
香港オープンSS2回戦、男女シングルスでB代表の2人が気を吐いた。坂井一将選手は1回戦に続いて世界ランク上位の選手を下し、この種目日本勢で唯一、ベスト8入りを果たした。佐藤冴香選手は負けられない気持ちを全面に出して戦い、開催地香港の実力者をストレートで退けた
坂井選手は、前回の対戦で敗れた韓国イ・ドンクン選手をこの日は攻撃で圧倒した。試合後、BadPaL の取材に応じ、「シード選手を破った翌日にこけるようでは二流。その意味でも、今日は昨日よりも勝ちにいった。前回、ラリーに持ち込まれてこちらが先にバテる結果となったので、今回は先に仕掛けていった。自分の形で行けたのが良かった」と語った。あす、ベスト4入りをかけて戦う準々決勝の相手、インドネシアの19歳ギンティン・アンソニー選手については、「桃田選手に勝つということは相応の実力があるということ。年は関係ない。ジュニアから上がっ てきた選手で勢いがある。気持ちを前に出して、向っていく」と勝利への意欲を見せた

佐藤選手は、前回の五輪レース中に対戦して以来の顔合わせとなった香港のベテラン、イップ・プイイン選手に快勝した
「絶対勝たなければいけないという思いが強すぎ、力が入って昨日より動きは悪かった。ただ相手も地元で力が入っていてミスに助けられた部分もある」と試合を振り返った。ベスト8は通過点。次戦の相手、ラッチャノク・インタノン選手とは今年に入り10月のタイオープンとフレンチオープンで対戦して2敗。それ以前は前回の五輪レース中に一度しか勝っていない。「いい時は良いが、波が激しい選手との印象。チャンスはあると思うので向かっていく」と意気込みを語った
女子シングルスには日本からもう1人、1回戦で強豪の中国リ・シュエリ選手を破った奥原希望選手が、予選勝ち上がりの台湾選手を一蹴して、ベスト8に名乗りを挙げた

一方、シングルス期待の桃田賢斗選手と山口茜選手は敗れ、ベスト8に残れなかった。桃田選手の相手は、インドネシアの若手成長株、19歳のギンティン・アンソニー選手。桃田選手が実力、実績ともに上だが、この日は思い切りの良いアンソニー選手のプレーに翻弄されストレート負け。とりわけ第1ゲームは7点しか取れない「完敗」だった
桃田選手は試合直後、BadPaL の取材に応じ、「受け身になってしまい、失うものなく向かってくる相手を乗せてしまった。風があるとどうしても大事に大事にいってしまう。(敗因は)相手の良さというより、自分のメンタルの弱さ」と語った。次に控える全日本総合選手権に向けた抱負を聞くと、「今は考えられない」とだけ答え、予想外の敗戦に対するショックを隠せなかった

山口選手は、世界選手権2連覇のスペインのカロリナ・マリン選手に初めて挑んだ。第1ゲームから常に先行される展開で、途中、マリン選手が足首を痛め試合が中断するが、続行後も流れは変わらない。終盤15-19から1点差まで詰めたがわずかに及ばず、19-21で落とす。第2ゲームはさらに力の差が出て、どんどん点差を開げられ、7-13から7連続得点を決められ万事休す。結局、このゲームは一度もリードを奪えぬまま8-21で敗れた
山口選手は試合後、BadPaL に対し、「相手の球は拾えたが、拾った後の手が見つからず、なかなか自分から決めることができなかった」と説明。第1ゲーム後半追い上げた場面も、「流れが来ている感じではなかった」と振り返った。さらに、今シーズンのSSを戦い終えた感想を聞くと、「いい時もあるけど、1、2回戦で負けたり、コンスタントには勝てなかった」と述べた
一方、勝ったマリン選手は、厳しい試合だったが試合をコントロールできたとコメント。山口選手については、若いがシャトルが床に落ちるまで戦い続ける選手と称し、年齢に関係なくその強さを認めた

山口、奥原両選手と、ケガのためにチャイナオープン、香港オープンを欠場した高橋沙也加選手に続く日本4番手の三谷美菜津選手は、タイのラッチャノク・インタノン選手と対戦。第1ゲームを22-20で競り勝ち先制するが、続く2ゲームは力の差を見せられる形で落とし、敗退した
ラッチャノク選手は、前月末の独ビットブルガーグランプリ(GP)ゴールドで山口選手、前週のチャイナオープンSSプレミアで奥原選手と、このところ日本勢に連敗を喫していて、今大会ではどうしても負けるわけにはいかなかった
女子シングルスではもう1人、今別府香里選手がディフェンディングチャンピオンの台湾タイ・ツーイン選手に挑んだが、ストレート負け。第2ゲームで3つのゲームポイントを握りながら、勝機を逸した

