
マレーシアのプロリーグ「パープルリーグ」は8~11日に決勝トーナメント(ファイナル)が行われ、プチョンユナイテッドBCが、4度目の挑戦で悲願の初優勝。賞金52万リンギ(約1,400万円)を手にした
12月18日~1月6日まで、延べ14日間行われた出場8クラブによる総当たりの一次リーグを勝ち抜き、ファイナル出場資格である6位内に入ったのは、【1位】プチョンユナイテッドBC【2位】アンパンジャヤBC【3位】カポンB【4位】チェラスBC【5位】プタリンBC【6位】プタリンジャヤBC――。この6クラブが、シードを決める第2ステージ(1月26~28日)を経て、2月8日、ゲンティンハイランド内にあるアリーナの特設会場に場所を移し、決勝トーナメントを戦った
パープルリーグでは、一次リーグとファイナルの間に登録選手の追加・変更を認める期間が設けられている。ファイナルとスケジュールを同じくしてアジア団体選手権が開催され、出場できない選手も出てくるため、各クラブは独自の戦略と予算に基づき、メンバーを補強した
ファイナルは、シードを得たプチョンユナイテッドBCとチェラスBCに初戦免除のアドバンテージを与え、初日(8日)の準々決勝を突破した2クラブと、2日目(9日)に準決勝を戦わせた。3日目(10日)は初日に敗れたクラブによる5~6位決定戦を実施。そして最終日(11日)、3~4位決定戦の後に、今シーズンの最強クラブを決める決勝を行った

準々決勝では、イ・ヒョンイル、ツァン・ベイウェン、タノンサク・センソンブーンサックというビッグネームをシングルス陣に加えたプタリンBCに注目が集まった
しかし、対戦相手のカポンBCはいきなり、第1シングルスに起用したインドのデイ・スバンカル選手がヒョンイル選手をストレートで降す番狂わせを演じる。この選手、バドミントンをあきらめ就職せざるを得ない恵まれない経済環境下にあったが、競技を続けるため17歳で故郷インド・コルカタを飛び出し、受け入れてくれるクラブを探し国内各地を転々とし、24歳の今は単身デンマークに渡り、地元クラブのチームメイトの家に居候させてもらいながらトレーニングを続け、自費で参戦したインターナショナルシリーズなど下位大会で優勝。インド代表に選出される機会をうかがっているというユニークな経歴を持つ

続く女子シングルスでも、2014年世界ジュニア選手権準決勝で山口茜選手に敗れ銅メダル。その後、国家代表から離れて競技を続ける中国の21歳チン・ジンジン選手が、前週、インドオープン(SUPER500)優勝を遂げたベイウェン選手に食らいつき、敗れはしたものの2ゲームを奪って次につなぐ
3種目目の男子ダブルスは、カポンBCが台湾リャオ・ミンチュン/スー・チンヘン組で取って8-4。次の混合ダブルスも2-3までねばり、10-7として最終種目の第2シングルスを迎える
ストレート勝ち以外はクラブ敗退、まで追い詰められたプタリンBC、タイのタノンサク・センソンブーンスック選手が第1ゲーム、意欲的なプレーを見せ圧倒するが、その反動からか第2ゲームを失い、この時点でジエンド。カポンBCが下馬評を覆す勝利を挙げ、準決勝に進んだ

