世界ジュニア選手権個人戦4日目、各種目の準々決勝が行われ、女子シングルスの大堀彩選手と山口茜選手が、ともに一時は負けを意識するほど精神的に追い込まれながら盛り返し、準決勝進出を決めるとともに、昨年に続いてメダルを確保した

山口選手の相手は、団体戦の準決勝で大堀選手、決勝でインドネシアのハンナラマディ選手を連破し、韓国の優勝に大きく貢献したキム・ヒョミン選手。第1ゲームは一方的な展開で21-12と奪うも、第2ゲームは逆にキム選手の逆襲に遭い9-21と大差で落とす。迎えたファイナルゲームもキム選手主導で試合は進み、終盤に差し掛かる時点で12-16とリードされる
しかしここから山口選手が巻き返し、6連続得点で18-16と逆転に成功。キム選手がその直後、戦略的にとったとみられるケガの治療のためのインジュリータイムの影響もあってか、18-18と追いつかれるが、最後は力で3点をもぎ取り、1時間を超える接戦を制し勝利を手にした
山口選手は試合直後、BadPaL の取材に応じ、「ファイナルゲームの途中、12-16とリードされた時、負けたと思ったので、勝ててよかった」と率直な感想を述べた。初めて対戦するキム選手への対策は、「カットなどのショットが鋭い選手。打たれないようにするのは難しいので、拾ってからどう展開していくかを考えていた」と説明した。ファイナル終盤、逆転し勢いに乗っていた時、相手が取ったインジュリータイムの影響を問うと、「自分も相当疲れていたので身体的には休めた。ただ気持ち的には嫌だった」と振り返った。18-18と追いつかれた場面は、「弱気になり、スマッシュを打たずにカットばかりになった。ただ最後の3点は強い球が打てたので良かった」と述べた
準決勝で対戦するのは、ジュニアの世界ランク1位、シニアでも世界16位につけている地元タイのブサナン・ウンバンルンパン選手。意気込みを聞くと、「格上の相手で、自分がどれだけ通用するか挑戦したい」と答えた

大堀選手は、昨年の世界ジュニア、今年のアジアジュニアで対戦したシンガポールのリャン・シャオユ選手と3度目の顔合わせ。過去2回はストレート勝ちしていたが、今回は、大堀選手を研究してきたリャオ選手の正確なショットと固い守りに苦しめられ、第1ゲームを17-21で落とす。第2ゲームも流れを変えることはできず、最大7点差(8-15)をつけられてしまう。しかし終盤、相手に疲れが見え始めると反撃を開始。怒涛の攻めでミスも誘い11-16から10連続得点を決め、このゲームをひっくり返す。ファイナルゲームは前半を9-11とリードされて終えるが、後半早々、再び連続得点で引き離すと、リャオ選手に追いかけてくる力は残っておらず、敗戦色濃厚だった消耗戦を乗り越えた
大堀選手は試合後、BadPaL に対し、「嫌な流れの中、何とか勝ち切ることができてよかった。ただそういう流れを作ってしまったことは課題」と指摘した。第1ゲームを失い、第2ゲームも7点差をつけられた時の心境を尋ねると、「絶対に勝てる、とは到底思えず、弱気な部分が大きかった」と認めた。それでも、ラリー主体の相手に我慢強くプレーしようと心掛けていたという。途中から相手が疲れているのは見て分かったが、「自分も膝に両手をついて下を向きたい(ほど疲労した)状況だった」と説明した。ただ、「こっちの疲れを相手に知られるようなことはしたくなかった」と言い、試合中は表情も平静を装っていたという
あすの対戦相手は団体戦の中国との3位決定戦で、不調の大堀選手に代わって出場した山口選手が対戦した左利きの中国ホー・ビンジャオ選手。同選手はこの日、第4シードのブルガリア選手を、ファイナルゲーム16-20の劣勢をひっくり返して勝ち上がった。大堀選手は、「これまで対戦したことのない相手で、この後(ビデオを)見て対策をたてる」と述べた
一方、女子ダブルスの準々決勝に進んだ日本の星千智・櫻本絢子組と松田蒼・東野有紗組はそれぞれ第1、第2シードの中国ペアに挑んだが敗れ、メダルを逃した

星・櫻本組は、「個人戦でやるのは初めて」(櫻本)という中国選手相手の試合に集中して臨み、いきなり9-2とリードを奪いスタートダッシュに成功。前半は11-4と7点差をつけて終える。しかし後半に入ると思うように点が取れなくなり、中国ペアに追い上げられる。16-13から6連続失点で逆転を許すと、そのまま振り切られた。第2ゲームは中盤まで競り合うも、14-14から抜け出されてストレート負け。べスト4には届かず、昨年と同じベスト8に終わった
星、櫻本両選手は BadPaL の取材に応じ、「第1ゲーム、大きくリードしておきながら落とした。あれが取れていれば変わっていたかもしれない。点の取り方が課題」と試合を振り返った。また、これが中学1年生の時から6年続いたペアとして最後の試合となったが、「相手は第1シードの格上で、あきらめずに自分たちのプレーをしようと心がけていた。結果は別にして、その点は達成できたと思うので満足している」(櫻本)。「今まで以上に2人で声を掛け合ってよい試合ができた。それぞれの今後に生かしていきたい」(星)とコメントした