女子ダブルスは高橋礼華・松友美佐紀組と福万尚子・與猶くるみ組が強豪に勝ち、準々決勝で直接対戦することになった
高橋・松友組の相手は中国タン・ジンフア/ツォン・チアンシン組。元々のパートナーと違うペアリングのため、国際大会への出場回数が少なく世界ランクは下位だが、ともに後衛を得意とする強打の2人で、高橋・松友組は3月の全英オープンSSプレミアの初戦で初めて対戦し敗れていた。しかし2度目の顔合わせとなったこの日は、第1ゲームこそ僅差で失ったものの、頭脳的なプレーで徐々に相手の打つ手を奪っていき、第2、第3ゲームを連取して逆転勝ちした
高橋・松友組は試合後、BadPaL に対し、「全英の時は、高橋選手が足をけがをしていて自分のプレーができずに負けた。今回は準優勝した前週のチャイナオープンから戻ってきた自分たちのプレーで勝てた」と説明した。日本のエースペアは、10月に行われたデンマークとフランスの欧州2大会ではともに2回戦負けと振るわなかったが、前週のチャイナオープンでは決勝で中国ペアに敗れたものの、今シーズン3度目のSS決勝進出を果たすまでに復調してきた。「9月のジャパンオープンで松友選手がねんざした後、しっかり練習できていなかったこともあり、欧州遠征時、試合に臨む気持ちができていなかった。あれでは勝てないと認め、2人で話し合った」と明かした

福万・與猶組は、韓国チョン・ギョンウン/シン・スンチャン組と対戦した。10月のデンマークオープンSSプレミアで高橋・松友組と前田美順・垣岩令佳組を破り、SS初優勝を成し遂げた実力のあるペアで、第1ゲームは後半一気に引き離されて落とす。しかし第2ゲームの競り合いを制すると、ファイナルゲームは勢いに乗り、どんどん得点を重ねて19-10と大きくリード。このままいくかと思われたが、ここからかたくなった與猶選手にミスが出て点差を詰められる。それでも大勢に影響はなく21-16で取って、先に勝利した高橋・松友組の待つ準々決勝に駒を進めた
福万選手は試合直後、BadPaL の取材に応じ、「2人で勝ててよかった。日本から駆け付けてくれた再春館製薬所の会長や今井監督らの応援も心強かった」と笑顔で答えた。また與猶選手はファイナルゲーム、先に19点を取った後のプレーについて、「早く決めたいという思いで力んでしまった。足も出なくなった」と、反省を込めて振り返った。相手は最近、SSプレミアで優勝したばかりだが、「怖さはまったくなかった」と指摘。むしろ、8月の世界選手権で銅メダルを獲得して以降、SSの成績が最高でベスト16どまりと最近結果を残せていないことから、「昨日よりも良い試合をしたい。練習の成果を出したいという思いで試合に入った」と明かした
同国対決となる準々決勝への意気込みを聞くと、「7月の全日本実業団選手権の決勝で負けている。どれだけできるか試したい」(與猶)。「応援団と一緒に団体戦のつもりで戦う」(福万)と答えた

混合ダブルスでは、数野健太・栗原文音組が開催地、香港のペアに勝ち、初めてSSでベスト8に入った
数野・栗原組は試合後、BadPaL に対し、「1回戦で対戦予定だった第2シードの棄権で巡ってきたチャンスを活かし、SSで初めて(ベスト8という)結果を残せて良かった」と喜びを表した。男女ダブルスでもそれぞれ勝ち残っていることが相乗効果を生んでいるのかと聞くと、「男子ダブルスから混合ダブルスへの切り替えは難しい。ただ勝っているからかもしれないが、それぞれいいところが出ていると思う」(数野)。「女子ダブルスも出るからにはもちろん勝ちたいが、最近は混合ダブルスに重点を移しつつある」(栗原)と述べた

