア優勝)
銅メダル: 奈良岡功大(第6シード)、ガオ・ツェンツ(中国)

【女子シングルス】
金メダル: グレゴリア・マリスカ・トゥンジュン(インドネシア、第3シード)
銀メダル: ハン・ユエ(中国、第5シード※アジアジュニア優勝)
銅メダル: ゴー・ジンウェイ(マレーシア、第4シード)、ツァイ・ヤンヤン(中国、第6シード)

【男子ダブルス】
金メダル: 久保田友之祐・金子真大(第4シード)
銀メダル: ディー・ヅ―ジエン/ワン・チャン(中国、第13シード※アジアジュニア優勝)
銅メダル: キム・ウォンホ/カン・ミンヒョク(韓国、第1シード)、リノブ・リバルディ/エレミア・エリック・ヨチェ・ヤコブ・ランビタン(インドネシア、第11シード)

【女子ダブルス】
金メダル: イ・ユリム/ペク・ハナ(韓国、第2シード※アジアジュニア優勝)
銀メダル: ジャウザ・ファディラ・スギアルト/リブカ・スギアルト(インドネシア、第4シード※アジアジュニア銅)
銅メダル: シア・ユーティン/ツァン・シュウシアン(中国、第10シード)、リ・ウェンメイ/リュウ・シュエンシュエン(中国)

【混合ダブルス】
金メダル: リノブ・リヴァルディ/ピタ・ハニントヤス・メンタリ(インドネシア、第11シード)
銀メダル: レハン・ナウファル・クスハルジャント/シティ・ファディア・シルバ・ラマダンティ(インドネシア、第3シード※アジアジュニア優勝)
銅メダル: リュウ・シウェン/リ・ウェンメイ(中国)、ファン・チウユエ/リュウ・シュエンシュエン(中国)
