アジアジュニア選手権は16日、個人戦決勝が行われ、どんな状況にあっても負けなかった山北奈緒・須藤海妃が、ここまでシングルスの優勝しかないこの大会で、U19(19歳未満)日本代表の歴史に新たな記録を刻んだ
準決勝まで1ゲームも落とさずにきた山北・須藤だが、決勝はスタートダッシュが決まらず、序盤より相手の先行を許す展開に。ところが後半、10-17と大きくリードされた場面から連続得点を決めるなどして18-18に追いつくと、そのまま21-19でオープニングゲームを幸先よく奪う
第2ゲームは競り合いながら進むが、14-13の場面、サーブミスで14-14に並ばせてしまったところから今度は逆に一気に相手に抜け出され、止めることができずに14-21。この流れを受けてか、ファイナルゲームも韓国ペアが優勢に試合を進め、日本ペアにシャトルをネットにかけるミスが散見されるようにもなり、前半を6-11で折り返す。後半に入っても日本ペアが追いかける展開は変わらず、13-18からの長いラリーをミスで落とし13-19となったところで韓国ペアが完全に勝利への道筋を見出した、かにみえた
ところがこの窮地にも山北・須藤はさほど動揺をのぞかせず、変わらぬ姿勢で臨み続けた結果、連続得点等で土壇場、19-19で追いつくことに成功する。さらに、ここから19-20、20-21と相手が先にマッチポイント2つをつかむが、これらも凌いで逆転勝ち。とりわけ気持ちの面で形勢不利でもぶれない強さを示した内容で、アジアの頂点に立った
今年3月のジュニア上位大会「グランプリ」2連戦、オランダジュニアとドイツジュニアで、それぞれベスト4、優勝という好結果を挙げたこと等に連動する世界バドミントン連盟(BWF)の女子ダブルス(※選手ごとの)ジュニアランキング(現在、山北6位、須藤16位)に基づき、第1シードで今大会に臨んだ山北と須藤。奇しくも、5日前の団体戦決勝(対インドネシア)もこの日とまったく同じスコアで勝っている
ただ、とりわけ勝敗のカギを握ったオープニングゲームとファイナルゲームでそこに至るまでの過程は、劣勢から「追いついた」個人戦に対し、リードしていて「追いつかれた」団体戦と、真逆だった。しかし2人は、いずれの状況においても、試合の流れに過度に気持ちをぶらすことなく目の前の1点に集中した変わらぬプレーを続け、結果として負けなかった。その姿は、地元メディアをはじめ見ている人にインパクトを残した
U19日本代表はこの大会の個人戦でこれまで、2006年田児賢一、12年桃田賢斗、13年大堀彩、14年山口茜とシングルス陣の優勝(計4回)しかなく、山北・須藤は、男女、混合通じて日本史上初のダブルスチャンピオンとして記録に名を刻んだ
日本からもう1人、決勝に進んだ男子シングルスの沖本優大は、第1ゲームを快勝するも、第2,第3ゲームを奪われ逆転負け。田児、桃田に次ぐ、この種目3人目の日本男子チャンピオン誕生とはならなかった。ただ、3月のオランダとドイツのジュニアグランプリを続けて制覇するなどポテンシャルは高く、アジアジュニア準優勝を経て、9~10月に開催される世界ジュニア選手権・スポケーン大会での活躍に期待がかかる
一方、優勝した中国の16歳フー・ジューアンは、団体戦で敗れていたインドネシアのアルウィ・ファラン(18)と沖本(18)を準決勝、決勝で連破し、その強さを証明した。今秋の世界ジュニアでは沖本、フー、ファランに、現ヨーロッパジュニアチャンピオンでジュニアランク1位のアレックス・ラニエ(18)を加えた4人を軸にタイトル争いが展開される
女子シングルスでは、ホスト国インドネシアの17歳ムティアラ・アユ・プスピタサリが優勝した。個人戦では、中国3選手、韓国2選手、日本1選手に勝利と、強豪東アジア勢を総ナメ。団体戦決勝ではチームは敗れたが、昨年10月の世界ジュニアを制した宮崎友花にも勝っており、今大会を通じその実力を国内外に広く知らしめた
プスピタサリのコーチを務めたマン・アセプに BadPaL が、団体戦決勝で対戦し個人戦ではベスト8に終わった宮崎の印象を聞くと、「オールラウンドプレーヤーとして優れた良い選手」と、強さを率直に認めるコメントを返した。その上で、ベトナム男子シングルスのエースとして長く活躍したグエン・ティエンミンをはじめ、国内にとどまらず海外の選手も含め長年コーチングを手掛けてきたプロの視点から、さらに良くなるために改善すべき点を指摘した
ともに中国同士の決勝となった男子ダブルスと混合ダブルスは、いずれもジュー・イージュン擁するペアが勝利した。ツァン・ナン、ツェン・スウェイの資質を継承する名選手へと成長していくか、今後が注目される
◆決勝の結果
【男子シングルス】フー・ジューアン(中国、第3シード)<13-21,21-14,21-14>沖本優大(第8シード)
【女子シングルス】ムティアラ・アユ・プスピタサリ(インドネシア、第6シード)<21-11,21-17>キム・ミンジ(韓国、第14シード)
【男子ダブルス】ジュー・イージュン/マー・シャン(中国、第8シード)<19-21,21-16,21-13>フー・クーユアン/チェン・ヨンルイ(中国)
【女子ダブルス】山北奈緒・須藤海妃(第1シード)<21-19,14-21,23-21>ヨン・ソヨン/パク・スル(韓国)
【混合ダブルス】ジュー・イージュン/ホワン・クーシン(中国、第1シード)<21-19,21-18>リャオ・ピンイ/ツァン・ジアハン(中国、第3シード)
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◆各種目のメダリスト
【男子シングルス】
金メダル:フー・ジューアン(中国、第3シード)
銀メダル:沖本優大(第8シード)
銅メダル:ワン・ヅージュン(中国、第5シード)、アルウィ・ファラン(インドネシア、第9シード)
【女子シングルス】
金メダル:ムティアラ・アユ・プスピタサリ(インドネシア、第6シード)
銀メダル:キム・ミンジ(韓国、第14シード)
銅メダル:シュー・ウェンジン(中国、第9シード)、ショウ・チュンユ(中国)
【男子ダブルス】
金メダル:ジュ―・イージュン/マー・シャン(中国、第8シード)
銀メダル:フー・クユアン/チェン・ヨンルイ(中国)
銅メダル:ツァイ・フチェン/ライ・ポユ(台湾、第7シード)、ジダン・アッタウバ・エフェンディ/クレオパス・ビナル・プトラ・プラコソ(インドネシア)
【女子ダブルス】
金メダル:山北奈緒・須藤海妃(第1シード)
銀メダル:ヨン・ソヨン/パク・スル(韓国)
銅メダル:ツァン・ユーハン/リ・ホワツォウ(中国、第8シード)、田口真彩・玉木亜弥
【混合ダブルス】
金メダル:ジュ―・イージュン/ホワン・クーシン(中国、第1シード)
銀メダル:リャオ・ピンイ/ツァン・ジアハン(中国、第3シード)
銅メダル:パク・ボムス/ヨン・ソヨン(韓国、第8シード)、イ・ミンウク/チョン・へイン(韓国)