日本選手以外では、男子シングルス優勝候補の1人、中国リン・ダン選手が地元香港のウン・カロン選手に8-21,18-21のストレートで敗れる波乱があった。リン・ダン選手は試合後、足にケガをしていることを明かした
一方、中国チェン・ロン選手とマレーシアのリー・チョンウェイ選手は順当に勝ち上がり、前週のチャイナオープンSSプレミア決勝に続き、あすの準々決勝で激突する
日本選手2回戦の結果
【男子シングルス】 桃田賢斗(世界4位)〈7-21,15-21〉ギンティン・アンソニー(インドネシア、世界53位※予選勝ち上がり)、イ・ドンクン(韓国、 世界30位)〈14-21,6-21〉坂井一将(世界48位※予選勝ち上がり)、チョウ・ティエンチェン(台湾、世界7位)〈21-13,24-22〉西本拳太(世界59位 ※予選勝ち上がり)
【女子シングルス】 カロリナ・マリン(スペイン、世界1位)〈21-19,21-8〉山口茜(世界9位)、奥原希望(世界10位)〈21-6,21-6〉チェン・シャオフアン(台湾、世界188位※予選勝ち上がり)、ラッチャノク・インタノン(タイ、世界5位)〈20-22,21-9,21-12〉三谷美菜津(世界17位)、佐藤冴香(世界18位)〈21-16,21-11〉イップ・プイイン(香港、世界33位)、タイ・ツーイン(台湾、世界3位)〈21-9,24-22〉今別府香里(世界37位)
【男子ダブルス】 マシアス・ボー/カールステン・モゲンセン(デンマーク、世界4位)〈21-11,21-17〉数野健太・山田和司(世界21位)
【女子ダブルス】 高橋礼華・松友美佐紀(世界1位)〈21-23,21-10,21-12〉タン・ジンフア/ツォン・チアンシン(中国、世界65位)、福万尚子・與猶くるみ(世界13位)〈14-21,21-18,21-16〉チョン・ギョンウン/シン・スンチャン(韓国、世界22位)、ツァオ・ユンレイ/ティエン・チン(中国、世界5位)〈21-11,21-16〉松尾静香・内藤真実(世界15位)、グレイシア・ポリー/ニトヤ・クリシンダ・マヘスワリ(インドネシア、世界3位)〈21-11,21-16〉栗原文音・篠谷菜留(世界26位)
【混合ダブルス】 数野健太・栗原文音(世界44位)〈21-17,21-14〉タン・チュンマン/プーン・ロクヤン(香港、世界112位)
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準々決勝の対戦カード(※これ以降、19日更新の世界ランキングを反映)
【男子シングルス】
チェン・ロン(中国、世界1位)対リー・チョンウェイ(マレーシア、世界6位)
チョウ・ティエンチェン(台湾、世界8位)対ウン・カロン(香港、世界22位)
坂井一将(世界49位※予選勝ち上がり)対ギンティン・アンソニー(インドネシア、世界54位※予選勝ち上がり)
ティエン・ホウウェイ(中国、世界10位)対ワン・ツェンミン(中国、世界11位)
【女子シングルス】
カロリナ・マリン(スペイン、世界1位)対ポーンティップ・ブラナプラサーツク(タイ、世界24位)
ソン・ジヒョン(韓国、世界5位)対ワン・イーハン(中国、世界7位)
タイ・ツーイン(台湾、世界3位)対奥原希望(世界9位)
ラッチャノク・インタノン(タイ、世界8位)対佐藤冴香(世界19位)
【男子ダブルス】
イ・ヨンデ/ユ・ヨンソン(韓国、世界1位)対ギデオン・マルクス・フェルナルディ/ケビン・サンジャヤ・スカムルジョ(インドネシア、世界18位)
ホン・ウェイ/チャイ・ビヤオ(中国、世界6位)対ゴー・ウェイシェム/タン・ウィーキョン(マレーシア、世界15位)
マシアス・ボー/カールステン・モゲンセン(デンマーク、世界4位)対リッキー・カランダ・スワルディ/アンガ・プラタマ(インドネシア、世界10位)
ヘンドラ・セティアワン/モハンマド・アーサン(インドネシア、世界2位)対キム・サラン/キム・ギジョン(韓国、世界8位)
【女子ダブルス】
高橋礼華・松友美佐紀(世界1位)対福万尚子・與猶くるみ(世界11位)
クリスティナ・ペダーセン/カミラ・リタ・ユール(デンマーク、世界3位)対ツァオ・ユンレイ/ティエン・チン(中国、世界5位)
グレイシア・ポリー/ニトヤ・クリシンダ・マヘスワリ(インドネシア、世界3位)対キム・ソヨン/チェ・ユジョン(韓国、世界19位)
イ・ソヒ/チャン・イエナ(韓国、世界10位)対ユー・ヤン/タン・ユエンティン(中国、世界64位)
【混合ダブルス】
ツァン・ナン/ツァオ・ユンレイ(中国、世界1位)対プラビーン・ジョーダン/デビー・スサント(インドネシア、世界8位)
シュー・チェン/マー・ジン(中国、世界5位)対ユ・ヨンソン/チャン・イエナ(韓国、世界73位)
リュウ・チェン/バオ・イーシン(中国、世界3位)対コ・ソンヒョン/キム・ハナ(韓国、世界6位)
シン・ベクチョル/ユ・チェジョン(韓国、世界21位)対数野健太・栗原文音(世界44位)