松田・東野組は、アジアジュニア選手権でも準々決勝でぶつかり敗れ、メダル獲得を阻止された中国ペアと再戦。リベンジを狙ったが、今大会第2シードとの現時点での力の差はいかんともしがたく、終始中国ペアの速いペースに押し切られ13-21,4-21で屈した
この試合をジュニア大会の最後とし、次は社会人としてプレーする予定の松田選手は BadPaL に対し、「メダルに届かなかったのは悔しい」としたが、世界ベスト8という結果には一定の評価を下した。一方、東野選手は、「力を出し切れず、アジアジュニアで負けた時と同じ思いをして悔しい。ベスト8という結果も、初めて臨んだアジアジュニアではうれしかったが、今大会はメダルを目標にしていたので悔しい」と強調した。その上で、課題として浮かび上がったサーブ周りなどの強化に取り組み、「来年も世界ジュニアに出場してメダルを取りたい」と1年後を見据えた
準々決勝の結果
【男子シングルス】
イーサン・マウラナ・ムストファ(インドネシア)〈21-10,21-8〉パンナウィット・トンヌアム(タイ)
ファビアン・ロス(ドイツ、第4シード)〈16-21,13-21〉ホ・クワンヒ(韓国)
スーン・ジューベン(マレーシア)〈21-11,13-21,10-21〉ワン・ツーウェイ(台湾)
ツァオ・ジュンペン(中国)〈22-20,21-18〉クリスティ・ジョナタン(インドネシア)
【女子シングルス】
大堀彩(第1シード)〈17-21,21-16,21-14〉リャン・シャオユ(シンガポール)
ステファニ・ストエバ(ブルガリア、第4シード)〈18-21,13-21,21-23〉ホー・ビンジャオ(中国)
山口茜(第3シード)〈21-12,9-21,21-18〉キム・ヒョミン(韓国)
ブサナン・ウンバンルンパン(タイ、第2シード)〈21-10,21-8〉ハナ・ラマディニ(インドネシア)
【男子ダブルス】
リ・ジュンフェイ/リュウ・ユーチェン(中国、第1シード)〈21-14,21-18〉ヤントニ・エディ・サプトラ/ファジャル・アルフィアン(インドネシア)
ワン・チリン/ティエン・ツーチエ(台湾)〈21-18,15-21,21-19〉オン・ユーシン/ダレン・イサック・デバダス(マレーシア)
リャオ・チフン/チャン・コチ(台湾)〈14-21,21-23〉ソ・スンジェ/チェ・ジョンウ(韓国)
ホワン・カイシアン/ツェン・シウェイ(中国)〈23-21,24-22〉ケビン・サンジャヤ・スカムルジョ/アルヤ・マウラナ・アディアルタマ(インドネシア)
【女子ダブルス】
ジア・イーファン/ホワン・ドンピン(中国、第1シード)〈21-19,21-16〉星千智・櫻本絢子
リケ.S.ハンセン/ジュリー・フィン・イプセン(デンマーク、第4シード)〈8-21,15-21〉キム・ジウォン/チェ・ユジョン(韓国)
ナリサパト・ラム/プティタ・スパジラクン(タイ、第3シード)〈21-16,10-21,21-13〉マパサ・セトヤナ/ロシタ・エカ・プトリ・サリ(インドネシア)
チェン・チンチェン/ヘ・ジエシン(中国、第2シード)〈21-13,21-4〉松田蒼・東野有紗
【混合ダブルス】
チェ・ソルギュ/チェ・ユジョン(韓国、第1シード)〈21-9,22-20〉リー・ヤン/ウェン・ハオユン(台湾)
ホワン・カイシアン/チェン・チンチェン(中国、第4シード)〈21-18,21-11〉プアワラヌクロ・デチャポン/プティタ・スパジラクン(タイ)
ケビン・サンジャヤ・スカムルジョ/マシタ・マームディン(インドネシア)〈21-12,21-6〉キティポン・チャイロジカンジャナ/ナリサパト・ラム(タイ)
リュウ・ユーチェン/ホワン・ドンピン(中国、第2シード)〈21-13,21-17〉テリー・ヒー/チュア・イレイン・イリン(シンガポール)
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準決勝の対戦カード
【男子シングルス】
イーサン・マウラナ・ムストファ(インドネシア)対ホ・クワンヒ(韓国)
ツァオ・ジュンペン(中国)対ワン・ツーウェイ(台湾)
【女子シングルス】
大堀彩(第1シード)対ホー・ビンジャオ(中国)
ブサナン・ウンバンルンパン(タイ、第2シード)対山口茜(第3シード)
【男子ダブルス】
リ・ジュンフェイ/リュウ・ユーチェン(中国、第1シード)対ワン・チリン/ティエン・ツーチエ(台湾)
ホワン・カイシアン/ツェン・シウェイ(中国)対ソ・スンジェ/チェ・ジョンウ(韓国)
【女子ダブルス】
ジア・イーファン/ホワン・ドンピン(中国、第1シード)対キム・ジウォン/チェ・ユジョン(韓国)
チェン・チンチェン/ヘ・ジエシン(中国、第2シード)対ナリサパト・ラム/プティタ・スパジラクン(タイ、第3シード)
【混合ダブルス】
チェ・ソルギュ/チェ・ユジョン(韓国、第1シード)対ホワン・カイシアン/チェン・チンチェン(中国、第4シード)
リュウ・ユーチェン/ホワン・ドンピン(中国、第2シード)対ケビン・サンジャヤ・スカムルジョ/マシタ・マームディン(インドネシア)