準々決勝もうひと試合は、韓国の元代表選手2人、キム・サラン、キム・ギジョンをそれぞれ混合ダブルスと男子ダブルスに配したディフェンディングチャンピオン、プタリンジャヤBCが、アンパンジャヤBCを降して、勝ち上がった
◆準々決勝(9日)の結果
①プタリンBC8ー11カポンBC
【男子シングルス(第1)】イ・ヒョンイル(韓国)0<10-11,9-11,7-11>3デイ・スバンカル(インド)
【女子シングルス】ツァン・ベイウェン(アメリカ)3<10-11,11-9,6-11,11-7,11-8>2チン・ジンジン(中国)
【男子ダブルス】シア・チュンカン/アーロン・チア(マレーシア)1<6-11,11-7,10-11,8-11>3リャオ・ミンチュン/スー・チンヘン(台湾)
【混合ダブルス】チェン・タンジエ/ペク・エンウェイ(マレーシア)3<11-8,10-11,10-11,11-9,10-8※30分打ち切り>2ヌル・モハド・アズリン・アユブ/チア・イーシー(マレーシア)
【男子シングルス(第2)】タノンサク・センソンブーンスック(タイ)1<11-5,4-11※勝利確定で途中打ち切り>1リム・チウィン(マレーシア)
②プタリンジャヤBC9ー4アンパンジャヤBC
【男子シングルス(第1)】ゴー・ギアプチン(マレーシア)0<6-11,7-11,10-11>3タン・ジアウェイ(マレーシア)
【女子シングルス】スパニダ・カテトン(タイ)3<11-8,8-11,11-10,11-6>1シュー・ウェイ(中国)
【男子ダブルス】キム・ギジョン/チューイ・カーミン(韓国/マレーシア)3<11-10,11-7,11-8>0ルキ・アプリ・ヌグロホ/ムハド・シャワル・モハド・イスマイル(インドネシア/マレーシア)
【混合ダブルス】キム・サラン/ティ・ウェイチ(韓国/マレーシア)3<11-2,11-8,11-5>0チン・チューハン/リン・アメリア(マレーシア/インドネシア)
【男子シングルス(第2)】メク・ナロングリト(タイ)<打ち切り>ヤン・ルンゼ(中国)
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準決勝では、まず第1シードのプチョンユナイテッドBCが、準々決勝を勝ち上がったディエンディングチャンピオン、プタリンジャヤBCと激突。昨シーズン決勝の再戦となったが、今回は、プチョンユナイテッドBCが圧倒。最初の3種目で得失ゲーム数9-3と大差をつけ、4種目目の混合ダブルスで1ゲーム先取した時点で勝利を確定させた
この対戦では、韓国の元代表選手3人がコートに立ち、男子ダブルスで、ユ・ヨンソン選手とキム・ギジョン選手がそれぞれマレーシア選手と組んで対峙する、プロリーグならではの試合も見られた

続いて登場の第2シード、チェラスBCは、ファイナルから女子シングルスに齋藤栞選手を起用した。「所属先とつながりのあるコーチの誘いがあって出場が決まった」と BadPaL に説明した齋藤選手、入場シーンでは、勝手がわからぬ中、緊張の面持ちでトミー・スギアルト選手、タン・ブンヒョン選手ら錚々たるメンバーと並んで選手紹介を受けた。試合は中国チン・ジンジン選手に敗れたが、プロリーグへのデビューを果たした
今シーズン、パープルリーグに参戦した日本人は、田児賢一(プタリンBC)、大堀彩(プチョンユナイテッドBC)、杉野文保、樋口奈津樹(ともにカポンBC)に次いで、5人目
チェラス、カポン両クラブによる準決勝は、前日、優勝候補の一角であるプタリンBCを破って勢いに乗るダークホース、カポンBCが連日の大物食いを披露。第2シードを倒して、決勝に駒を進めた
◆準決勝(9日)の結果
①プチョンユナイテッドBC(第1シード)10ー3プタリンジャヤBC
【男子シングルス(第1)】チョウ・ティエンチェン(台湾)3<10-11,11-10,11-6,11-10>1ゴー・ギアプチン(マレーシア)
【女子シングルス】デン・シュエン(中国)3<11-9,11-7,7-11,11-7>1スパニダ・カテトン(タイ)
【男子ダブルス】ユ・ヨンソン/マク・ヒーチュン(韓国/マレーシア)3<10-11,11-10,11-8,11-7>1キム・ギジョン/チューイ・カーミン(韓国/マレーシア)
【混合ダブルス】タン・キアンメン/シェボン・ライ・ジェミー(マレーシア)1<11-3※勝利確定で途中打ち切り>0キム・サラン/ティ・ウェイチ(韓国/マレーシア)
【男子シングルス(第2)】ウェイ・ナン(香港)<打ち切り>メク・ナロングリト(タイ)
②チェラスBC(第2シード)4ー10カポンBC
【男子シングルス(第1)】トミー・スギアルト(インドネシア)2<10-11,11-8,11-9,9-11,2-4※30分打ち切り>3デイ・スバンカル(インド)
【女子シングルス】齋藤栞(日本)0<7-11,8-11,8-11>3チン・ジンジン(中国)
【男子ダブルス】タン・ブンヒョン/タン・ウィーギーン(マレーシア)1<11-8,10-11,10-11,9-11>3リャオ・ミンチュン/スー・チンヘン(台湾)
【混合ダブルス】テリー・ヒー・ヨンカイ/ピア・ゼバディア・ベルナデト(シンガポール/インドネシア)1<11-6,10-11※勝利確定で途中打ち切り>1ヌル・モハド・アズリン・アユブ/チア・イーシー(マレーシア)
【男子シングルス(第2)】チョン・ウェイフェン(マレーシア)<打ち切り>2リム・チウィン(マレーシア)
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決勝は、スター選手を抱える優勝候補筆頭のプチョンユナイテッドBCに、強豪2クラブを連破して勝ち上がったアンダードッグ、カポンBCが挑む構図となった
5種目中、先に3勝したクラブが勝ち、とする従来の団体戦形式を廃し、消化試合(ゲーム)を減らす狙いから、獲得ゲームの総数で勝敗を競う独自の形式を採用するパープルリーグ。3種目目まで終わって6-5とほぼ互角。ここまでは、世界ランク8位の台湾チョウ・ティエンチェン選手相手に食い下がったインドのデイ・スバンカル選手、韓国ユ・ヨンソン選手率いるペアを3-0と完封した台湾リャオ・ミンチュン/スー・チンヘン組と、カポン勢の健闘が光った
しかし第4種目、マレーシアペア同士の対決となった混合ダブルスを3-1で取ったプチョンユナイテッドBCが、9-6とリードを広げる。あと1ゲーム取れば勝利確定の状況の下、最後にコートに立った第2シングルスのベテラン、香港ウェイ・ナン選手は、先に2ゲームを奪われながら3ゲーム目を取って、外国人助っ人の役割をきっちり果たし、プチョンユナイテッドBCの優勝を決めた

