
ナショナルチームのメンバー選考は、各国でそれぞれのやり方がある。フィリピンではこれまで、フィリピンバドミントン協会(PBA)が年末近くに不定期で行う選考会が唯一の機会で、これに対し、公平さや閉鎖性に疑問の声を投げかける関係者も少なくなかった
しかし今回、内部資料から、来年導入予定の新しいランキングシステム「PBaRS (Philippines Badminton Ranking System)」の草案が明らかになった
2004年以降毎年開催されている、ヨネックスの東南アジア代理店、サンライズ(シンガポール)の名前を冠に配した「ヨネックスサンライズ・フィリピンナショナルオープン」が唯一、ナショナル大会との位置付けにあった。しかし、ナショナルチームの用具提供スポンサーがヨネックスからビクターに代わったことでバドミントン協会がこの大会を「ナショナル」な大会と認定せず、今年はそれまで可能だったナショナルチームメンバーの参加を大会直前に禁じ、代わりにビクターの名を冠したまったく新しいナショナル大会の年末開催を急きょ立ち上げるなど、混乱が生じている


こうした状況の中で浮上してきたのが、元ナショナルチームコーチで現在はクラブを運営し、北京五輪前に世界ランク10位台にまで迫った混合ダブルスの国内ナンバー1ペア、アスンション姉弟の父親でもあるネルソン・アスンション氏らが中心となって策定したPBaRS だ
同様のアイデアは過去にも聞かれたが、同氏らは今回、計画実現に向けて力強い後押しを得た。今年5月の総選挙で副大統領に就任したジェジョマル・ビナイ氏の存在だ。ビナイ氏は前職のマカティ市長の時代よりバドミントンを楽しみ、関係者との太いパイプも有す。既に計画推進に不可欠な3団体、フィリピンオリンピック委員会(POC)、フィリピンスポーツ委員会(PSC)、フィリピンバドミントン協会(PBA)のトップに個人的に書簡を送り、支持を取り付けているとされる。ちなみにバドミントン協会の会長はラモス元大統領夫人が務める
ビナイ副大統領以外にも、この計画の発起人には、通信最大手PLDTのマヌエル・パンギリナン最高経営責任者(CEO)と娯楽大手ビンゴボナンザのアルビー・ベニテスCEOが名を連ねる。両CEOはそれぞれ、MVPカップ(アジア欧州対抗戦)、フィリピンオープンGPゴールドという国際大会を主催するなど、バドミントン界への貢献が大きく、その上、自ら定期的にラケットを握る熱烈な愛好家として知られる
PBaRS では向こう3年、少なくとも年間4つのメジャー大会を主催する。まずは来年1月のマニラ大会を皮切りに、4月のバコロド大会、6月のダバオ大会を経て、10月に最終戦「ビナイ副大統領グランプリ(GP)ファイナル(仮称)」をマニラで開催する予定。このほかの大会も、規定を満たせばPBaRS の対象大会に加えていく方針だ
大会は賞金総額別に、◆5つ星(250万ペソ=約500万円以上)◆4つ星(150万ペソ=約300万円以上)◆3つ星(100万ペソ=約200万円以上)◆2つ星(80万ペソ=約160万円以上)◆1つ星(50万ペソ=約100万円以上)――に分類し、規模に応じたランキングポイントを設定する
また対象種目は、男子単、女子単、男子複、女子複、混合複の5つで、オープン、U19(18歳以下)、U15(14歳以下)の3つにカテゴリー分けされる
この国におけるバドミントンのさらなる進展と普及を目指す今計画の実施には、関係者全体の協力が不可欠。近隣諸国に後れを取っている競技力の向上に加えて、次の世代の若者にモチベーションと明確な目標を与えるためにも、何とか実現にこぎつけてほしいものだ