プチョンユナイテッドBCの第1シングルスとして、準決勝、決勝ともに勝ってクラブをけん引したチョウ・ティエンチェン選手はリーグ期間中に BadPaL の取材に応じ、同時期、マレーシア・アロースターで開催されているアジア団体選手権(6~11日)への出場を回避した背景について、「既に台湾がトマス杯への出場資格を確保できることが確認できていたため」と説明した
また、パープルリーグ参戦の理由の1つとして、5月の世界バドミントン連盟(BWF)年次総会で決議され、早ければ6月から採用される予定の新しい得点システム、11点×5ゲーム制への対応準備を挙げた
◆決勝(11日)の結果
プチョンユナイテッドBC10ー8カポンBC
【男子シングルス(第1)】チョウ・ティエンチェン(台湾)3<10-11,11-3,11-7,8-11,11-3>2デイ・スバンカル(インド)
【女子シングルス】デン・シュエン(中国)3<11-8,11-10,11-10>0チン・ジンジン(中国)
【男子ダブルス】ユ・ヨンソン/マク・ヒーチュン(韓国/マレーシア)0<4-11,10-11,9-11>3リャオ・ミンチュン/スー・チンヘン(台湾)
【混合ダブルス】タン・キアンメン/ゴー・リュウイン(マレーシア)3<11-9,11-7,9-11,11-7>1ゴー・スーンフアト/チア・イーシー(マレーシア)
【男子シングルス(第2)】ウェイ・ナン(香港)1<10-11,7-11,11-7※勝利確定で途中打ち切り>2リム・チウィン(マレーシア)
ファイナルを終えての今シーズン、全クラブの最終順位(3/4位、5/6位、7/8位は順位決定戦を実施)
【優勝】プチョンユナイテッドBC(初※前回準優勝)
【準優勝】カポンBC
【3位】プタリンジャヤBC(※前回優勝)【4位】チェラスBC
【5位】プタリンBC【6位】アンパンジャヤBC
【7位】バングサホークスBC(一次リーグ敗退)【8位】スルダンBC(一次リーグ敗退)